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レース・イベント

Wheels And Wavesを観ると、 ヨーロッパの“バイク文化”の成熟度が分かる。
盛り上がりを見せる欧州カスタムシーンを牽引してきたイベント『Wheels And Waves』に参加してきました。すでに多くの人々が“コロナは終わった"と認識し、以前のように活気を取り戻しつつある欧州。そのなかで、いまもバイクシーンに強い影響力を持つこのイベントの様子をお伝えします。
■文・写真:河野正士 ■協力:Wheels And Waves https://wheels-and-waves.com






 3年ぶりに開催されたWheels And Waves(ホイールス・アンド・ウェーブス/以下WW)。僕自身は4年ぶり、通算5回目の参加となりました。
 WEBミスター・バイクでは、これまで何度かWWの参加レポートを展開してきました。それを見て、ヨーロッパではこんなイベントが開催されているんだなとか、行ってみたいなとか、そんな風にしてWWを少し知っててくれるんじゃないかなぁ、と勝手に想像しています。
 

イベントをサポートするブランドは、メイン会場である「Village」に大きなブースを出し、そこで車両展示をするほか、音楽ライブやデモライドなど、さまざまなアトラクションを用意して来場者を楽しませます。

 
 実は2020年、そして2021年と、例の感染症の影響によってWWは開催ができなくて、主催者も参加者も、もうずっとウズウズしてたんです。感染症なんてなかったら、2020年がイベント開催10回目のアニバーサリーだったのですから……しかも2021年は開催に向けて直前まで準備を進めていたのですが、開催2週間前にフランス保険省から、たとえ屋外であっても大規模イベントの開催は許可しない、と通達があり、やむを得ず開催を断念。チケットも既に発売されていたし、各メーカーとのコラボアイテムなんかも発表&販売が開始されていましたから……。

 というわけで、ようやく開催された2022年のWW第10回記念回。それはもう、盛大でした。実は僕が最後に訪れた2018年も、イベント開始2日前の搬入日に、地元住人も過去の例がないと言うほどの嵐によって準備を進めていたメイン会場が破壊され、急遽屋内施設を借りてイベント開催したために、急場しのぎのメイン会場運営となった。だから盛大に開催された僕の過去の記憶は2017年開催回。今年はそれとは比べものにならないほど規模が大きく、イベントとして洗練されていました。
 

会場にやって来る参加者たちは、自分自身が楽しむのはもちろん、周りにいる人たちを楽しませようというエンタテインメント精神に溢れている人たちばかり。こんな格好でビンテージHDに乗り、パレードしながら会場に入ってきたら、そりゃあもう、大騒ぎです。
LAをベースに活動するアーティスト/Robert Vargas(ロバート・バルガス)もイベントに参加。Art Ride会場にインディアンとバスク・フラッグをモチーフにした壁画を描き上げ、またVillageでは即興で肖像画を描き上げるパフォーマンスを見せました

 
 メインスポンサーはインディアンモーターサイクルと、時計ブランドのブライトリング。加えてさまざまな二輪車メーカー、オイルメーカー、サングラスブランド、ヘルメットやライディングウエアといった用品ブランドがサポートブランドとして名を連ねています。それにイベントのメイン会場があるフランス・ビリアリッツ市が後援というカタチで加わっています。

 欧州中から大勢のバイカーたちが押し寄せるこのイベントは、街中を騒々しく走る彼らを問題視する一方、本格的なバケーションシーズン前の閑散期に、ホテルやレストランが連日満室&満席になるほどの経済効果を生み、地元住民および自治体との対立や協力が入り乱れている状態。それでもビアリッツ市の協力を取り付けたのは、ひとえに主催者の努力のたまものです。しかし街の中心部には、以前は存在しなかった、昼前くらいから深夜まで、自動車やバイクの通行を制限するためのゲートが造られ、そこには常にセキュリティが立ち、地元住民やタクシーにはそのゲートを開けるリモコンが配布されていて、それ以外のクルマやバイクは通行できないようになっていました。そもそもビアリッツは避暑地であり、ヨーロッパに初めてサーフィンカルチャーが上陸した場所で、バケーションシーズンには観光客で賑わう場所。そこで地元住民の生活や、静かにバケーションを楽しみたい人々のために、市がゲート導入を決めたようです。とはいえ、集まったバイカーたちはゲート外のあらゆる場所にバイクを停め、ゲート内にあるレストランやバーで、夜中までどんちゃん騒ぎをしていましたが……。
 

インディアン・モーターサイクルはWWとタッグを組み、クルーザーモデル「Chief(チーフ)」をベースにしたデザインコンテストを開催。4組のカスタムビルダーがデザイン画を描き、それを審査員と、オンラインによる一般投票でジャッジし、最優秀賞のバイクを実際に制作しWW会場で発表するというプログラム。優勝はフランスのファクトリー「Tank Machine(タンクマシン)」。ちなみに、インディアンのデザイナー/オラ・ステネガルド、The Vintagentサイトを運営するビンテージバイクのスペシャリスト/ポール・ドルリーン、アメリカでカスタムシーンを撮影し続けているレジェンド写真家/マイケル・リクター、パーツブランドのオーナーでありデザイナー/ローランド・サンズ、ドイツのカスタム雑誌CUSTOMBIKEの編集者/キャサリナ・ウェーバーとともに、僕も審査員として加わりました。光栄です!
これはウォール・オブ・デスと呼ばれる、木製の円柱の壁を、遠心力を使ってバイクで走るという人気アトラクション。通常は軽量なビンテージバイクを使用しますが、ここではエキシビションとしてインディアンFTR1200を使用。車体が重くて大変、とはライダーの弁。僕は円柱の中央で撮影することができましたが、FTRが走る時の円柱の揺れはハンパなく、壁の上で見てた人は、もっと揺れて怖かったんだろうなぁ、と思いました

 
 イベントは6月29日(水)にスタートして、その週末7月3日(日)までの5日間。ビアリッツ市の南にある、広場のようなイベント会場をイベントのメイン会場とするほか、近隣にあるモトクロスコースを借り切ったり、国境を越えたスペインのワインディングを封鎖したりして(メイン会場から30分も走ればスペイン国境なのです)、さまざまなレースアクティビティを展開。そのレースアクティビティも、趣向を凝らし、さまざまな年代やスタイルのバイクが参加できるように工夫されています。
 

「Art Ride」エキシビションに展示されていたボクサーデザインのコンセプト車両。ボクサーデザインは1980年代から2000年代初頭に掛け、国産二輪車メーカーやVOXAN製エンジンとオリジナルフレーム&外装デザインを組み合わせたアヴァンギャルドなマシンを発表していた工房。その創始者でありデザイナーであるティエリー・アンリエットは現在、ブラフシューペリアのデザインを手掛けています。ボクサーデザインの作品を写真で見たことはありましたが、現車を見たのは始初めて。映画の中に登場するようなデザインでしたが、現ブラフシューペリアやアストンマーティンとのコラボバイクのデザインと見比べると、この車両と現在の車両に一貫性があることが感じられました。

 

ストリートドラッグレース「Punk’s Peak」。山の上の一般道を封鎖し、ドラッグレースと言ってもS字コーナーがある変則コースで行われる、WWの名物イベント。観客がいるところは牛や山羊の放牧地で、その柵越しに観客がレース観戦を楽しんでいるのです。
今年新たにプログラムに加わった「The Race of the Loads」。ハンドシフトのビンテージバイクが、深い砂地で直線のみの勝負をする単純なレースですが、深い砂地でハンドシフトを操作するのは、なかなかの技術が必要のようです。

 

欧州で人気のフラットトラックレースをイベントに組み込んだのが「El Rollo」と名付けられたレース。年代によっていくつかのクラスが用意されています。
こちらは、近年欧州で人気が高まりつつある、1970~80年代の、ちょっと古めのオフロードバイクを使ったタイムトライアルレース「Vintage Rally」です。

 

 そんな盛り上がる各会場を見ながら、WWの10回開催を振り返り、その変化も感じました。言葉では表現しづらいのですが……彼らは、トレンドとは関係なく、ビンテージバイク、カスタムバイク、ファッション、アート、サーフィン、スケートボードなどなど、自分たちの好きな世界を突き進んできました。それを紹介するブログがWWの起源で、そのブログの3周年記念が、仲間たちだけが集まったWWのゼロ回開催回だったのです。その後本格的なバイクイベントとしてスタートするのですが、まだ小規模だったそのシーンをいち早くキャッチアップしたヤマハ欧州やBMWがイベントをサポートし、自分たちのプロモーションに活用。カスタムバイクシーンを二輪車メーカーが支えるという、新しいカタチを造り上げました。そのカタチはいまも継続されていますが、メーカーとシーンの連携の仕方は徐々に変わりつつあると感じました。それはメーカーと、イベントと、ユーザーの距離感と言い換えることができるかもしれません。その三者が形成する三角形が、徐々にカタチを変えてきているのです。

 このシーンが盛り上がりを見せ始めて約10年が経ち、その間にバイクを取り巻く環境は劇的に変化し、それによってシーンを取り巻く人々も変化しているから、それは当然のことです。そして、今後このシーンがどんな風に変化して行くのか、見続けていきたい。そんなふうに感じました。

 なんて難しいことを書きましたが、沢山の懐かしい仲間たちと久しぶりに再会できて本当に楽しかった。ただそれだけでイベントに参加できて良かったし、また来たいと思うのです。主催者や仲間たちは、日本の様子はどう? 日本からも沢山のブランドや参加者がWWに来てくれると良いなぁ、と言ってます。来年は是非、沢山の日本からの参加者と、ビアリッツの会場でお目に掛かることができたらなぁ、なんて思っています。
 
●Art Ride/アートライド
 ビンテージバイク、カスタムバイク、コンセプトバイク、ストリートアート、写真、絵画などのアート作品をひとまとめに鑑賞できるコミュニティスペース。会場はビアリッツ郊外にある屋内スケートボードパーク。

 

 

 

 

 

 

 

 
●Punk’s Peak/パンクスピーク
 ビアリッツからバイクで30分ほど走ると、そこはもうスペイン。旅行先として日本でも人気のサンセバスチャンの街もすぐそこです。そのサンセバスチャンの隣町/オンダリビア近くのハイスキベル山の一部道路を封鎖して行う公道ドラッグレースです。1対1の勝ち上がり式で、距離は約400 m、途中にS字があり、テクニックやセッティングも勝負に大きく影響します。レース後は、麓の街オンダリビアで表彰式を行います。
 

 

 

 

 

 

 
●Vintage Rally/ビンテージラリー
 ビアリッツからバイクで約1時間(高速道路を使えば約30分)の隣町/マジェスクにあるオフロードコースで行われるエンデューロのタイムアタックレース。1975年以前、 1985年以前、1995年以前の3つのクラスに分けられています。
 

 

 

 

 

 

 

 
●The Race of the Loads/レース・オブ・ザ・ローズ
 マジェスクにあるオフロードコースの一角の、サンドコースを使った直線レース。
 スタートして150m先でUターンし、100m戻ってゴールするトータル250mコースで争われます。1950年以前のハンドシフトのマシンのみが参加が可能。勝ち上がりで優勝者を決めることなく、1対1の対戦を楽しむエキシビションレース。
 

 

 

 

 

 

 

 
●El Rollo/エル・ロロ
 マジェスクのオフロードコースの一部に、El Rolloのための一周約180mオーバルコースを製作。ビンテージからモダンバイクまで5カテゴリーを用意し、さまざまなマシンがエントリーしていました。

 

 

 

 

 

 

 
●Village/ビレッジ
 メイン会場。音楽ライブ、映画上映会、出展社ブース、バイク&クルマの展示、カスタムバイクコンテスト、サーフィン&スケートのコンテスト、理髪店、バー&レストランなどさまざまな出展があり、イベントが行われています。
 

 

 

 

 

 

 

 



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2022/08/10掲載