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レース・イベント

EICMA2021レポート「日立アステモ」が、 気合い充分の初出展!
速報ではお伝えできなかったEICMA会場の雰囲気をお伝えする、その2です。前回は車両メーカーを中心に紹介したので、今回はパーツメーカーや用品メーカーを中心にお伝えします。
■取材・撮影:河野正士






 EICMAは新製品をユーザーにお披露目する場であると同時に、自社製品を売り込んだり、新しいビジネスパートナーを見つけたりするB to Bのトレードショーでもあります。したがってバイヤーやエンジニアが、ブースを出展しているブランドの担当者と熱いビジネストークをしている、なんてこともあります。多くの場合は、ブース奥のミーティングルームで、そのような会議は行われているんですが……それでは、それらのブランドを紹介します。最後には、美しいキャンペーンガールの皆様もまとめてみました。ぜひ、最後までお付き合い下さい。
 

■日立アステモ

 今回、日本から多くのエンジニアが参加した「日立アステモ」。EICMA初出展の気合いを感じました。日立アステモは2021年に1月、先進運転支援システムなどを構築する日立オートモティブシステムズ、燃料供給システムや電子制御システムを開発するケーヒン、サスペンションのショーワ、ブレーキシステムの日信工業が統合して誕生した会社。現在は四輪用パワートレイン部門、四輪のシャーシ部門、モーターサイクル部門から構成されています。EICMAには、そのモーターサイクル部門が出展。2014年から2019年まではSHOWAが単独でEICMAに出展していました。今回は日立アステモとして初出展ということもあり、すべてのブランドの製品を展示し、その技術をアピールしました。
 

 
 今回は日立アステモのエグゼクティブバイスプレジデントでありモーターサイクル事業部長である杉山伸幸氏など首脳陣も会場入りし、ブースにやって来る二輪関連ブランドやメディア対応を行っていました。
 杉山氏にお話を伺うことが出来ました。
「4つのブランドが一つになったことで、“走る、曲がる、止まる”というバイクの基本的な機能を司るハードウエアと、それらを制御するソフトウエアの両方を、自社で開発・製造できるようになりました。それらを組み合わせれば、個別のシステムや技術力が向上するのはもちろん、各システムの連携、それらの簡略化も可能になります。また同時に、完成車メーカーが開発したエンジンやフレームを使用し、ひとつのモデルをゼロから開発することも可能になりました。分かりやすく言えば、我々の技術や知見によって、二輪車メーカーに新しいモノ造りを提案できるようになったのです。SHOWAの自動車高調性機能/EERA RIDE HEIGHTテクノロジーの考え方と、NISSINのABSを利用した、今回参考出品した小型車両向けのリア車高調整機能は、その一例です」と話してくれました。
 

 
 今回のEICMAで展開した小型車両向けのリア車高調整機能のコンセプトとは、ABSがブレーキフルードに圧を掛けるために装備する油圧ポンプを、リアショックの簡易車高調整用ポンプとして利用するというもの。東南アジアなどで、スクーターを中心とした小排気量車に複数人が乗車し、大きく下がってしまったリア周りの車高を適切な位置に調整して走行安全性を高めることを目的としています。
 

 
 東南アジアに展開する車両はフロントディスク/リアドラムのブレーキセットが多く、フロントのみにABSを装備しています。そこに一般的にはフロントとリアを作動させる2チャンネルのABSを組み込めば、余っているリア用のチャンネルをリアサスペンションの車高調整に利用できるというのです。このコンセプトモデルは、まだアイディア段階とのことですが、バイクを生活に欠かせない道具として利用する地域においても、安価で安全で快適な二輪の世界を提供するための技術開発を続けたいと、杉山氏は話していました。
 
 では展示されていた各ブランドのアイテムを見てみます。
 

<BMW M1000RRおよびスーパーバイク世界選手権参戦車両のNISSIN製ブレーキシステム>

 ブレーキブランドのNISSINは、スーパーバイク世界選手権を戦うファクトリーチーム/BMW Motorrad WSBK teamをサポート。レースの現場で、ブレーキシステムを共同で開発し、各アイテムを提供しています。展示されていたのは、そのフロントブレーキキャリパーとマスターシリンダーでした。また、WSBKを戦うベース車両「M1000RR」の市販車に採用されているNISSINのブレーキシステムも展示されていました。ユニークなのは、BMW側から、レースで得たデータを元に市販用ブレーキを開発して欲しいとオーダーがあったこと。市販車用ブレーキ開発では、車両メーカーから要求するブレーキのスペックを提供されることが一般的で、レース用ブレーキのスペックをベースに市販車用ブレーキを開発するという流れはとても珍しいとのこと。M1000RRはBMW Motorrad初のMシリーズ車両と言うこともあり、市販車でもレベルの高いサーキット走行が想定されていて、高いレベルでのパフォーマンスを安定して発揮できるように仕上げているそうです。
 

 

<KEIHIN製EV用制御システム>

 電動バイクでは、アクセル開度を読みとってライダーが求める要求トルクを算出し、その要求トルクに応じてモーターを駆動します。「EV Management Unit」はアクセル開度の読み取りとトルクの算出を行い、「EV Motor Drive Unit」はそのデータをCAN通信で受け取りモーターを駆動するための指令を出しています。別体にすることでレイアウト性を高めると同時に、「EV Motor Drive Unit」をモーターに近づけることで両者を繋ぐ大電流ハーネスを短くすることができ、抵抗を減らすとともに、コストも抑えるそうです。そしてManagement UnitとMotor Drive Unitが一体化したモノが「EV Inverter」。今回は小型車向けの出力3kWまでを想定したインバーターが展示されていました。
 

EV Management Unit(右)と、EV Motor Drive Unit。
EV Inverter。

 

<SHOWA製電子制御サスペンションEERAおよびTwo in Oneフロントフォーク>

 SHOWAの電子制御サスペンションシステム「EERA(イーラ)」。バランスフリーフロントフォークに組み込んだEERAはカワサキZX-10Rやハーレーダビッドソン・パンアメリカに、カートリッジフォークに組み込んだEERAはカワサキ・ベルシス1000やホンダ・アフリカツインなどに採用されています。
 

 
 また東南アジアを中心とした小排気量スクーターに採用する倒立フロントフォークの作業工程や生産コストを大幅に下げる「Two in Oneフロントフォーク」も展示。アンダーブラケットとアウターチューブを溶接。取付ボルトの切削工程や取付工程を省略。部品点数の削減をしつつ、製造工程を短絡化することでコストを大幅に削減。クランプ部が緩む危険性もなく、安全性も高まるそうです。
 

 

<SHOWA製Side by Side用サスペンション>

 いま北米では、サイド・バイ・サイド・ビークル(SSV/多用途四輪車)の需要が高まっています。2人または4人乗りのSSVは、バイクのように跨がるATVよりも乗車人数が多く積載重量も大きい。また車格も大きいためサスペンションへの要求も高く、サスペンションストロークも長いのが特徴です。これまでSHOWAは、ATVには参入していたもののSSVには未参入で、あらたにSSV市場に参入することを決めたそうです。ATVはもちろん、MXなどのオフロード二輪車での知見を生かせるとともに、電子制御技術によってサスペンションやパワートレインを制御できれば、乗り心地やパフォーマンスを大きく向上させることが可能。SSVに新しいサスペンションテクノロジーを持ち込み、ライバルブランドとの戦いに挑むそうです。このSSV用のサスは大きくて、格好良かったですね。
 

 

<NISSIN製 DACS>

 開発中の、東南アジアでのスクーターへの装着を検討している新しい前後連動ブレーキシステム「DACS(ダックス)」。リアのドラムブレーキを稼働させるブレーキのレバー操作に連動して、フロントブレーキキャリパーの油圧を加圧し電気的にアシストする機構です。

 本来二輪車は、フロントとリアのブレーキをバランスよく使うことでブレーキ性能が高められ、車体を安定して減速させられます。しかし経験が乏しいライダーは、恐怖心などからフロントブレーキの使用頻度が少なく、それによってリアブレーキを使用し減速しようとする傾向が強いことが事故調査などで分かったそうです。しかしリアブレーキだけでは制動距離が長くなるうえに、2人乗りや積載重量が増えたとき、安全に減速できない可能性が高くなる。そこでいままでと同じリアブレーキの操作に対して、フロントブレーキを連動させることで、リアブレーキのみの緊急ブレーキや、積載重量が増えたときの制動距離を抑制させるのが目的で開発されたのが「DACS」なのです。
 
 

 

■VR Equipment

 VR46ブランドから派生した新しいブランドのようです。そもそもは、バレンティーノ・ロッシのために設計されたウエア。バレンティーノのライフスタイルをサポートするブランドとしてスタート。そしてバイクのライディングに限らず、二輪系スポーツに打ち込むアスリートに向けて、トレーニングやレース、そしてレース以外の日常生活においても快適で機能的なウエアを開発しブランド化したようです。
 

 
 アイテム開発はバレンティーノ自身にくわえ、彼がサポートするVR46ライダースアカデミーの生徒たちが、トレーニングプログラムに参加した際に様々なテストを行っているようです。ライディングギアにおける革新的な素材やテクノロジーとその開発過程は、バレンティーノのDNAそのものであり、それがブランド設立のスタートだった発表されています。どれもモダンで、とても格好良かったです。
 

 

 

■PANDO MOTO

 2011年にリトアニアでスタートしたライディングギアブランド「PANDO MOTO/パンドモト」。彼らが最初にEICMAに出展した2014年からのお付き合い。以来、新製品を説明してもらった後に、ビールを飲みながらの近況報告するのが恒例となりました。その後は良いパートナーが見つかり、日本でも販売がスタート。
 

 
 ラインナップも増えて、総合ライディングギアブランドとなりました。彼らのアイテムはシンプルで機能的なのが魅力。傷ついたライディングウエアも展示されていて、創始者のマリウス自身が転倒テストを行ったモノだそうです。見せてもらった新製品のいくつかは、既に日本上陸を果たしているようです。
 

 

 

■ツーリングバッグ

 ツーリングバッグブランドからは、ソフトタイプのサイドバッグやトップバッグ、タンクバッグが多数展示されていました。これは前回2019年開催時頃からのトレンド。ハードケース並みの車体装着時の安定感がありながら、ハードケースよりも車体が軽快に見えるし、収納物が少ないときはサイドバッグの幅を減らして車幅をスリムにできるのも魅力なのかもしれません。
 

こちらはGIVIの展示車両およびアイテムたち。

 

こちらはSW-MOTECHの展示車両およびアイテムたち。

 

■ヘルメット

 二輪車メーカーだけではなく、今年は多くのヘルメットメーカーも出展していませんでした。それはそれで、非常に寂しいモノがあります。とはいえ、出展メーカーはニューモデル&ニューカラーを多数発表しました。個人的な感想ですが、ネオレトロなヘルメットは一段落。モダンなスタイルのヘルメットに、ポップなカラーリングが目立ったなぁ、と感じています。
 

SHOEIは「グラムスター」にマルケスがドイツGPで使用したグラフィックをアレンジして使用。「EX-ZERO」には東京の文字が!

 

HJCは最新モデルの「RPHA1」ベースの、MotoGPを戦うポル・エスパルガロのレプリカを展示(写真右)、いいですね。

 

日本ではトップケースのブランドとして知られている「GIVI」ですが、その樹脂成形の技術を活かして欧州ではヘルメットも販売しています。ここでもカラフルなグラフィックが多く採用されていました。

 

エッジの効いたデザインが特徴の「LS2ヘルメット」。ここはずっとポップなカラーリング推しですね。ここ最近はレースシーンでも愛用するライダーを多く見るようになりました。また運動量の多いオフロードヘルメットは、大胆なエアダクトのデザインも特徴です。

 

イタリアンヘルメットの雄、Airoh。2021年シーズンをもって引退したモトクロス界のレジェンド/アントニオ・カイローリの記念ヘルメットが展示されていました。なにせモトクロス世界選手権で9冠達成ですから。それとエッジの効いたシェルデザインとポップなカラーリングが有名なAirohですが、ブラックで統一したロード&オフロードヘルメットをまとめて展示。高い安全性を持っていることをアピールするために、あえて派手なカラーリングを廃して展示したのです。これはコレで、いいですね。

 

オフロードからオンロードまで、多様なライディングギアを展開する総合ライディングギアブランドの「Just1」。その最新作である、この2つのヘルメットはカーボンシェルを採用すると同時に、ヘルメットが衝撃を受けた際に二重構造のインナーを僅かにスライドさせることで脳へのダメージを軽減させるS.O.C.システムを採用しています。

 

復活したイタリアのヘルメットブランド「LEM Helmet/レムヘルメット」。かつてWGPに参戦したライダーにも愛用者が多く、その当時のロゴを使ったネオクラシックなスタイルの最新モデルを発表しました。

 

フランスの「NACA Helmet/ナカヘルメット」。カーボンのスペシャリストで、船舶製造の経験を活かし、独自のカーボンハニカム素材を使ってヘルメットを開発。2013年に復活した新生ブラフフューペリアの最新モデル「ロレンス」のカーボンボディも、彼らが手掛けたのだそうです。

 

■キャンペーンガールのみなさん

もう説明の必要はありませんね。ゆっくりとご覧下さい。
また、これにて2021年EICMAレポートは終わりです。お付き合い、ありがとうございました。
 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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2022/01/06掲載