Facebookページ
Twitter
Youtube

試乗・解説

百花繚乱の2000年代から 新世代ビッグスクーターは こんなに落ち着いた! SUZUKI BURGMAN400
一時期、あんなにあちこちを走り回っていた
「ビグスク」こと250/400ccスクーター。
一時の勢いはなくなってしまったけれど
あんな便利な乗り物、まだまだ人気は健在だ。
その最新ビグスクはバーグマン400。
「あの頃」と比べると、グッと落ち着きました。
■試乗・文:中村浩史 ■撮影:渕本智信 ■協力:スズキ https://www1.suzuki.co.jp/motor/ ■ウエア協力:アライヘルメット https://www.arai.co.jp/jpn/top.html、クシタニ https://www.kushitani.co.jp/




「流行」を越えての「定着」の世代

 きっかけは1995年発売のヤマハ・マジェスティだったと思う。250ccクラスのスクーターといえば、それ以前も1950~60年代に富士重工ラビットや、80年代にはホンダのフリーウェイやフュージョンというモデルがあったけれど、ビッグスクーターという新ジャンルとして潮目が変わったのはきっとマジェスティだ。
 それまでも、スクーターの代名詞である50ccのように非力でなく、行動範囲もスポーツバイクほど広い、さらに荷物も積めて乗る服装も選ばない、なんてポイントが評価されてきたビッグスクーター。その流れを加速させたのがマジェスティだった。
 マジェスティは発売するやすぐに販売ランキングの上位に名を連ねるようになり、96年のベストセラーの座をゲット! この後にはホンダ・フォーサイトやフォルツァ、スズキ・スカイウェイブらのライバルを呼び、ビッグスクーターの一大ブームが出来上がるのだ。
 実はこの頃、日本のバイク界は販売台数がどんどん落ち込んでいて、このビッグスクーターと、ヤマハTW200に代表されるストリートトラッカーが販売台数を下支え。その後に250ccスポーツモデルで息を吹き返すのだが、この時期の貴重なツナギの役割を果たしていた。
 

 
 その250ccスクーターは、まさに一大ブームと呼べるほどの人気となって、街中にはどんどんビッグスクーターがあふれた。となるとモデル数も増えるわけで、2000年頃にはフォルツァ、スカイウェイブが250ccだけでなく、400ccや600cc、650ccに増殖。ホンダは400/600はシルバーウィングという名前だったけれど、さらに各モデルも、細かな仕様の違いでバリエーションモデルを次々と生み出していった。
 その頃にバイクへの装備が本格化されたABSにアイドリングストップ、ショートスクリーンやパイプハンドル、電子制御式マニュアルシフトスイッチの有無などで細分化して、タイプSとかリミテッドとか、タイプCとかリミテッドエディションとか――。そんな百花繚乱な時期だったのだ。
 

 
 それからしばらく。2020年代となった今、あの頃ほどのビグスクブームはなくなってしまったが、今でもビグスクの便利さ、手軽さ、機動力の良さを評価するファンは少なくない。そして、一時期の「何でもかんでもついてます」的バリエーションも落ち着いた今、発売された最新型がバーグマン400なのだ。
 バーグマン400は2017年に、それまでのスズキのスクーターブランドである「スカイウェイブ」から改称して誕生した400ccスクーターだ。この2021年モデルは、新排出ガス規制に適合させるモデルチェンジで、加えて小変更を受けての登場。一見して高級感のある、質感の高いモデルを目指しているのがよくわかる。250ccスクーターブームの末期は、ちょっと子供っぽい、ワルイメージに取られていたビグスクを見直してほしい、というねがいもあるのかもしれない。
 エンジンは、やはり250ccより強力なトルクで、アクセルひと開けのトルクが段違い。ビグスクに良く言われる「動きがもっさりしていてギアつきバイクほどキビキビ走れない」というイメージはまるでない。
 さらに高回転もよく伸びて、高速道路で120km/hクルージングするのも快適! その時の安定性もしっかり確保されていて、まだまだスピードを上げても不安な動きは一切ないのだ。
 

 
 今回のモデルチェンジの目玉であるツインプラグ化やトラクションコントロールの効果は分かりづらいものだ。トラクションコントロールは、雨で濡れた路面などのコンディションで、アクセルを意識して大きく開けた時くらいしか介入しないし、あくまでも「転ばぬ先の杖」的メカニズム。ツインプラグも、燃焼効率のアップで排出ガスをクリーンにするもので、パワーアップの体感できるものではないのだ。
 それより、バーグマンのボディサイズ感がいい。これは、すでにラインアップされなくなってしまった旧スカイウェイブ250とほぼ同サイズで、車両重量こそ初期400よりも20kgほど重くなっているけれど、その分は400ccのパワーに対する車体の安定性を確保するための剛性アップに使われていて、その重量増はほとんど気にならない。250ccサイズのボディに400ccのパワー、というイメージなのだ。

 ビグスク最盛期の電子制御マニュアルミッションボタンもなければ、きらきらと輝くバーハンドルも、スポーティに見えるショートスクリーンもないバーグマン400。ヤンチャなコドモが、落ち着いたオトナになって帰って来たような、そんなモデルチェンジなのである。(試乗・文:中村浩史)
 

 

ライダーの身長は178cm。写真の上でクリックすると両足着き時の状態が見られます。

 

最新の排出ガス規制に適合させるために、排出ガスをクリーンに=燃焼効率を高めるのが裏メインの変更箇所。そのためにエンジンをツインプラグ化し、カムプロフィールも変更。新たにトラクションコントロールも採用した。

 

スカイウェイブからバーグマンに改称されてから、フロントホイールは14→15インチに大径化。ブレーキはΦ260mmのディスクローターをダブルで装備し、今回の3色ボディカラーのどれにも、青ホイールを採用。

 

マフラーにはカーボン調プリントのヒートカバーを装着。質感高くていいな、これ。タンデムステップ下の3角穴は盗難防止用にチェーンロックを通す。リアサスはエンジン前方、車体下部に水平にマウントされている。

 

スカイウェイブ時代には、250ccも含めてバーハンドル版も発売されていたものの、今はカバードハンドルに統一。メーター中央の液晶ディスプレイには、オド&ツイントリップ、瞬間&平均燃費、残ガス走行距離計を表示。

 

クッションが厚めのシートは、中央部のライダー用バックレストが、裏側からのビス止めで0/15/30mmと3段階に調整可能。シート下スペースは形状によってはフルフェイスとジェットが計2つ収納できました。

 

メインスイッチ左にはパーキングブレーキ、さらにボディパネルの左右には小物収納スペースあり。右スペースにはシガーソケット式DC供給口がある。給油口はフロアボードにリッド+キーロックで設置してある。
フロアボードがきれいにカーブしているのは、ライダーが座って、ちょうど足を下に降ろした時に、その足にぶつからないようにシェイプしているから。足着きは、シート高だけじゃなくて、足の降ろしやすさで決まるのです。

 

●SUZUKI BURGMAN400 ABS主要諸元
■型式:8BL-DU11N ■エンジン種類:水冷4ストローク単気筒DOHC4バルブ ■総排気量:399cm3 ■ボア×ストローク:81.0×77.6mm ■圧縮比:10.6 ■最高出力:21kw(29PS)/6,300rpm ■最大トルク:35N・m(3.6kgf・m)/4,900 rpm ■全長× 全幅× 全高:2,235 × 765 × 1,350mm ■ホイールベース:1,580mm ■シート髙:755mm ■車両重量:218kg ■燃料タンク容量:13L ■変速機形式:Vベルト無段変速 ■タイヤサイズ(前/後):120/70-15M/C・150/70-13M/C ■ブレーキ(前/後):油圧式ダブルディスク(ABS)/油圧式シングルディスク(ABS) ■車体色:マットソードシルバーメタリック、ソリッドアイアングレー、マットブラックメタリックNo.2 ■メーカー希望小売価格(消費税込み):847,000円

 



| 新車詳解へ |


| スズキのWEBサイトへ |

2021/08/27掲載