第121回 「春の菊の後」
驚いたとき「心臓が口から飛び出すかと思った」といいます。医学的に心臓が口から出る症例が確認されているかどうかは未確認ですが、この表現方法自体は珍しいもんではありません。「目玉が飛び出す」とか「舌が溶ける」などゾンビ化寸前の表現もそこかしこで目や耳にします。
それらに比べると「開いた口が塞がらない」は言い得て妙といった風情でしょうか。それはさておき、文春オンラインに連載している師匠のコラムの記念すべき100回目(2020年12月8日掲載 おめでとうございます!)を読んで、心臓が口から出そうになりました。師匠のコラムを読んだあと、何かの間違いで当コラムの前回を読ん方は、まさに開いた口が塞がらないことでしょう。
ちなみに師匠のコラムは約3年で100回。この駄コラム回数だけは120回と上回っていますが、青息吐息で10年近くかかっていますから質量共に、手も足もでません。もっとも師匠に対して手や足を出すような後ろ足で砂をかけてるようなことは……しているような気もしますが……
それはさておき、師匠のコラムより掲載が先でよかったと胸を撫で下ろしております。同じ春菊天を扱うにしても、立喰・ソの情報量はいうまでもなく、春菊天に対する分析力も桁違い。まさにかゆいところに手が届き、五臓六腑に染み渡り、春菊天へと食手が動く、名は体を表すすばらしい内容でした。さすがかのエッセイスト平松洋子様が師匠と仰ぐだけのことはあります。羊頭狗肉、へそで茶を沸かすような前回の掲載が、師匠のコラムの後だったらと思うと……背筋が凍ります。来年は粉骨砕身、背水の陣で望むつもりですが、のど元過ぎれば熱さを忘れて、虎の尾を踏んで泣きっ面に蜂……口は災いの元ですから、このへんにしておきます。
今年は大変な年になってしまいました。これほど多くの名店、老舗が幻立喰・ソになってしまうとは……悲しさよりも恐ろしさが先立ちお先真っ暗ですが、こんな厳しい状況下であっても、新たに開店していただける立喰・ソもありますから、まだまだ希望の光は消えていません。今年幻立喰・ソになってしまったみなさま、ほんとうにおつかれさまでした。ありがとうございました。
左からかまだ屋西11丁目店 2019年12月22日閉店(2015年9月27日撮影)、蕎麦にはち盛岡フェザン店 2020年1月5日閉店(2019年1月撮影)、三島駅そば処 2020年1月8日閉店(2012年1月撮影)。
左からあきば 2020年1月閉店(2014年3月撮影)、丸長 2020年1月31日閉店(2017年10月撮影)、一休 2020年4月4日閉店(2016年8月撮影)。
左から、びっくりうどん 2020年2月27日閉店(2012年7月撮影)、名代富士そば 八重洲口店 2020年2月25日閉店(2017年3月撮影)、信濃路 大森店 2020年2月28日閉店(2011年10月撮影)。
左からそば新 蒲田西口店 2020年3月16日閉店(2017年10月撮影)、手打ちうどんちじみ 2020年3月27日閉店(2017年6月撮影)、そば処長岡庵 2020年3月29日閉店(2013年12月撮影)。
左から三松(三河島)2020年4月24日閉店(2011年10月撮影)、そばスタンド天茶屋 2020年4月23日閉店(2016年3月撮影)、六文そば昌平橋店 2020年4月30日閉店(2016年3月撮影)。
左から青砥そば 2020年4月30日閉店(2011年12月撮影)、立ち食い蕎麦二五十赤坂店 2020年5月14日閉店(2018年6月撮影)、そば新御茶ノ水店 2020年5月20日閉店(20142年11月撮影)。
左から山田うどん蒲田店 2020年5月22日閉店(2015年4月撮影)、源太郎そば 春日店 2020年5月22日閉店、てっちゃん 2020年5月30日閉店(2013年10月撮影)。
左から井筒屋 在来線ホーム売店 2020年5月31日閉店(2008年3月撮影)、ターミナルうどん 2020年5月閉店(2013年10月撮影)、そば新 自由が丘店 2020年6月19日閉店(2003年5月撮影)。
左から宇ち乃 2020年6月30日閉店(2012年8月撮影)、えきそば 2020年6月閉店(2018年3月撮影)、明神そば 2020年7月20日閉店(2005年2月撮影)。
左から蕎麦たつ 2020年7月22日閉店(2016年10月撮影)、麦の城 2020年7月22日閉店(2011年10月撮影)、立ち食いそば曙 2020年7月23日閉店(2017年4月撮影)。
左から小諸そば 人形町店 2020年7月31日閉店(2018年8月22日)、なごみそば 2020年7月?閉店(2016年12月撮影)、丸政甲府駅南口店 2020年7月?閉店(2017年3月撮影)。
左から小粋そば 銀座4丁目店 2020年7月閉店(2018年5月撮影)、小諸そば 暖簾分け店 2020年8月7日閉店(2015年11月27日撮影)、小諸そば東京駅前店 2020年8月31日閉店(2019年4月撮影)。
左から名代富士そば伊勢佐木モール店 2020年8月31日閉店(2016年9月撮影)、釧祥館 2020年夏頃?閉店、本家しぶそば 2020年9月13日閉店(2017年3月撮影)。
左から小諸そば 駿河台店 2020年9月19日(2017年2月撮影)、やなぎ庵 2020年9月27日閉店(2014年6月撮影)、六文そば 浜松町1丁目店 2020年9月19日閉店(2017年3月撮影)。
左から松本6番線そば店 2020年9月30日閉店(2007年2月撮影)、広林 2020年10月末閉店(2015年9月撮影)、みゆき堂 2020年11月15日閉店(2018年9月撮影)。
左からかき天 2020年11月23日閉店(2019年4月撮影)、後楽そば 2020年12月14日閉店(2018年3月撮影)、名代 富士そば 人形町店 2020年12月18日(2017年4月撮影)。
まさかつい先日移転したばかり(といってももう4年ですか)の後楽そばまで。最後に焼きそば皿を限定発売したようですが、すでに売り切れでした。また会える日を期待しつつ、来年は普通の生活に戻れますように。
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