スズキ株式会社は『2025 FIM 世界耐久選手権”コカ·コーラ” 鈴鹿8時間耐久ロードレース 第46回大会』に、昨年に引き続き『チームスズキ CN チャレンジ』として参戦することを東京モーターサイクルショーで発表した。クラスはエクスペリメンタルクラス(実験的クラス)だ。スズキのMotoGPマシン開発で知られる津田拓也が、鈴鹿8耐ライダーの第一候補であることも発表となった。
■文:佐藤洋美 ■写真提供:SUZUKI
スズキ社員で構成される『チームスズキ CN チャレンジ』は、環境負荷低減の推進と走行性能向上の両立を図ることを目的に始まった。このプロジェクトで初参戦となった昨年の鈴鹿8時間耐久は、総合8位を獲得して関係者の称賛を集め、さらなる結果を求めての継続参戦を発表した。
今季の鈴鹿8耐参戦車両の『2025チームスズキCNチャレンジGSX-R1000R』は、新開発のエンジンと新開発の空力部品を採用する。フェンダーやサイドカウルなど一部パーツが天然の“亜麻”を使った繊維複合材料を使用。チームウェアも100%再生素材。使用燃料は、昨年の40%だったバイオ由来の比率を100%に引き上げ、エンジンオイルもバイオ由来をベースとする。カウルなどの外装部品も、再生材や自然由来の原料比率を高める。ブレーキやバッテリー、マフラー、チームウェアも環境への影響を配慮したものになる。
スズキの発表リリースで鈴木俊宏社長は次のように宣言している。
「今年も当社のサステナビリティに関わる技術開発の一環として挑戦いたします。単に活動の継続を意味するだけでなく、より高い目標を設定し、多くの課題を克服する」
また田中強二輪事業本部長は「昨年は鈴鹿8耐という過酷なレースを完走したことによって、内燃機関やモータースポーツの将来に向けて意義のある一歩を踏み出すことができた。本年はサステナブルアイテムの拡充を図り、CN(カーボンニュートラル)の枠を超え、広く環境負荷低減をテーマに挑戦する」と、その意義を唱えた。
プロジェクトリーダー兼チームディレクターの佐原伸一氏は「これらのアイテムが十分に機能するように開発を進め、昨年の順位である総合8位をしのぐ結果を目指し、データを収集し課題を抽出して次のステップにつなげたい」と語った。
鈴鹿8耐のラインアップは、これから調整ということだが、候補にはテストライダーを務めている津田拓也がおり、発表の檀上にも登場した。
スズキのMotoGPテストライダーとして活躍した津田は、2017年はアレックス・リンスの代役としてスペインGPに参戦。2020年のMotoGPチャンピオンを獲得したシーズンもマシン開発で力を発揮した。2022年、日本GPにワイルドカード参戦するが、このシーズンを限りにスズキはMotoGP撤退した。
津田はスズキを離れオートレース宇部レーシングチームより全日本ロードレース参戦していたが2024年に全日本からの勇退を発表する。引退ではないと表明していたが、ファンにとってはどんな状況なのだろうと心配されてもおり、その後の活動に注目が集まっていた。噂ではスズキのテストライダーに復帰も囁かれていたが、この発表会でその噂が本当だったことがわかった。
「この日まで話をしないようにと止められていたので、発表出来たことを嬉しく思います。昨年まで所属していたレーシング宇部さんは、今季はBMWのワークスマシンでの参戦となり、正直、ライダーとしては魅力を感じましたが、自分はスズキのチームスタッフともう一度、仕事が出来ることを願っていました。叶わないことだと思っていましたが、声をかけてもらい、迷うことなくやらせてほしいと返事をしました」
と、津田は経緯と決意を語った。
そして、このチャレンジの先にはスズキのMotoGP復活を願っているとも言う。
「スズキが元いた場所に戻る手伝いがしたいのだ」と。そこに至るまでには時間が必要だと思うが、津田の願いは大きな原動力となりスズキを動かして行くことになりそうだ。
今季の鈴鹿8時間耐久(8月1日~3日)には、ヤマハファクトリーが参戦を発表したばかりだ。スズキの参戦継続となり、今季の鈴鹿8耐は見どころが増える。他メーカーや有力チームも参戦ライダーは未定が多く、どんなライダーが参戦することになるかも注目だ。
鈴鹿8耐参戦を見据えてスズキは全日本ロードレース選手権開幕戦(モビリティリゾートもてぎ、4月20日決勝)にもエントリー。事前テスト(4月8日9日)にも参加する。
(文:佐藤洋美、写真提供:SUZUKI)
●チームスズキCNチャレンジ スペシャルサイト
https://www1.suzuki.co.jp/motor/8tai/2025/news_20250328.html