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レース・イベント

■報告&撮影:中山五郎 ■協力・写真:ホンダ・レーシング(HRC)https://www.honda.co.jp/motor/motorsports/#HRC

 それまでの4ストロークV型4気筒・NR500に代わり、2ストロークV型3気筒のNS500で世界GPに挑んだ1982年、株式会社ホンダ・レーシング(HRC)は設立された。翌1983年は“HRC”ロゴを付けたNS500が世界タイトルを獲得。以降、HRCは世界のあらゆるカテゴリーでの栄光に加え、モータースポーツ裾野の拡大にも貢献してきた。

 ご承知の通り、これまでホンダの二輪レース活動を担ってきたHRCだが、9月1日に創立40周年を迎える2022年は四輪レース活動機能を追加。モータースポーツ体制の強化を図っており、二輪ロードレースの世界最高峰・MotoGPに対し四輪の最高峰であるF1では2チームに技術支援、4台のマシンにパワーユニット(PU)を供給。内1チーム、レッドブル・レーシングは今シーズン、第13戦ハンガリーGP終了時点でドライバー、チーム共にランキングトップを快走中だ。尚、レッドブル・レーシングとの協議により、2023年から2025年までPUに関する支援が延長されたことを8月2日に発表している。

 四輪のレース活動が加わったことで二輪と互いの技術力を高め、さらに強い組織を目指すHRCだが、目標の中のひとつに「持続可能なモータースポーツを目指したカーボンニュートラルへの対応」を掲げているのもポイント。カーボンニュートラル燃料の実用性向上に加え、小型・高出力・高効率なモーターやバッテリーの研究開発など、レースを実証実験の場としており、カーボンニュートラル活動においてもHRCは世界トップにあるという。

 栃木県さくら市に第4期F1活動をはじめとする最新鋭の四輪モータースポーツの技術開発を行う施設として2014年4月に設立され「HRD Sakura」が、新生HRCの誕生に伴う組織変更によって2022年4月に「HRC Sakura」へと名称変更。今回、風洞やシミュレーターなど、その内部がメディアブリーフィングとして公開され、お話をうかがう機会を得た。二輪モータースポーツにおいては従来通り朝霞をメインに研究開発が行われているが、今後はSakuraの施設も活用していきたいとのこと。

 今週末はFIM世界耐久選手権・鈴鹿8時間耐久レース(鈴鹿8耐)が3年ぶりに開催されるが、ホンダのワークスチームである#33Team HRCは2014年以来の優勝を目指す。

 また、MotoGPは後半戦がスタート。エースのマルク・マルケスが肩の四度目の手術で戦線離脱、残念ながら今シーズンは苦しい戦いを強いられているが、サマーブレイク中にマシンの改良が進み、今後の戦いに期待してほしいとのことだ。

#HRC Sakura
四輪モータースポーツの技術開発を行う研究施設であるHRC Sakuraの所在地は栃木県さくら市下河戸1220-32。同県芳賀郡にある四輪市販車の研究施設からクルマで約40分くらいの場所にある。敷地面積は230ヘクタールでプルービンググラウンド、ソーラー発電所、環境学習エリアなどもある。※以下、写真をクリックすると大きく、または違う写真を見ることができます。
#HRC Sakura
HRC Sakuraは四輪メインの研究施設であるが、HRC全体の活動を知る機会として今回、二輪メディアにも公開された。プレゼンテーションでは株式会社ホンダ・レーシング代表取締役社長の渡辺康治氏、常務取締役 四輪レース開発部 部長の浅木泰昭氏、取締役 二輪レース部 部長の若林慎也氏、取締役 企画管理部 部長の長井昌也氏が新生HRCについて説明。

#対流式の風洞
#対流式の風洞
自動車用として世界最大クラスというステンレス製1ベルト(ムービングベルト。量産車は5ベルトが主流)をもつ対流式の風洞。車体含めワークスチームとして参戦していた第3期F1活動時代の構想が現実となった施設。前後ホイールに繋がった機器によりダウンフォースの数値を得る。ターンテーブルにより横風の影響も知ることができる。

#対流式の風洞
#対流式の風洞
ヒトとの対比でメインファンの大きさがわかる。最高速は200キロまでだが、アダプティブウォールシステムを利用することで280キロまでのテストも可能だという。

#DIL
#DIL
DIL(Driver In the Loop simulator)はAnsible Motion社の技術をベースにしたもので、鈴鹿サーキットやドイツ・ニュルブルクリンクのコースデータによってバンプなども再現。ドライバーは三半規管などからリアルなドライビング感覚が得られる。セッティングやパーツ開発などに貢献。2020年に発売されたシビック・タイプRリミテッドエディションはDILから得られたデータを実車にフィードバッグ、鈴鹿サーキットFF最速タイムを記録するなど、量産車の開発にも協力しているという。

#SMR
SMR(Sakura Mission Room)は世界中のサーキットとネットワーク回線で繋ぐことでリアルタイムで走行データを監視、最前線に戦略アドバイスを送る部屋。専用回線の速度は40Mbps。F1では英国ミルトンキーンズのレッドブル・レーシングで車体を監視、さくらでは4台のエンジンのデータを監視しているという。
#RV
RV(Real Vehicle)ベンチではレース1~2週間前に、サーキットの特性や気温・湿度・気圧に合わせエンジンを最適化するところ。ベンチ室では実際にエンジンを回し、ダメージなどを洗い出す。SMRと連携することも多いという。
#エンジン組み立て室
エンジン組み立て室。F1では年間3基しか使えないエンジンをメンテナンス。規則により消耗品などしか交換することができないが、海外から届けられたその日の内に仕上げて現場に送り返さなくてはいけないほどタイトなスケジュールもあるとか。志望により新入社員やディーラーメカ出身者を担当スタッフ起用するあたりがホンダらしい。センサー類に不良などを検査するX線CT室もある。

#動態保存
#動態保存
#動態保存
HRC Sakuraでは第1期F1参戦時などのヘリテージ車両の動態保存も行っている。旧い車両とは言え安全に走ることを最優先とし、使用されているパーツは形状こそそのままに、写真のように材質の置換などが行われている。当時のF1マシンのホイールは軽さを重視してマグネシウムが使用されていたが、耐久性などの問題もあり、現在はアルミ製になっている。
#各種二輪四輪マシン
#各種二輪四輪マシン
施設公開時、トラックヤードには第4期F1参戦後に初優勝を飾ったレッドブルのF1他、各種二輪四輪マシンが展示されていた。今週末に開催される鈴鹿8耐のTeam HRC参戦マシン(のテスト車)の姿も。CBR1000RR-Rとしては初めての鈴鹿8耐となる。

#HRC40年の歩み
#HRC40年の歩み

#HRC40年の歩み
#HRC40年の歩み
#HRC40年の歩み
「HRC40年の歩み」として展示された車両。WGPで250ccクラスと共にダブルタイトルを獲得したフレディ・スペンサーのNSR500(1985)、3名のライダーによって全15戦全勝のNSR500(1997年)、バレンティーノ・ロッシが駆りMotoGP初年度を制したRC211V(2002年)、パリダカ4連覇を達成したNXR750(1989年)など、栄光のマシンがずらりと並ぶ。

 

2022/08/04掲載