3年のタイ駐在を終えた藤原克昭が帰国、そして新たなフェーズに突入するという。
関東を中心に全国に販売店ネットワークを持ち、ロードレース関係者にはチーム加賀山や生形秀之の強力なパートナーとして有名なMFD(モトフィールドドッカーズ)「株式会社ワースワイル」の執行役員に就任、さまざまなバイクイベントを仕掛けていくようだ。
アジア選手権で現役ライダー生活から引退したのち、カワサキのアドバイザーとなり、全日本は勿論のこと、鈴鹿8耐のジョナサン・レイ、レオン・ハスラム、トプラック・ラズガットリオグル組を優勝へと導いた藤原克昭。レーシングライダーとして16年の海外生活で培ったコミュニケーション力と交渉力や人間性、アジアでの絶大な人気により、Kawasaki Motors Enterprise(Thailand)マーケティング部長&レーシングチーム監督に就任。アジア選手権とタイ国内選手権を統括するKawasaki Thailand Racing teamを率いた。時はコロナの真っただ中、タイ駐在中は1度の帰国することなく仕事に没頭した。3年間のタイでの任期を終えて真っ先に考えたのが,愛する家族のことだったという。
帰国となると仕事は必然と明石(カワサキの本拠地)の勤務になるといわれ、タイ駐在で3年も日本を離れていた藤原が、家族との時間を持ちたいと思うのは自然なこと。レース解散を機に現場から離れる決意をし、離れ離れの家族と過ごす時間を優先させた。藤原からの一報を聞き、岡本社長は採用を即決!役職は「執行役員」。
藤原はこれまでの自分の人生を振り返って、10年ごとに大きな転換とその度に確実に成長してきたという。
「アジア解散、チームグリーン解散となり、今後の将来を考えていました。自分の今までのレース人生や、いろんな場面で培ってきた経験を生かしていく場所がワースワイルだと思った。もっと広い視野を持ってバイク業界で活動し、貢献していきたい。そのために岡本社長と仕事がしたい、そこしか頭になかった」
大事な人生のターニングポイントだが、誰にも相談せずに自分自身で決断した。
岡本社長は、単に仲が良い有名人ライダーだという理由で雇用したわけではない。
「彼のこれまでの経歴、レーサーとしてだけじゃなく、タイでマネージメントや販売の様々なこと、日本語の通じない環境でレース以外のビジネスをしっかりやってきているから、ウチで即戦力になると確信し即決しました」
自社にバイク買い取り部門をもつワースワイルは、全国に直営店が11店舗、うちKTMのオレンジショップも2店舗経営していて、このコロナ禍でも好調な売り上げを続けている。
岡本社長は「ウチは、店長や販売、メカニックはたくさん雇っています。ですが、ウチが抱えているビックネームの顧客に対しても、藤原のような存在が必要ですし、彼は会社の方針をしっかりと引っ張っていてくれる人。今後の顧客サービスを考えると藤原の存在は大事なのです」と、就任して早々に沖縄試乗会とマスツーリングを成功させている。
「次のフィールドとして、ここで、自分のやりたいことが出来ると思った。俺はこの先楽しみでしかないよ!」
「まずは、ショップのお客さんを大事にしたい。コミュニケーションを取れるようなイベント、走行会やスクールを開催し、いっしょに走る機会をたくさん作りたいと思う。突発的に、今晩、集まれるメンバーで走りにいこうや! というのもやりたい。ロードだけじゃなく、オフロードもこれからどんどん挑戦したいと思っているよ」
と藤原。
突発ツーリングなどは、普段からどんなときでもファンに分け隔てなく接し自らも楽しんでいる彼ならではの発想だ。走行会は現在でも岡本社長が先頭に立ってイントラもこなしているが、友人の選手たちにも手伝ってもらうなど顧客満足度を上げていきたいという。また、タイではドロドロのジャングルを走るようなオフロード走行会もこなしているのだ。
もちろん、会社としてスポンサードしている全日本ロードレースにも赴く予定だが、こちらではチームの監督や重要なポストには付かず、敢えてちょっと外側から楽しみたいとのこと。会場ではざっくばらんなレース秘話も聞けるかもしれない!
何の縛りもなく、メーカーに拘らず、己の発信ができる環境を手に入れた藤原克昭、これまでよりもっと身近な場面で遭遇する機会が増えそうだ。
(レポート:楠堂亜希)