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レース・イベント



インターナショナルGSトロフィー 世界各国で出場に向けた予選が行われ、選ばれしGSライダーがリアルなアドベンチャーライド体験を共有する。2年に1度行われているこのイベントは今回で7回目を迎えた。その舞台は南半球の美しい国、ニュージーランド。選ばれし23チーム、40の国と地域から集ったGS乗り達。運営サイドも合わせると140台にも及ぶF850GSが2600㎞のルートを走る。日本代表3名の選手とともに、GSトロフィーの8日間に同行取材をした。
これはその見聞録である。パート1はスタートまでのレポートだ。
■レポート:松井 勉  ■写真:BMW Motorrad  ■協力:BMW JAPAN https://www.bmw-motorrad.jp

 インターナショナルGSトロフィー。BMWモトラッドが仕掛けるこのイベントは、いわば自社製品、GSモデルの一大プロモーションであり、今やアドベンチャーツーリングを愛するライダーにとっても垂涎のイベントになっている。参加条件は、BMWのGSオーナーであること。オン、オフの長い移動に耐える体力やライディングスキル、そして国際イベントとして大切なコミュニケーション能力、さらにどんな場面でもくじけず、参加するお互いやルールを当たり前のように尊重できる基礎人間力も必要になる。

 参加を表明した国々で行われるクオリファイを勝ち抜いた各国3名の代表が集い、ともに旅をしながら、日々移動とその中で行われるゲームに打ち込む、というものだ。イベントはレースではない。しかし、日々のゲームでポイントを争うコンペティションではある。

INTERNATIONAL GS TROPHY 2020 NZ

 インターナショナルGSトロフィー(以下GSトロフィー)が始まったのは2008年のこと。以降、2年に一度のペースで開催され、これまで6回が開催されてきた。その歴史をたどると、2008年、イタリア〜チュニジア間を移動してサハラ砂漠を走る。2010年。南アフリカで壮大な大地を巡る。2012年、南米パタゴニア、アンデス山脈を越えるルートを舞台にアルゼンチン、チリを巡る。2014年、北米カナダの大自然を走る。2016年は東南アジア、タイを舞台に走る。2018年、モンゴルの草原、砂漠を巡る。そして7回目となる2020年、その舞台に選ばれたのはニュージーランドだった。

 GSトロフィーへの参加国は毎回増え、今回は23チーム、40の国と地域から参加者、関係者が集まった。先述したようにプロモーションでありながらバイクが持つ根源的な冒険性を織り交ぜた旅をする魅力と、ライダーを主役に据えGSが脇を固める筋書きを横糸に編んだイベントは、一朝一夕にはまねできない。もはやモーターカルチャーとして根を生やしているといっていい。
 GSはアドベンチャーバイクセグメントを牽引し続けてきたBMWの自負と誇りが混紡されている、と言ったら褒めすぎだろうか。兎に角、GS発売40年目(だけじゃなく販売と進化が継続し続けているのがスゴイ!)の今年、その歴史も織り交ぜた仕立てになっているのだ。

INTERNATIONAL GS TROPHY 2020 NZ
BMWモトラッドの社長、ステファン・シャラー自らインターナショナルGSトロフィーのスタート地点を訪れ、そして参加者に引き渡すためのバイクパーキングに貼られた規制線にはさみを入れる。そう、テープカットだ。セレモニーのために訪れたのではない。シャラー社長は最終日まで選手と同じF850GSを走らせ、トロフィーに参加した。
INTERNATIONAL GS TROPHY 2020 NZ
夕方に見えるが、このときでNZは午後8時ごろ。世界各地から集まったGSライダー達は、明日のスタートがもう待ちきれない。

ようこそ!ニュージーランドへ。

 そして2020年2月。7回目の舞台に選ばれたのはニュージーランド。日本のおよそ3/4の国土面積に、人口は500万人程。2020年1月の推計では東京都の人口が1400万人に迫るというから、それと比較したら相当に少ない。その人口密度ときたら、1平方キロあたり平均で18.2名というのが昨年のデータだ。
 それもこの国に美しい自然が豊富にある秘密なのかもしれない。とにかくGSトロフィーの舞台に選ばれた、ということは、アドベンチャーライドをするフィールドが待っているということだ。

F850GS
F850GS

F850GS
一台ごとに参加するライダーの名前や国旗がラッピングの中に施された世界に1台のF850GS。純正オプションをメインにつくられたもの。アドベンチャーバイクとアドベンチャーツーリングに造詣が深いBMWならでは。ブレーキ、クラッチのレバーは、あえて純正品を短くカットし、転倒時にダメージを受けにくい改造が施されていた。

 参加者達は2月7日空路オークランドに到着した。南北の島で構成されるニュージーランド。人口が多いのは面積の小さな北島のほうで、その中でも最大の都市なのがオークランドだ。空港で荷物を引き取り、そこからバスで4時間ほど移動してGSトロフィーのスタートベースとなるオカタイナ湖畔のキャンプ場へとやってきた。

セットアップ
ハンドルバーの角度、レバーの位置など細かなセットアップも出発前日に行われた。工具を持ったメカニックがグループを回り、手際よく作業を進めてゆく。この写真は、スタート初日に行動を共にするイタリアチームとともに撮影したもの。向かって左端に立つのはルートガイドもするマーシャル。インド人のシャナバスだ。
日本代表
待ちに待った時。自分に与えられたバイクに跨がり、ご機嫌の日本代表。左から君島真一、寺尾義明、上田 直の3名。

 参加者達は他国のメンバーとの挨拶もそこそこに、支給されたテントをキャンプエリアに設営をする。芝生の空間は瞬く間に国際村へと姿をかえた。最終日までただの一度もホテル泊まりはなく、一貫してキャンプ生活が続くGSトロフィーが始まるのだ。
 翌8日はGSトロフィーのブリーフィングが行われた。そこでは心構えから走行上の注意点などガイダンス的なものから始まり、主催側から供給されるセナのヘッドセットをヘルメットに装着するワークショップ、ネックブレースのサイズ合わせなども行われる。同時に、2月の段階で感染拡大が懸念された新型コロナウイルスの感染時の特徴など、帯同するドクターから直接情報が伝達される。咳や倦怠感、熱の症状があったらとにかく相談して欲しい、と。

ネックブレース
参加者全員に支給されたネックブレース。リアッタ社の製品。リアッタブレースの名でお馴染み。2000年代半ば、ダカールラリーなどで優勝経験のあるトップライダーがレース中、事故で帰らぬ人になるケースが続いた。そのことを受け、KTMとBMWが共同で研究開発費を出資し、世に出たというヒストリーを持つ。最終的にGSトロフィーステッカーを受け取れるのは参加者がフィッティングを済ませてからだ。
ハカ
マオリ族の伝統、ハカも目の前で堪能することができた。このあとは参加者も交え、皆でマオリのダンス、ハカを習うことに。スタート前夜、最高に盛り上がった瞬間だった。

 その後、ランチをはさみ、バイクの引き渡しが行われた。ライディングモードの変更方法や、ライディングモードに付帯するABS、ASCなど設定変更の方法など、メーター周りからアクセスする方法などもガイダンスされる。

 そして夕方、マオリが演じる伝統の舞を見て、エントラントはいよいよ最高潮に。
 その後、キャンプサイトに隣接するテーブルエリアでディナーを楽しみ、いよいよ明日5時の起床、7時の出発に向け、静かな夜を迎えるのだった。(パート2に続く)

スタート地点
手前のゲートがスタート地点。スタート前日、まずは自分たちのバイクを点検することに。写真奥にある緑色のテントが参加者に支給されたラブ社のもの。同仕様のものが林立するので、参加者には国旗型のタグも支給され、国際テント村内で自分の寝床を見失うことはなかった。

パート2へ]

2020/05/11掲載