チームカガヤマが2024年全日本ロードレース選手権の参戦体制発表会をイタリアの駐日大使館で行った。会見参加を事前に申請し、送られて来た招待状と写真入りの身分証明書が必要だった。だが、チェックしてくれる人は、チームカガヤマのスタッフたちで、クロークでもフォローしてくれ、緊張感がありつつも笑顔の入場となった。
ドレスコードはスマートカジュアルと明記され、サーキットで顔を合わす面々は気なれぬジャケットを着込み、撮影ポジションを譲り合いながら開始を待った。まずは駐日イタリア大使ジャンルイジ・ベネデッティ氏の挨拶があり、このレセプションを開催できることを歓迎した。
加賀山就臣監督が登壇し「私は33年間ずっとスズキでやってきましたが、勝ちにいきたいということでドゥカティを選択しました。2024年シーズン、全日本ロードレース選手権JSB1000クラスにライダーとして水野涼を起用し、マシンにはファクトリーマシンのパニガーレV4Rの供給を受けることになりました。全日本ロードレース選手権だけではなく、鈴鹿8時間耐久ロードレースへの参戦もします」とドゥカティチームカガヤマとして体制発表をした。
次に水野涼が「ホンダ育ちの自分が、チームカガヤマでドゥカティを駆ることを決めたのは、純粋に勝ちたいという思いからでした。勝てる体制であり、目標でもある海外参戦に近い挑戦であり、ワクワクしています」と健闘を誓った。
日本モーターサイクルスポーツ協会(MFJ)会長の鈴木哲氏は「昨年、加賀山さんから相談を受け、全面的な協力を約束した」と語った。ドゥカティジャパンのマッツ・リンドストレーム社長は「ドゥカティには長い歴史があります」と巻物のような紙を取り出し、パタパタと紙が檀上に広がるパフォーマンスで喝采を浴び「説明すると長くなりますので割愛しますが、ドゥカティとチームカガヤマが共にレースが出来ることを心から歓迎します」と笑顔を見せた。さらにドゥカティコルセのパオロ・チャバッティ氏からビデオメッセージが届けられ、ドゥカティの全日本参戦&鈴鹿8耐への本気度を伝えた。
そして、スーパーバイク世界選手権(WSBK)で2年連続チャンピオンを獲得しているアルバロ・バウティスタが駆っているマシンと同仕様となるDUCATI Team KAGAYAMAのパニガーレV4 Rが、来場者の歓声の中で姿を現した。
チームカガヤマがドゥカティを駆るという噂は昨年末から囁かれ、情報リークのような形で、その事実が明かされてもいた。だが、これまでも、ドゥカティで全日本参戦したライダーもいて、市販マシンを購入して戦うのだろうという話が、ワークスマシンらしいとなり、加賀山と水野がイタリアのドゥカティを訪れている写真がSMSにアップされ、これは、ただ事ではない戦いが始まること、ワークスマシンでの参戦への信憑性が高まった。その事実確認のためにも体制発表が待たれていた。
会見後の囲み取材で、加賀山は「WSBK時代に憧れていたトロイ・ベイリス選手のいるドゥカティのファクトリーチームによく遊びに行っていて、当時の監督だったパオロ・チアバッティと仲良くさせてもらい、友人として続いていたことがきっかけになった。相談したら、自分のやって来たこと、全日本での戦いぶり、鈴鹿8耐にケビン・シュワンツを呼んだり、横浜パレードを続けていることなど、全てを調べてくれ、理解した上で『お前ならやれる』と…。『どうせやるなら勝ちに行け、チャンピオンのバウティスタの車両を使え』と提案してくれた。最初は信じられなかった。ファクトリーマシンを海外に持ち出して、1年目のチームカガヤマに預けてくれるという決断をしてくれるなんて…。ありえないと思っていたから…。信じられないことだと思う。でも、それが現実になった。今は感謝しかなく、覚悟を決めて日本の4メーカーと真っ向から勝負する」とこれまでの経緯と意気込み語った。
加賀山は『黒船襲来』だと言った。レースに対しての意気込みを感じない日本メーカーへ刺激を与えたいという思いもある。加賀山の挑戦状を、ホンダ、ヤマハ、スズキ、カワサキのレース担当者は、どう受け取るのだろう。これまでモータースポーツを牽引して来た日本メーカーへの更なる奮起を促すことになることを、加賀山だけでなく、レースファンは多きに期待することになる。
最後に「イタリア大使館で全日本の体制発表が出来たことを強く示してほしい。これがヨーロッパでのバイクの文化レベルだということ。日本のバイクの地位も、ここまで上げて行きたい。公的な機関で発表会や、イベントが出来ることを目指すべきだ」とメッセージした。
加賀山は、参戦に向け3日間寝られない忙しさを経験した。ここまでの道のりは決して楽なものではなかったはずだ。だか、勝負はこれからだ。公式走行は、鈴鹿開幕前の事前テストになる。
鈴鹿8耐には、参戦を熱望しているMotoGPチャンピオン、フランチェスコ・バニャイアの名も上がる。ラインナップは未定だが「良いライダーを選ぶのであれば、もう、決めないとね」と言う。ドゥカティ・チームカガヤマの鈴鹿8耐からも目が離せない。
会見後、加賀山が「このマシンを駆っている姿を見たい」と伝えると「俺も乗りたい。ライディングして確認したいこともある…かも」と片目をつむった。
(レポート・写真:佐藤洋美)