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試乗・解説

『頂から裾野まで・ブリヂストン』 2020シーズン最新タイヤは、先端モデルのアップデートと裾野を広げるバイアスの充実!
各メーカーともに今シーズン向けのタイヤを発表しているが、今期ブリヂストンがアップデートしてきたのは公道で使える頂点モデル、RS10の進化版RS11。一方で幅広いライダー層、排気量帯の足元を支えてきた定番バイアスタイヤBT45もBT46へと進化させた。極寒のブリヂストンテストコースからテストレポート。
■試乗・文:ノア セレン ■写真:ブリヂストン ■協力:ブリヂストン https://www.bridgestone.co.jp/products/tire/mc/

 

BRIDGESTONE RS11
純正装着タイヤだからこそのバランスの良さ

良いものを更に良くする難しさ RS10→RS11

 開発に終わりはないのだろうが、特にRS10のような、ラインナップの頂点に位置するモデルの進化は難しいことだろう。新型になるタイミングで、ちょっと性格を変えただとか、わずかにライフが伸びた(ハズです)といった微妙な仕様変更では周りが納得しない。確実に全体的に性能向上を果たすと共にさらにライダーに「これを知ると旧型はもう使えないな」と納得させるような性能が必要になる。とても高いハードルだ。
 さらに、前作RS10が非常に良いタイヤだった。多くのスーパースポーツモデルに純正装着されていたこともあって、公道でこういったハイパワーモデルを走らせるための高いバランスを実現していたタイヤ。温まりも早く、グリップ力も旋回力も十分にあり、少しぐらい濡れていても平気だったうえ、サーキット走行も十分にこなした。新作RS11は果たしてこれを上回れるのか?
 新作の変更点は、ドライグリップ向上を狙った新パターンデザイン、リアタイヤのショルダー部に採用した微粒径カーボンによる接地面(グリップ)の増加、またベルト構造の見直しによる接地圧の均一化と接地長のアップといったところ。RS11もまたスーパースポーツモデルへの純正装着が決まっているタイヤであるため、RS10が持っていたトータルバランスは崩さないよう、堅実な底上げがなされているという。

BRIDGESTONE RS11 フロント。
BRIDGESTONE RS11 リア。

クリップを逃さないフロントの安心感

 春に向けての新作タイヤ発表が冬の間に行われるのは通例だが、この日、那須のブリヂストンテストコースは雪がチラつく天気。ハイグリップ系のタイヤをテストするには決して良い状況ではないが、しかし一方でサーキットユースに的を絞ったタイヤではなく、純正装着されるタイヤである以上は、低温時も機能しなくてはいけないという宿命を負っていることを思えば逆にベストコンディションといえるかもしれない。とはいえテスト車両はハイパワーなYZF-R1。最初はオッカナびっくり走り出したと白状しておく。
 前作からの違いが分かるよう、まずは同じR1にRS10を装着して走行。おおよそ2キロのテストコースを4周走る。サーキットではなくあくまでテストコースのためコース幅は狭く高低差もあり、公道に近いシチュエーションも多い一方で、最高速は200キロを超えてくるためなかなかスリリング。しかしRS10は温まりも早く、初めてのコースにもかかわらず3周目には全開全開、「これで十分良いじゃないか!」と走行を満喫してしまった。
 走行を終えこんどは即座にRS11装着車に乗り換える。同様にタイヤを温める所からスタートするが、最初のとっつきやすさはRS10と変わらず、同様に早い段階で自信を持てる。スピードを上げ始めるとまずフロントの旋回力の高さに気づかされた。コースに慣れてきたということもあるかもしれないが、RS10よりは確実にクリップにつきやすく、オーバーランがしにくいと感じる。またリアのグリップ向上についてはこの寒い状況の中では積極的に限界を探るといったことは怖くてできなかったが、200キロをちょっと超える最高速に到達するのはRS11の方が早かったため、タイムを計測していたとしたらきっと向上していたことだろう。
 ブリヂストンのハイグリップ系タイヤは、表面的グリップは高いけれどタイヤそのものの剛性は高い傾向で限界が探りにくいことがある、などと言われていたこともあるように思うが、それはちょっと前の話だろう。RS10になった頃からタイヤ全体がしなやかに路面を捉えるという、近年のハイグリップタイヤの流れに近い特性になってきていると感じるし、今回のRS11もまたしなやかで挙動がわかりやすく、こんなに低温のコースを走らせているのに気難しさは全く感じなかった。

純正装着という大きな責任

 試乗後の関係者との雑談の中で、純正装着タイヤであるためのハードルについて話が及んだ。実は前作RS10が今、よく売れているというのだ。というのはRS10が純正装着されたバイクを買い、タイヤが減って他社のタイヤを装着してみる人がいるものの、結局次に買い替える時には純正装着されていたRS10に戻ってくる、というケースが多いのだという。
「他のタイヤももちろん魅力がありますが、トータルで考えるとやはり開発段階からそのバイクとの合わせ込みをしている純正装着タイヤにはバランスの良さが
あるのでしょう。ユーザーがそれに気づいてくれるのは嬉しい話です」とは関係者の弁。
 厳密に言えば、純正装着されているRS10(RS11)と、アフターマーケットのRS10(RS11)は違うものではあるのだが、それでも大筋では同じタイヤ、同じ特性を持つタイヤであるため、やはりそれらモデルとの相性は良いだけでなく、さらにどこかの性能に特化させているわけではなく、公道で考えられるシチュエーションを想定したタイヤならではの付き合いやすさがあるのだろう。新作RS11もまた、そういった前作のストリートでの扱いやすさを引き継ぎつつバランスよく底上げされた性能で、スーパースポーツユーザーをサポートしていってくれるはずだ。
 公道走行可能なブリヂストンのハイグリップタイヤの中では頂点に位置するモデル、RS11。とても高いレベルの性能が求められるため尖った特性になりそうなものなのに、決してそんなことはなかった。性能は突出するが、「純正装着」という大切なミッションをこなすため、同時に懐広く公道の様々なシチュエーションに対応することを忘れない進化を果たしているのだった。

旧車レースにもこの性能を

 もう一つのトピックは、最近旧車レース界を賑わせている18インチラジアルタイヤの登場。各社共にこの分野にレースでの使用を見越したハイグリップ系18インチを投入しつつあるが、ブリヂストンでは完全にサーキットにフォーカスした、公道走行不可の「CR(クラシックレーシング)11」を発表。これは上記RS11のさらに上位に位置する、公道走行不可の「バトラックスレーシングR11」を18インチ用にチューニングしたもので、国内でも盛んな旧車レースはもちろん、80年代車両での耐久レースも盛り上がっている欧州ユーザーに向けたタイヤだ。
 公道では使用できないため手にする機会は少ないかもしれないが、旧車レースにさらなる盛り上がりが期待できる新製品である。

 

BRIDGESTONE BT46
あらゆる排気量や年式の味方、BT45がBT46へ

誰もがお世話になったBT45

 RS11と同時に試乗できたのは、バイアスタイヤBT45の後継モデル、BT46である。BT45といえば1998年の登場以来一切モデルチェンジをせずにあらゆる排気量の足元を支えてきた超定番バイアスタイヤ。サイズラインナップも豊富だったため特に旧車ユーザーなどは意識的に使ったこともあるだろうが、そうでなくても250~400ccクラスに使われる定番タイヤであるがゆえ、無意識的に使っている人も多いかと思う。
 なぜ20年以上という、これほどまで長いスパンでモデルチェンジされなかったかといえば、シンプルにその必要がなかったからだろう。癖のないハンドリング、高い耐摩耗性、安心のウェットグリップ、そして手に入れやすい価格帯。もはやこれは主食である。食卓のレギュラープレーヤー、白ご飯みたいなラインナップだろう。しかしさすがにそろそろ……ということで今回その内容を見直し、BT46へとモデルチェンジした。

BRIDGESTONE BT46 フロント。
BRIDGESTONE BT46 リア。

良い意味で変わらないこと

 モデルチェンジしたとはいえ、パターンを見てもわかるように前作のイメージを強く引き継いでいる。遠目でみたら「変わってないんじゃ?」と思うほどだが、アップで見ると表面に装飾的な浅いグルーブが追加されているのがわかる。またフロントタイヤパターンの進行方向が逆になったのも新しい所。装着時には注意したい。
 タイヤの内容的にも大きく変わってはいない。あくまで素直な特性と耐摩耗性といった基本的なことを守り、ウェット性能だけは今回向上させたということで試乗もウェットコースでの試乗だけとなった。リアタイヤについては以前のスポーツサクト構造は廃され、シリカ配合のシングルトレッドゴムを採用したのがトピックか。特別性能の向上を喧伝するわけでもなく、あくまで定番タイヤとしての真っ当なモデルチェンジといったところで、古くからのBT45ユーザーも素直に移行できることだろう。

安心感アップのウェット性能

 フロントは現代のコンパウンド技術により、進行方向を逆向きにして排水性を高めても耐偏摩耗性能などが確保され、またリアはコンパウンドの見直しによりウェット性能が向上しているということで、試乗コースは水が撒かれたかなりスリッピーな路面が用意された。RS10/11の時同様にまずは旧作BT45を装着したニンジャ250で走り、直後に新作BT46を装着した同機種に乗るというもの。しかしこのコースが逆バンクあり、低ミュー部ありとなかなかトリッキーで難儀した。そもそもウェット路面で積極的にスポーツなどしたくないが、普通にやり過ごすような走りならBT45でも十分こなせた。BT46ではフロントブレーキング性能と、中速での安心感を意識するよう言われたが、ブレーキはともかく浅いバンク角での安心感は確かに向上しているよう感じられた。また自分ではわからなかったが、はたから見ていると「46の方がペースが良かったよ」と言われたのだから、やっぱり良くなっているのだろう。
 正直言えばドライ路面でも試してみたかったところだが、定番タイヤとして雨もOKというのは大切なところ。昔からのユーザーは安心して新作BT46に乗り換えて間違いないだろうし、250クラスをはじめとする新規ユーザーも選択肢に加えたいタイヤだ。

旧車ユーザー御用達

 BT45の魅力の一つだったのはサイズの豊富さ。BT45Vと呼ばれた旧車向けラインナップもあったことから、かつての18インチ、19インチの旧車に乗るライダーや、80年代後半の16インチ車に乗るライダーなど、幅広い層に支持されてきた。
 BT46もまたサイズの豊富さに力を入れている。発表時でフロント8サイズ、リア17サイズを用意し、さらに2021年には14サイズ、2022年には8サイズを追加するというから旧車ユーザーにとってはありがたい。またただサイズを用意するだけではなく、これらタイヤの開発にはW800といった現行ネオクラシックマシンに加えCB750Fといった実際の旧車を使ってテストを繰り返しているため、旧いバイクとのマッチングもしっかり考慮されているのだ。
 これまでのBT45愛用者はそのままBT46へとシフトして全く問題ないだろう。

頂から裾野まで

 1000cc・200馬力クラスの、趣味のバイクを公道で思いっきり楽しく走らせるための頂点タイヤと、日々の移動やバイク便などの「働くバイク」もサポートする定番バイアスの同時発表。ブリヂストンはバイクの世界の足元を幅広く支えていきますよ、というメッセージにも受け取れる試乗となった。



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2020/01/31掲載