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名車図鑑

■文・写真:松井 勉

モビリティリゾートもてぎ内に建つHonda Collection Hall。ホンダが創業50周年を迎えた1998年にオープンしてから、ホンダの歴史を2輪、4輪、レースマシンという観点からじっくり眺められる施設としてもてぎのキラーコンテンツとしてあり続けてきた。そしてホンダが昨年創業75周年を迎えたのに合わせてリニューアルが行われ2024年3月1日より公開された。その前日に行われたメディア向けの内覧で歩いたホール内は、まさにホンダの夢と夢の実現への道を体験する素晴らしい展示と見せ方だったのである。

 ズラリと並んだ歴史的なレーサー、市販車、そして4輪車。ホンダファンにとってHonda Collection Hallは夢の城だとして間違いないだろう。オープン当時は付帯した施設で歴史的なレーシングマシン、市販車をレストアし、仕上げる工房も窓越しに眺めることができ、主要なレーシングマシン、市販車は動態保存されテストのためにコースを走るイベントはファンにとっても貴重な体験となった。

 そんなHonda Collection Hallがホンダ創立75周年を記念してリニューアルオープン。3月1日から一般公開が始まった。およそ3ヶ月の時間を掛けてリニューアル工事を行い、展示スペースはさながら、ホンダの創業から今日までの駆け抜けた時代、技術をそのプロダクトの間を歩きながら「ホンダ」を追体験するアトラクションのような仕立てになっていたのである。

 エントランス正面にある『夢 本田宗一郎』と書かれたガラスの丸いオブジェはそのままに、その抜けには、世界グランプリマシン、F1、そして創世記の4輪市販車を代表してS800、そして初代スーパーカブが出迎える。また、新たにHondJetが置かれている。

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翼にエンジンを搭載したことで生まれた機内後部のラゲッジスペース。これもHondaJetの大きな特徴。

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機内、コクピットを眺めることもできる。

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 1階フロア右手には本田宗一郎、藤沢武夫という世界のホンダへと押しあげた二人の歴史を始め発明家本田宗一郎の視点と製品も見ることができる。さらに左手のライブラリースペースにはイメージスケッチから造られたレンダリングなどが額装されたもの、多くの書籍が来場者を出迎える。ラインナップを整えたギフトショップもここにある。

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創生期から始まる物語、ホンダが歩んだ道をダイジェストにして展示したのが1階フロア。

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ライブラリースペースには様々なスケールモデル、デザインスタディーやデザインスケッチなどが並ぶ。またワークショップも開催されるという。居心地の良い空間だった。

 Honda Collection Hallの建物はそのまま使われるが、各フロアの展示スタイルは大きく変わっていた。以前の展示はカテゴリーや年代に分け、歴代プロダクトと各カテゴリーのレーサーを分けて並べるスタイルだったのに対し、ホンダの歴史を作り出した「時代」に分けその証人たる製品とそれを作った人を思わせる展示としている。それだけにホンダの時代における2輪、4輪、そして汎用エンジンを使った発電機、農機具、船外機といったものが雄弁と時の流れを語りかける。さらにDNAに刻み込まれた負けず嫌いさを表すレース用マシン達の間を歩くことでこれまでの歩みを体験できるというスタイルだ。

 展示車の数は以前と比較しても絞られ、回廊のようになった通路を進めば背景の写真から開発者達の息づかいも伝わってくるかのようだ。博物館か美術館を歩くような気分になるし、その時々で開発陣が詰める研究所において陣頭指揮を執るオヤジのかけ声を思わせる文言も合わせて目に入ることでなおさら当時の雰囲気を見ているような気持ちになれるのだ。

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工夫を凝らした照明、クリアランスを摂ったことで展示物をじっくり、しっかりと間近で様々な角度から見ることができるのも大きな特徴。

 展示車と背景にフォーカスした照明の効果もありグッと感情移入できる展示になったのである。3階、2階と続くその道乗りは長く確かなものとして見た人の心を打つだろう。

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空冷エンジンを搭載したF1とホンダ1300。
走る実験室がレースなら、その成果としての市販車が並ぶ、という問いかけのようだ。この後、回廊はCVCCエンジン搭載の水冷エンジンでお馴染みのシビックへと時代の変遷を味わえる。

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2輪の展示車両セレクトのアドバイスも行った山形吉秀さんによれば、このエルシノアに沢山の物語があって、当時アメリカのモハビ砂漠で極秘テストをしている時、ふだんは人すらいない砂漠にもかかわらず、バンにバイクを積んで走りにきた一人のライダーがテスト車に近づき「これは何だ?」と。その人こそスティーブ・マックインで、その縁でエルシノアのコマーシャルへの出演が決まり、あのエルシノアのジャージもホンダのデザイナーが描いたものを着たんです、と教えてくれた。また、このエルシノアをちょうどアメリカ出張中の本田宗一郎さんが見ることになる。2スト嫌いの本田さんを知る開発者達は極秘裏に作っていたため、車体にホンダのマークがない。アメリカホンダの一人が、ナゼホンダの社名を入れないのか? と聞くと、本田さんはこんなの造っているって聞いていないから解らない。なんじゃこれは、と。これは叱られる! と思っていた開発者達は、帰国した本田さんからやる以上負けるな、とプロジェクトにゴーサインが。CR系の出発点たるエルシノアだけを見てもこれだけ物語があるんです……とのこと。「他にもまだまだそうした機種がありますから、今後も楽しみにして欲しい」とのことだった。

 目新しいのは基礎研究の段階から、青山のウエルカムプラザでも活躍していたASHIMOの展示はもちろん、これからのモビリティとなるのか、UNI-ONE体験も可能だ。

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  Garage Collection蔵出し一挙公開企画展として、オープンする3月1日から6月30日まではCBヒストリーPART1 スーパースポーツバイクの先駆者たち、と題して歴代CBモデルやレーサー、その世界を競った国内外のライバル機種が展示されている。

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 この企画展は今後、7月6日から10月14日にはレーサーレプリカ特集パート1 ワークスレーサーの血統 NSR250R。

 さらに10月12日から2025年3月19日にかけては ゴールドウイング誕生50周年記念展示&S2000誕生25周年記念展示及びオープンカー特集 と続く予定だ。

 ここモビリティリゾートもてぎを舞台にして4月13、14日にはJSB第2戦、5月18、19日にはFIM トライアル世界選手権第2戦日本グランプリ、10月4〜6日にはMotoGP Grand Prix of Japanが。11月2〜3日にはSUPER GT MOTEGI Round 8がそれぞれ開催される。合わせてHonda Collection Hallに足を運んで、ホンダを呼吸してみて欲しい。(文・写真:松井 勉)

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レースとの血縁を思わせる展示。RCBと空冷4バルブ時代のCB、並列6気筒のCBXが並ぶ。

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Nプロジェクト、シティとモトコンポ等々、解りやすくグループを作って開発意図とその時代を伝えている。

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時間を決めて行われるガイドツアーも継続開催されるほか、各展示エリアではQRコードを読み込むことで音声ストーリーガイドを楽しむことも可能。
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右から2番目、朝日嘉徳さんが今回のリニューアルプロジェクトの責任者。ご自身は4輪の内装を中心にしたデザイナーとして活躍してきた。S2000の誕生にも深く関わる。一番左、飯干智裕さんは栃木研究所で技術広報をする人。4輪のセレクトに尽力。左から4人目の山形吉秀さんは2輪のデザイナーでありテクニカルイラストなども手がける人。2輪の展示セレクトに協力。社史75年を記念して編集した分厚い記念書籍をまかされた人達に登場願った。朝日さんを中心にホールの展示物を選び、物語を構成した人達だ。

2024/03/05掲載