シンプルな249cc空冷4ストロークSOHC単気筒エンジンに、スチールパイプのダイヤモンドフレーム。アップハンドルの幅は肩幅よりコブシ2個ちょっと外になるくらいの広さで、マフラーはサイレンサー部分を少しアップ。前後フェンダーはショートタイプ。ブリクストン Cromwell 250はカスタムされたストリートスクランブラー風のルックスが持ち味。
オーストリアのブランドながらイギリスの首都、ロンドン南部にあるBrixton通りから命名したのがブリクストンモーターサイクル。これはラインナップの中にある軽二輪クラス(126~250cc)の機種だ。それほど彫りが深くないタックロール表皮の黒いシートの高さは790mm。
腰をおろすと、身長170cmでも両足のカカトは余裕をもって地面に接地する足着き。オーソドックなバイクの魅力を持ったカジュアルに使えるバイクなんだろうなぁ、なんて思いながら乗り出した。乗る前は走りへの期待はそれほどなかったと正直に話そう。ところが、いざ乗ってみるとおもしろいんだ、これが。
まず軽い。スペック上で車両重量は145kgとなっているが、ハンドル幅があり、腕の入力が重心より遠いのもあり体感的にはもっと軽く感じるほど、ひらりひらりと動かせる。エンジンは少しだけ雑味があるけれど、低回転から高回転まで引っかかることなくスムーズに吹け上がり爽快。
低回転でとことこ進むのもできながら、高回転までブンブン回すの気持ちいい。ギアチェンジのフィーリングも良く全体的にスムーズなエンジンだ。タコメーターの数字は1万6千回転まであって、さすがにそこまでは無理だろう、と思ったら、やっぱり無理だった。でも1万回転くらいまで針は滞りなく上昇する。
ハンドリングは、ヒラヒラと簡単に車体をリーンさせることができてクセがない。つや消しブラックのワイヤースポークホイールに履いた台湾のメーカー、チェンシン製100/90-18、120/80-17サイズのタイヤは、デュアルパーパス風のパターンの見た目から想像するより舗装路でグリップし安定感がある。トレッドはブロック形状だから“強力”と表現できないけれど、路面を掴んでいる感覚がわかりやすい。滑り出しもおだやか。
結果として、これがワインディングでもかなり遊べるのである。コーナーリングスピードを落としすぎずにコーナーへ飛び込んで、前後のサスペンションをフルに活用して走り抜けていくのに熱中してしまった。すごいスポーツ性能とは言えないけれど、エンジンパワーから、足まわり、フレーム、ブレーキもふくめた全体が実にバランスが良く、気がつくと左右へ倒し込みながら操っているのが楽しくなっていた。
失礼なのを承知だとして、なんてことがないスペックに、シンプルな構造や装備も特別に自慢するようなものはない。だけど純粋にバイクに乗っているぞ、というフィーリングがいい。どこか我慢を強いられるようなところはほとんどないという難しいところがなく従順。
個性的な外観とは裏腹に素晴らしい普通さと言おう。普通なことを狙ってもそう安々とできるもんじゃないと思う。試乗で耐久性はわからないと前置きして、この姿が気に入ったなら、多くのライダーが気楽に動かせられるまとまりがありオススメできると伝えておきたい。オーソドックスなスタイルが流行しているところに、また新しい選択肢が加わった。
(試乗・文:濱矢文夫、撮影:富樫秀明)
■エンジン種類:空冷4ストローク単気筒SOHC2バルブ ■総排気量:249cm3 ■ボア×ストローク:–×–mm ■圧縮比:– ■最高出力:12.6kW/7,500rpm ■最大トルク:16.5N・m/6,500rpm ■全長×全幅×全高:2,020×850×1,105mm ■ホイールベース:–mm ■シート高:790mm ■車両重量:145kg ■燃料タンク容量:11.5L ■変速機形式:常時噛合式5段リターン ■タイヤ(前・後):100/90-18・120/80-17 ■ブレーキ(前・後):油圧式ディスク・油圧式ディスク ■懸架方式(前・後):テレスコピック式・スイングアーム式 ■車体色:デザートゴールド×クロックワークオレンジ、チタンブラック×スターリンググレー ■メーカー希望小売価格(消費税10%込み):704,000円
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