Facebookページ
Twitter
Youtube

レース・イベント

2022年全日本ロードレース選手権は、JSB1000は中須賀克行(ヤマハ)が11回目のタイトルを決め、ST1000は渡辺一馬(ホンダ)がV2を達成。ST600は荒川晃大(ホンダ)が初の栄冠に輝いた。J-GP3は尾野弘樹(ホンダ)が2年連続チャンピオンを決めた。その熾烈な戦いでチャンピオンとはならなかったが印象に残る戦いをしたライダーにフォーカスを当てて、今季の戦いを振り返ってみた。まずはJSB1000からだ。
■文:佐藤洋美

 全日本ロードレース選手権の最高峰クラスJSB1000は、日本のホンダ、ヤマハ、スズキ、カワサキ、そしてイタリアのドゥカティ、アプリリア、ドイツのBMWといった国内外の最新リッタースーパースポーツ市販バイクをベースにレース向けに仕上げられたマシンで争われている。200馬力以上を発揮するモンスターマシンをトップライダーたちがライディングし腕を競っている。

 タイヤについては予選中の使用本数が2セット(前後タイヤ各2本)のみ使用が認められる。なお2017年からホイールサイズはフロント、リアともに17インチに限定されている。

 2022年全日本JSB1000は、全13戦で行われた。ヤマハファクトリーの中須賀克行が、自身11回目のタイトルを獲得した。全戦全勝は昨年に引き続きで、連勝記録を23に伸ばした。

 2022年無敵の王者・中須賀はYAMAHA FACTORY RACING TEAMに所属、チームメイトに岡本裕紀を迎えYAMAHA YZF-R1を駆った。加賀山就臣が引退を発表して監督としてYOSHIMURA SUZUKI RIDEWINを結成し、渡辺一樹がヨシムラチューンのSUZUKI GSX-R1000Rで参戦した。

以下、写真をクリックすると大きく、または違う写真を見ることができます。

 一大勢力であるホンダ勢は、市販キット車のHonda CBR1000RR-Rで挑む。中須賀の最大のライバルであるTOHO Racing清成龍一、期待されたSDG Honda Racingの名越哲平は開幕前にケガを負う。Honda Dream RT SAKURAI HONDAの濱原颯道や、Astemo Honda Dream SI Racingのエースライダーに抜擢された作本輝介がJSB1000参戦開始。Honda Suzuka Racing Teamの亀井雄大が戦いに挑んだ。

 亀井はホンダ鈴鹿製作所で働き、クラブチームで参戦している。メカニックも同じ会社員で、仕事優先の条件下で戦う。亀井は2019年からJSB1000の挑戦を開始、10kgもの体重増加で筋肉を増やし、2021年にはでランキング6位へと浮上しトップ争いに迫る走りを見せるようになる。

 JSB1000は2レース開催の場合は、予選のトップタイムがレース1、セカンドタイムでレース2のグリッドが決まる。第3戦オートポリス2&4、予選はウェットコンデション、霧雨が降り、路面状況がどう変化するのか空を見上げるような状況で、亀井はスリックタイヤ(晴れ用タイヤ)に交換、乾き始めたラインを探して渾身のアタックを見せダブルポールポジション(PP)を獲得する。亀井は「まだ、路面は濡れていて、ビショビショの中で、乾き始めたラインを探してのアタックだった」とスリリングな走行を振り返った。レース1はアクシデントで急遽ピットイン後の復帰で22位。レース2は4位となる。

 続くSUGOでもレース2のPPを獲得し、転倒&3位となり表彰台に登った。続く5戦目オートポリスでも連続表彰台を獲得。次戦へ期待が高まる中で、岡山国際サーキットのテストで肩から落ちる転倒で鎖骨を骨折、参戦が危ぶまれたが、医師の承諾を無理やり取り付けて参戦し5位を獲得している。

 残るは最終戦鈴鹿のみ、ここは3レースが組み込まれた。中須賀は2019年ホンダワークスで参戦していた時に高橋巧が記録した2分3秒台に入れようと懇親のアタックを見せるがクリアがとれずに2分4秒487、2番手は渡辺で2分5秒608、亀井も2分5秒912と5秒台に入れホンダ勢トップとなる。プライベートチームで5秒台を記録してしまうポテンシャルに誰もが驚嘆することになる。

 レース1のトップ争いは、渡辺と中須賀が接近戦を見せ、その後方では、亀井が3番手に浮上するが、復調の兆しを見せる清成が亀井をかわす。中須賀は独走優勝。2位に渡辺、3位清成が復調を見せて入り4位亀井となる。レース2は、清成がオープニングラップを制すが中須賀は首位に立つと、独走態勢を築き勝利、2位に渡辺、僅差の3位で清成、亀井は4位でチェッカーを受けた。

 レース3決勝は15時20分から、15周のラストレースとして行われた。晴天に恵まれた1日だが、夕方にかけて空気の冷たさを感じるようになる。レース序盤から渡辺が首位に立つ、中須賀は2番手につけ、亀井は3番手に浮上する。6周目のスプーンカーブ立ち上がりで中須賀のテールがやや流れたのを見逃さずに、バックストレートから130Rへの進入で亀井は前へ出る。どよめくような歓声が沸いた。さらにシケインで渡辺をかわしトップに浮上した亀井は、そのままレースをリード、6周に渡ってトップを快走する。

 中須賀が11周目のシケインで亀井をかわしてトップとなり、渡辺が12周目の1コーナーで亀井をかわした。中須賀が勝利。2位に渡辺、3位には亀井が岡本と作本を抑え3位に入り表彰台に登った。

 亀井は「レース1、2を走り、レース3に向けてアジャストしたことがうまくいって走れたと思う。念願だった中須賀さんや渡辺さんの前を走ることが出来た。抜いた時はギリギリで、ごめんなさいという気持ちでもあったが、130Rで中須賀さんを捉えた時はヨッシャーと思いました。西陽が射してバトルをしているライダーの影がコースに写るんです。あー、迫られているのだと、わかっていたけど、それでも耐えていたけど、最後は抜かれてしまいました。でも、追いつくことも出来なくて、見ることも出来なかった中須賀さんに追いつけた。前を走れた。ファクトリー勢を押さえて、プライベートの自分がトップを走ることを、ずっと願って来たから、少しの間でも届いたことが嬉しい」と笑顔を見せた。

 亀井は、マシンのマニュアルを読み込み、セッティング本やライディングの本を読み漁り、試したいことが出来るとミニバイクレースや練習で試す。クラブ員にも相談して、鈴鹿製作所の同僚や先輩に頼み込んで、レギュレーションの範囲で試作したパーツでブラッシュアップを図る。常に速く走るために出来ることはないかと模索し続けている。チーム員を鼓舞して、感謝して、挑戦することを諦めない。その姿勢がトップを走ることにつながった。

 来季のJSB1000クラスはケガで欠場していた岡本、名越、清成らが完全復帰、海外参戦しているライダーたちも帰国することになると囁かれている。国内最高峰クラスとして選ばれたライダーたちの戦いが、繰り広げられる。

2022/12/26掲載