Facebookページ
Twitter
Youtube

試乗・解説

ロイヤルエンフィールドの興味深いバイクを紹介。
ロイヤルエンフィールドから4台の魅力的なモデルがリリースされた。各モデルの説明と、単気筒と2気筒の2モデルに試乗してきたのでインプレッションをお届けしよう。
■試乗・文:濱矢文夫 ■撮影:松川 忍 ■協力:ロイヤルエンフィールド http://www.royalenfield-tokyoshowroom.jp/




あえて1950年代の英国車風に。
Classic 500

 プロポーションも含めて1950年代の英国車風に仕上げたという、その名の通りクラシックな外見から想像したより走りはしっかりとしていた。キャブレターではなく燃料噴射装置を採用している499ccの空冷OHVエンジンは、キックスターターとセルスターターの併用で、動物が身震いするかのように震えて目覚めた。アイドリング付近では1つのシリンダーの中で燃焼してピストンが上下し、クランクが回るのをイメージできるような鼓動感と、長いキャブトンタイプのマフラーから出る低い排気音は、いかにも単気筒といった感じ。景色の流れが速くなるとブルブルからバタバタとしたビートに変わった。

 ロングストロークで美しく並んだ冷却フィンの見た目からイメージする通り、低中回転域の豊かなトルクで走るタイプのエンジンだ。スロットルグリップを掴んだ右手をさらにひねるとスムーズに高回転まで回り切るけれど、そこまで引っ張って飛ばして走るより、早めにシフトアップして路面をやさしく蹴るように走らせるほうが気持ちいい。80km/hくらいまですんなりと加速。このスタイルでスピードについて語るのはナンセンスかもしれないが、日常的な使い方で困ることはない。高速走行でのスタビリティに不安はなく、リラックスして乗れ、スプリング付サドル風シートの座り心地が柔らかく快適なクルージングができた。

 
 フロントが19インチでリアは18インチという外径のホイールに、バイアスタイヤを履いたハンドリングはひらひらとしながらも実に素直で唐突な動きをしない。このエンジンから出せる速度内ではこれといってネガティブなところが見つからない。誰でも怖くなくイージーに走らせることができると思う。旋回しているときの安定性やコントロール性も申し分ない。街中でのちょっとした右左折から、それなりのスピードで曲がる場面でもナチュラルなハンドリングで戸惑わない。ブレーキも十分な効き。これなら趣味の乗り物としてだけでなく、移動の道具としても日常的に使える。

 個人的にはどちらかといえば速いオートバイが好きなんだけれど、おべっかなんてなく、走りながらこれと一緒にすごすバイクライフもいいな、と考えていた。経験上、運転していてマイナスに感じるポイントがあると、速いとか遅いとか、新しいとか古いとか関係なく、“楽しい”という感想にはならないことが多い。このClassic 500に乗っているときは終始笑顔でいられた。いい意味でクセのあるルックスながら、乗り味に強いクセはまったくない。

 金属の機械というより、まるで生きているかのようなフィールがおもしろい。国産メーカーにはない“ゆらぎ”がある。何かに例えるとしたらHARLEY-DAVIDSONの魅力と近い。数値では語れない。私にとってはどこか懐かしいけれど、若いライダーには新鮮かも。二輪で走るバイクという乗り物の多様性を感じさせる1台。ただ、正規輸入代理店の方にうかがうと、このClassic 500はもう国内に新規で入ってこないという。新車を手に入れるチャンスは在庫のみとなる。なんとももったいない。
 

背筋が直立して、椅子に座るような下半身になるペグの位置。股下に車体がある印象で腰高な感じのポジション。
805mmのシート高で、身長170cm体重66kgのライダーは両足がかかとまで届いた。車両重量195kgは軽い部類ではないけれど、十分な足着きのおかげで支えやすい。

 

直立したシリンダーの空冷4ストロークOHV単気筒499ccエンジン。変速は5段リターン。エンジン始動はキックレバーとクランクケースの上にちょこんと載って見えるセルモーター。“EFI”と刻まれたプレートがあることから分かるようにキャブレターではなく燃料噴射装置。パイプで構成されたダイヤモンドフレームのレイアウトがおもしろい。

 

レトロ感たっぷりのアナログメーター。タコやギアポジションインジケーターなどはない。トップブリッジを覆うメーターパネルの両脇に伸びているのは小さいポジションランプ。
テレスコピックフォーク、ヘッドライトのバイザー、フェンダーと実にクラシカルな造形。古めかしくてもφ280mmという大型のディスクローターを使った油圧ブレーキにはABSが装備されている。ワイヤースポークの19インチ外径のリムに装着されたタイヤはAVON製。

 

サドルシートの下側にはスプリングがありお尻に優しい乗り味。スチールフェンダーに載るようにあるクッションが厚いタンデムシート。華奢なグラブバーがかわいい。
見て分かるようにチェーンは車体右側を通るレイアウト。副室のあるガス封入式リアショックアブソーバーは、5段階のプリロード変更ができる。φ240mmディスクのリアブレーキに使われているキャリパーはバイブレ製。110/80-18サイズという細いリアタイヤ。おにぎり型をした左のキー付サイドケースはツールボックス。

 

膨らんで見える燃料タンクの容量は13.5L。ニーパッドがクラシカルなスタイリングに一役買っている。タンクとシートのつなぎ目真下にあるスクエアボックスは、カタチから想像できるようにバッテリーが入っている。
クロームメッキされたキャブトンタイプのサイレンサーには、目立たないけれどヒートガードが取り付けられている。排気が出るエンドはリアタイヤより後ろになる。右側にあるおにぎり型ボックスの中にはエアクリーナーがある。リムはアルミではなくスチール。

 

●Classic 500主要諸元
■エンジン種類:空冷4ストローク単気筒OHV ■総排気量:499cm3■最高出力:27.2bhp/5,250rpm ■最大トルク:41.3N・m/4,000rpm ■全長×全幅×全高:2,140×800×1,080mm■シート高:805mm ■車両重量:195kg ■燃料タンク容量:13.5L ■変速機:5段リターン ■タイヤ(前・後):90/90-19・110/80-18 ■ブレーキ(前/後):φ280mmディスク/φ240mmディスク■メーカー希望小売価格(消費税10%込み):773,000円

 

ハリスのフレームに、650cc2気筒エンジン
Continental GT650

 SOHC4バルブの空冷パラツインエンジンは、最近のこのレイアウトの2気筒エンジンでは定番となりつつある270°クランクを採用。燃焼してピストンが上下するときの慣性によって起こるトルクのバラツキを抑えることができ、スロットルを開けていく右手の動きとトルクの出方がダイレクトで気持ちいい。一次振動を抑えるバランサーが入っていることもあり、低回転域から粘り、明確な押し出し感がありながらも右手の動きにギクシャクするようなことがなくなめらか。古典テイストを入れてデザインされた姿から思い浮かべるより振動は少ない。ヌルヌルと滑るように前に進んでいくのは独特で、歩くような速度でも制御は簡単だ。

 648ccの排気量から7150rpmで46馬力ちょっとを出す最高出力と、52Nm/5250rpmという最大トルクで、車両重量が198kg。このスペックは目をみはるものではないけれど、乗ってみると走りが退屈なんて思わせない。低回転域のスムーズなトルクから回していくと乾いた排気音をともなって5千回転くらいからスルスルと速度が伸びていく。そこで加速に忙しさはない。絶対的な速度は高くなくても心の中はご機嫌だ。これはロイヤルエンフィールドが現時点でラインアップしている機種に共通している数値からはわからない魅力。
 

 
 フレームビルダーとして名高い英国のハリス社が設計した鋼管ダブルクレードルフレームを使う車体は、またがるとお腹の前にある燃料タンクの存在感があるけれど実際はコンパクト。クリップオンハンドルでそれなりの前傾姿勢になるスポーティなポジションながら下半身のフィット感もよく試乗している間にキツく思うことはなかった。ステップの位置も適度に後ろでポジションに違和感がない。サスペンションはしなやかに動いてリアタイヤの存在を把握しやすく、積極的に走る気持ちを文字通り後押しする。

 重心が低いこともあり低速でも安定して動かせるから、ビギナーでもすんなり乗れると思う。扱いやすいエンジンの特性に加えてハンドルが大きく切れるからUターンも楽だ。
 その分、飛ばしていくと切り返しなどで若干粘る感じがあり、いつでもどこでもヒラヒラと機敏なフットワークとはいかない。日常速度域では逆にそれゆえに乗りやすいと思うライダーも少なからずいるだろう。車両と一体になって操っている手応えを楽しめる。思いっきり頑張って走りだすとサスペンションに少し頼りなさが垣間見えたけれど、そうやって走らなくても気持ちよさがある。
 
 

 
 レトロカフェレーサースタイルと乗り味が同期しているから整合性がとれて戸惑わない。ちゃんとスポーティさを味わえる。国内でのライバルはカワサキの新しいメグロK3やW800シリーズになるだろう。走りと個性、実用性も含めてもいい勝負になりそうだ。単気筒のClassic 500と一緒でまとめかたがうまくバランスがいい。あれもこれもと欲張っていびつになるより奇をてらわずに全体が調和しているから、それがフレンドリーな印象につながって個人的なツボにハマった。
 

トップブリッジ下にクランプしたセパレートハンドルだが、そこから一度アップさせて、シボリとタレ角がつけられている形状で、燃料タンク上面より下になっていないことからもハンドルグリップ位置はそれほど低く感じない。適度な前傾姿勢になっているけれど、バックステップになっていることもあって無理のない体勢。
身長170cm、体重66kgのライダーがまたがったもの。シート高は793mm。シートは前方に向い細身になっているけれど角のある形状なので、数値からもっと足着きに余裕があると思えたが、気持ちブーツのかかとが浮いた。

 

4バルブのSOHCヘッドで270°クランクの空冷パラツインエンジンは、伝統を受け継ぎ改良されてきたものではなく、新設計されたもの。ヘッドが小さめで面積の広い右側クランクケースカバーの外観は個性的だ。ボアxストロークが78 x 67.8mmとショートストローク。始動はセルオンリーで変速は6段。ラジエターと勘違いしそうなくらい大きいオイルクーラーを備えて熱対策をしている。燃料噴射システムはボッシュ製。

 

φ320mmローターにバイブレのキャリパーを使った油圧シングルディスク。18インチのワイヤースポークホイールに使われている2.50サイズのアルミリムはEXCEL製。正立タイプフロントフォークのインナーチューブ径はφ41mm。デュアルチャンネルのABSを装備。
古き良き英国車を連想させるルーカス風テールランプが印象的な後ろ姿。細パイプで小ぶりなので目立たないアシストグリップ。マフラーは各気筒から伸びた左右2本出し。サイレンサーがアップしているところにスポーツマインドを感じる。

 

段付きのダブルシートは白ステッチ。純正オプションでカフェスタイルのシングルシートもある。リアサスペンションのサブタンク付2本ショックはプリロード調整が可能。リアは3.50-18サイズのホイールリム。それに履くタイヤは古いバイク好きには懐かしさを感じさせるピレリのファントムでサイズは130/70-18。往年の名作のままではなく、現代の技術で生まれ変わっているだけあってなかなかのグリップ。
オーソドックなクロームメッキのリングがついた2眼メーター。小さいデジタル表示ウインドーは燃料計と、表示を切り替えて使うオド、トリップなど。タコメーターは7500回転からレッドゾーン。スピードは200km/hまで目盛りがある

 

古き時代の英国車を思い出させる燃料タンクの形状と、クラシカルな燃料キャップ。ボリュームがあるように見えるけれど、容量は12.5Lとさほど大きくない。
現代の男性としては身長が高いとは言えない170cmの私でも、乗車姿勢をとるとヒザがここまでエンジンヘッドに接近する。だからこの部分にはヘッドに触れて熱い思いをしないよう簡素なガードがついている。

 

●Continental GT650主要諸元
■エンジン種類:空冷4ストローク並列2気筒SOHC4バルブ ■総排気量:648cm3■最高出力:47bhp/7,150rpm ■最大トルク:52N・m/5,250rpm ■全長×全幅×全高:2,122×744×1,024mm ■シート高:793mm ■車両重量:198kg ■燃料タンク容量:12.5L ■変速機:6段リターン ■タイヤ(前・後):100/90-18・130/70-18 ■ブレーキ(前/後):φ320mmディスク ABS/φ240mmディスク ABS ■メーカー希望小売価格(消費税10%込み):795,000円

 

カフェレーサーのGT650に対し、こちらはスクランブラー
INT 650

 INAT 650は、GT650とダブルクレードルフレームや648ccの空冷パラツインエンジンなど基本を共有する兄弟車。カフェレーサーのGT650に対して、アップハンドルでステップ位置がGT650より前にあるスクランブラー。アップライトで背筋がおきて、足を前に置くポジション。他は燃料タンクとシートもデザインが違う。スペックはほぼ同じはずだけど、このポジションの違いもあり走りのフィーリングが違う。スクランブラーらしくアップマフラーが欲しくなる。最初にやりたくなるカスタマイズかもしれない。
 

●INT 650主要諸元
■エンジン種類:空冷4ストローク並列2気筒SOHC4バルブ ■総排気量:648cm3■最高出力:47bhp/7,150rpm ■最大トルク:52N・m/5,250rpm ■全長×全幅×全高:2,122×789×1,165mm ■シート高:804mm ■車両重量:202kg ■燃料タンク容量:13.7L ■変速機:6段リターン ■タイヤ(前・後):100/90-18・130/70-18 ■ブレーキ(前/後):φ320mmディスク ABS/φ240mmディスク ABS ■メーカー希望小売価格(消費税10%込み):776,000円

 

流行りのアドベンチャーもラインアップ
HIMALAYAN

 単気筒エンジンモデルにはアドベンチャーのヒマラヤ(英記では“HIMALAYAN”なので、“ヒマラヤン”と言われることがあるが、日本での正式呼称は“ヒマラヤ”)。でもClassic 500とはエンジンは別物の空冷4ストロークSOHC2バルブ。排気量は411ccで、最高出力(24.3bhp/6500rpm)と最大トルク(32Nm/4000-4500rpm)と数値はClassic 500より低いが、それが気になる不満にはならない。フロント21インチ、リア17インチの足周りでダートでもコントロールしやすい。フロントブレーキのディスクローターはφ300mm。パイプのガードでシュラウド風演出をしているのが興味深い。段付シートのライダー側の高さは800mmで、大径ホイールながらClassic 500より数値は5mm下回る。テールには小さいキャリアを装着。思うより効果的な働きをしてくれるスクリーンもアドベンチャーらしいところ。
 

●HIMALAYAN主要諸元
■エンジン種類:空冷4ストローク単気筒SOHC2バルブ ■総排気量:411cm3■最高出力:24.3bhp/6,500rpm ■最大トルク:32N・m/4000-4500rpm ■全長×全幅×全高:2,190×840×1,360mm ■シート高:800mm ■車両重量:199kg ■燃料タンク容量:15L ■変速機:5段リターン ■タイヤ(前・後):90/90-21・120/90-17 ■ブレーキ(前/後):φ300mmディスク ABS/φ240mmディスク ABS ■メーカー希望小売価格(消費税10%込み):625,000円

 



| 改めてロイヤルエンフィールドを知る、の記事はコチラ |

| ロイヤルエンフィールドのWEBサイトへ |





2021/03/08掲載