Facebookページ
Twitter
Youtube

レース・イベント

●インタビュー・写真:楠堂亜希






「シーズン当初のバタバタから考えたら、鈴鹿で勝ったのは凄いことだなと思っています。これは年明けまで言い続けますよ!」

全日本ロードレースJSB1000クラス、最終戦の鈴鹿サーキットを2連勝で飾り、一気に時のヒトとなった水野涼(25歳)が今シーズンを振り返る。
2年間のBSB(ブリティッシュスーパーバイク選手権)参戦を終え、アステモホンダドリームSIレーシングの伊藤真一監督のオファーにより、全日本ロードレース選手権JSB1000クラスへと参戦。

「開幕まではあっという間でした。伊藤監督があってこそ今年のシートだったので、とても感謝しています」

ファンは水野を温かく迎える。元々人気も実力もある選手が全日本に戻ってきたことは、国内レースにとっては嬉しいことだが、本人は戻りたくて戻ったわけではなく、そんな周りの反応が悔しく、逆にそれが原動力になったという。
主張の激しいBSBライダーの間で揉まれた経験から、初戦のインパクトが大事だと挑んだ開幕戦、フロントローからホールショットを決め、ヤマハファクトリーに対抗しトップグループでの争いを展開するが、シフトペダルの脱落によりリタイヤ。鮮烈なインパクトとは裏腹に、悔しくて泣いた。
シーズン当初は環境の違いに戸惑うこともあったが、新しいスタッフとのコミュニケーションを密にすることによってチームの雰囲気もだんだんと変わっていったという。

開幕戦

開幕戦
開幕戦
2023年4月2日 開幕戦 スーパーバイクレースinもてぎ 

第2戦

第2戦
第2戦
2023年4月23日 第2戦 鈴鹿2&4レース

「チームは、伊藤監督がライダーファーストの考えで進めてくれました。まずライダーの話を聞いて、チーム側ができるかどうかを考えるスタイルです。ミーティングも長く、問題解決には時間がかかったけど、出来ないとは言われたことがなかったです。なんとか解決したいという伊藤監督の希望とチームの方針でもありました」

勝つことに拘り、自ら主張して何度もミーティングを重ね、第3戦SUGOラウンドでようやく表彰台の一角に上がる。
全日本選手権は夏のインターバルに入り、レース界隈は鈴鹿8耐テストの直前、水野にワールドスーパーバイク選手権(SBK)ミザノラウンドの代役参戦の話が舞い込む。マシン、タイヤ、環境の違いで当然リスクもある。海外志向が強く、将来的にSBKに行きたい水野はチャンスと捉えてコレに挑戦。

第3戦

第3戦
第3戦
2023年5月21日 第3戦 スーパーバイク in SUGO

鈴鹿8時間耐久

鈴鹿8時間耐久
鈴鹿8時間耐久
2023年7月21日 2024 FIM世界耐久選手権”コカ·コーラ” 鈴鹿8時間耐久ロードレース 第45回大会

「結果的に行ってよかったです! 全日本に対して求める部分も増えたし、SBKライダーとレースすることでスキル以上のことを学んだのがミザノでした」

そして鈴鹿8耐に突入、日本人だけのチームで走る8耐は初めての水野。セットアップは渡辺一馬選手、作本輝介選手に任せて、走ることだけを考えることにした。

第5戦

第5戦
第5戦
2023年8月20日 第5戦 もてぎ2&4レース

全日本の後半戦は夏のもてぎからスタート。8耐で試した事柄を取り入れ、何度もトップに立って場内を沸かせ2位表彰台を獲得。手ごたえを感じ、また、どうしたら最後までペースを維持してヤマハファクトリーと戦えるかという課題が生まれた。

第6戦
2023年9月3日 第6戦 スーパーバイクレースin九州

「第6戦オートポリスは、もてぎからの課題のラスト5周のペースキープをどうにかしようと、いじりすぎて足元を見失い、何もできないレースになりました」
と、苦戦したが、なんとか第2レースの3位表彰台をもぎ獲った。

第7戦
2023年9月24日 第7戦 スーパーバイクレースin岡山

第7戦は岡山国際サーキット。前戦の反省を踏まえ、岡山はあまり触らないで行こうということになった。また、試行錯誤したことによりヤマハに対抗できるセットアップを見つけることができた。岡山は残り3周で自己ベストタイムを出し、3位表彰台を獲得。
そして迎えた最終戦鈴鹿サーキット、水野は全日本JSB1000クラス初優勝からの2連勝という、鈴鹿完全制覇を遂げる。

「今シーズンのデータと、またホンダ車と相性のいいコースなのでイケると思って挑みました。予選はみんな一発タイムを出してきたのだけど、自分のラップを確認するとアベレージがよかったので自信がありました!」

土曜日に行われた第1レース、水野は1周目をトップで帰ってくる。ヤマハの2台と最後まで激しいトップ争いを繰り広げ、最終ラップは清成龍一選手も含めて4台の優勝争いになるが、中須賀選手が岡本選手を巻き込んで転倒。トップでチェッカーを受け嬉しい初優勝。

「レースは駆け引き。残り3周の最終コーナーで前を2台抜きしたとき、中須賀さんを動揺させることができたと思った。あの場面で自分が動いたことにより結果的に最後の場面に繋がったんじゃないかと思う。最終戦はホントに全部が上手く行ったなと思いました」

第8戦
第8戦

第8戦
第8戦

第8戦
2023年10月15日 第8戦 スーパーバイクレースin鈴鹿

そして一度勝ったことで何か目覚めてしまった水野の今年最後のレース、鈴鹿の第2レースはスタートして早々にペースカーが介入、残り12周で再開。終盤は岡本選手との一騎打ちとなり、ラストのシケインのブレーキングで競り勝ち2連勝。

「岡本選手とのバトルは絶対に負けることはないなと思っていたので、トップ2台になった時点で、どこで仕掛けようかな? と思っていました」
と、なにか全てが噛み合ったような顔で楽しそうに回想してくれた。

「毎回トライ&エラーを繰り返して、こんなに忙しいシーズンになるとは思っていませんでした。俺BSBの1年目から前厄、本厄、後厄の大殺界が入って災厄だったんです。こういうのあまり信じないですけど、来年は厄明けなんですよね」

来年、水野は26歳になる。もともとレースを長くやっていくつもりはない。力を発揮できるうちは、安定を求めずお金にもこだわらずチャレンジしたいという。

「今シーズンの全日本を戦って、ライディング中の余裕が増えてバトルの駆け引きがうまくなったり、1周目に前に出ることが自然と身について、印象付けられる動きができるようになっていて、当時は成長を感じられなかったけど、BSBの2年間の経験はすごく濃かったと、BSBに行ってホントに良かったと心底思いました。今年のアステモホンダSIレーシングでの経験で成長できた部分も積み重ねて、今後も自分はSBKの頂点にいける選択をしていきたいと思っています。どこまでこの夢を追っていけるかというと、そんなに時間は残されていないと思いますが、自分の力を100 %発揮できる環境を模索して動いています。今の自分がもてる力で、周りの人たちが喜んでくれるようなレースを続けていきたいです」

(インタビュー・写真:楠堂亜希)

水野 涼
1998年5月31日生まれ
群馬県桐生市出身
74GP初代チャンピオン
2013: 全日本ロードレース選手権 J-GP3 8位
2014: 全日本ロードレース選手権 J-GP3 2位
2015: 全日本ロードレース選手権 J-GP3 チャンピオン
2016: 全日本ロードレース選手権 J-GP2 3位
2017: 全日本ロードレース選手権 J-GP2 チャンピオン
2018: 全日本ロードレース選手権 JSB1000 11位
2019: 全日本ロードレース選手権 JSB1000 4位
2020: 全日本ロードレース選手権 JSB1000 4位
2021: 英国スーパーバイク選手権 22位
2022: 英国スーパーバイク選手権 23位

オフィシャルサイト
https://www.ryomizuno.com/

インスタグラム
https://www.instagram.com/ryomizuno88?igsh=ZWZhcXl5d2czMXp6

水野 涼

2023/12/25掲載