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レース・イベント






バイクパーツメーカーの株式会社ベビーフェイスが母体の「Team BabyFace Titanium Power(チーム・ベビーフェイス・チタニウムパワー)」が、鈴鹿サーキット(三重県)で開催された「2025 FIM 世界選手権 “コカ・コーラ” 鈴鹿8時間耐久ロードレース 第46回大会」に参戦し、15位でフィニッシュした。
全日本ロードレース選手権最高峰JSB1000には「Team BabyFace」として参戦。JP250クラスには「BLU CRU Team BabyFace」が参戦している。
ベビーフェイスは、MiniGP参戦ライダーをサポートし、関西を中心とした74Daijiroのキッズレースを主催するなど、多岐にわたる活動でモータースポーツの魅力を発信している。
その中心人物である監督兼ライダーの津田一磨に話を聞いた。
■文・写真:佐藤洋美 ■写真:赤松 孝

モータースポーツは親子の絆を深める

 津田一磨はスズキCNチャレンジ参戦ライダー・津田拓也の弟だ。兄弟でレースを始め、1999年にミニバイクレースデビュー。2002年には全日本や鈴鹿8耐に参戦するバイクショップが母体の桜井ホンダから、鈴鹿4時間耐久に清成龍一の弟・賢一と参戦、2位となって注目を集めた。この年、津田は14歳。実家のある和歌山から東京に出て、桜井ホンダの秘蔵っ子として育つ。
 桜井ホンダを卒業してからは、さまざまなチームで経験を積み、ベビーフェイスと出会いエースライダーとして活躍。2023年から全日本JSB1000参戦マシンをYAMAHA YZF-R1にスイッチし、市販キット車ながらトップ10に食い込む走りを見せている。

 3年前、津田はライダーだけでなくチームを束ねる監督となった。さらに今年は、チームの母体であるパーツメーカー『ベビーフェイス』でも重要なポジションを任されるようになり、モーターサイクルショーへの展示をはじめ、レース以外の役割も増えた。全日本トップライダーとして実戦を通じた信頼性の高いパーツ開発にも力を注いでいる。

「これまではベビーフェイスで働きながらレースをやらせてもらっていましたが、立場が変わり会社の人間になると、会社として機能していることでPR活動でもあるレースができているのだと分かります。これまでは会社に守られて走れていたんだ、と。ですから、会社としての成長を考えながらレースができる環境を整えていくことの大事さを痛感しています。パーツ開発も、自分が全日本の最高峰クラスを戦うことで、走りやすさや安全性を持つ信頼性の高いものを送り出そうと責任を持つようになりました」

#BabyFace-Tsuda

 津田は2023年から本格的にライダー育成にも乗り出した。まずはベビーフェイスでポケットバイク『74Daijiro』の販売から始めた。74Daijiroを販売するデルタ・エンタープライズは関東が拠点だったため、津田は関西拠点のベビーフェイスで販売を開始。
 最初は「これ、どうやって使うの?」と聞かれることも多く、使い方を教える場所もない状態だった。そこから『関西キッズグランプリ』を年6戦実施。初年度はNSF100、NSR50、GROMを使ったクラスも開催した。そこから巣立ったライダーが、世界選手権に進むための登竜門である世界統一レギュレーションのFIM MiniGPジャパンシリーズにステップアップ。田中楓人、澤琥士朗、高江洲湊人の3名がセレクションに合格しフルエントリーで戦っている。田中は現在ランキングトップだ。

「自分の息子・到磨(7)がストライダーに乗るようになり、3〜4歳くらいになると並行してバイクにも乗りたいと言い出したのがきっかけでした。自分がレースをしていることもあり、バイクが身近にあったことが大きいと思いますが、本人からの希望で74Daijiroを購入し、関東に遠征するようになりました。関西ではポケットバイクを走らせる環境があまりなく、世界を目標にすることはおろか、全日本への道も具体的には見えない状態でした。自分がその架け橋になれたらと、ポケバイやミニバイクレース開催を考えました。
 始めたのは3年前くらいからです。最初はポケバイやミニバイクをする親御さんも、趣味で走っている方が多く、将来に対しては漠然としていました。なので、まずは親御さんや応援してくれる方々に理解してもらうことから始めました。最初は2〜3人でしたが、徐々に増えていき、今では10人ほどのライダーが参戦してくれています」

 津田は、モータースポーツは親子の絆を深めると実感している。週末の練習やレース参戦で過ごす時間が多く、協力してタイムを詰め、勝利を目指す中で共通の会話や目的が生まれ、子供の成長を間近に感じられるだけでなく、親も共に成長できるという。津田は「その魅力を多くの人に知ってもらいたい」と願う。

#BabyFace-Tsuda

育ててもらったことへの恩返しをしたい

 全日本選手権併催の若手育成&ステップアップカテゴリーであるJP250クラスへステップアップするライダーも出始めた。今季は「BLU CRU Team BabyFace」として、片田泰志(15)、津田雄飛(15)、今井勝也(14)、塚脇椋太(17)がJP250に参戦を開始。BLU CRUはヤマハが国内外で展開しているヤマハライダー向けの公式サポートプログラムで、優秀な結果を残したライダーはYZF-R3を駆り、Yamaha R3 bLU CRU World Cup/R3 World Cup(世界戦)に参戦できる。2024年には高校生ライダーの高橋 匠が参戦、今年は久川鉄平が参戦している。ヤマハの育成プログラムはMotoGPやEWCにもつながり、ロードだけでなくモトクロスでも実施されている。

#BabyFace-Tsuda
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「桜井ホンダさんで走らせてもらったのが14歳で、その年ごろのライダーを見ていて、中学生の自分を走らせてくれていたんだなと振り返る時があります。桜井ホンダさんのように、若手にチャンスをあげられることができたら、自分を育ててもらったことへの恩返しになるのではと思うようになりました。そんな気持ちになれた時に、ヤマハのブルークルーのサポートが始まり、そこに加わらせてもらうようになりました。ここをステップに、自分の力でレース参戦を継続していけるライダーになってほしい。世界へのチャンスを掴めたら素晴らしいですが、それを掴めなくても走り続けてほしい。才能が開花する時期は人それぞれなので、走り続けてほしいと応援しています」
 若手育成の地道な活動でレースを知ってもらえるようになり、津田の応援に関西から来てくれる関係者も増え、ベビーフェイスを中心にモータースポーツへの理解が広がっている。

#BabyFace-Tsuda
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 そして今年は、2019年以来6年ぶりに津田がチームの監督兼ライダーを務め、ヤマハの開発ライダーである前田恵助、世界耐久選手権(EWC)「YART」所属のロビン・ムルハウザーとともに鈴鹿8耐に参戦。
 津田は「これまでも鈴鹿8耐に出場したい気持ちはありましたが、チームとして力がついてきた今、周囲の協力も得てエントリーを決めました」と語った。好調の津田、2年ぶりの鈴鹿8耐に挑む前田、そしてEWCチャンピオンチームYART所属の実力派ムルハウザーという布陣で注目を集め、決勝は15位でチェッカーを受けた。

#BabyFace-Tsuda
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 津田の朝は早い。5時には起きてトレーニングに出かけ、8時30分には出社する。子供たちが憧れる全日本トップライダーとして、鍛錬を怠るわけにはいかないからだ。
「子供たちのレースを応援するようになって、その意識はとても強くなりました」
 鈴鹿8耐を終え、全日本後半戦に突入、第4戦が栃木県モビリティリゾートもてぎで行われ、JSB1000に参戦した 津田は両レースを11位で終えた。残り3戦で、さらなる飛躍を狙う。
(文:佐藤洋美、写真:赤松 孝)

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2025/09/01掲載