ホンダ学園は、Hondaの創業者本田宗一郎氏が、「チャレンジ精神に溢れ、人に愛され信頼される技術者の育成」を目的にして創立した自動車大学校です。1976年に『ホンダ・インターナショナル・テクニカル・スクール(現 ホンダ テクニカル カレッジ 関東)』が埼玉県ふじみの市に開校しました。初代校長は、本田宗一郎氏です。学校法人ホンダ学園は、1981年には大阪府大阪狭山市に関西校(現 ホンダ テクニカル カレッジ 関西)が開校し2校となり、これまで約22,000名が卒業して二輪、四輪関連の企業をはじめ、さまざまな分野で活躍しています。
そして創立50周年を記念したチャレンジとして、『創50 Cubチャレンジ』のプロジェクトが昨年の夏にスタートしました。そのCubチャレンジの概要と、現在進行形のレストアについて紹介します。
- ■取材・文:高山正之 ■撮影:松川 忍
- ■協力:学校法人ホンダ学園 ホンダ テクニカル カレッジ 関東
■Cubチャレンジで目指すもの
企画のねらいは、学生たちが主体的にレストアしたスーパーカブで日本中を走破して成長の機会とすること。そして、ホンダ学園の技術力と精神力をこのプロジェクトで発揮しながら、ホンダ学園のこれからの姿を広く知ってもらうことです。
そのために、関東校と関西校それぞれで不動車のスーパーカブをレストアし、長距離走行ができる状態に仕上げることに取り組んでいるのです。
初代スーパーカブ4台をレストア中
関東校、関西校でレストアするスーパーカブは初代モデルのC100が3台、C105(55cc)1台の合計4台です。下の写真は、2025年8月の関東校で撮影されたもので2台ともに不動車です。見かけはまあまあですが、すべて分解すると大変な状態であることが分かりました。ここからプロジェクトメンバーの試行錯誤と格闘が始まりました。
レストアするスーパーカブには、RebornとVintageの2タイプがあります。Rebornは、完全に修繕して工場出荷状態を再現したもの。Vintageは、錆や退色などをある程度残して使用感(やれ感)を表現したものです。どちらもこだわりを持ってレストアに取り組まなければなりません。
1月下旬、ホンダ テクニカル カレッジ 関東で8名の学生たちにレストアの状態を聞きました。
―Cubチャレンジに参画したきっかけは。
「ちょっと話にくいのですが、私はバイクにあまり興味がありませんでした。でも周りの人たちの影響もあり、このプロジェクトに入ることでバイクをもっと知って走ってみたいと思いました。今はどんどん興味がわいています。これから塗装ブースに入って前の失敗を取り返すところです」
―レストアの難しさとは。
「レストアは初めての体験なので、先生や整備資料を頼りに取り組んでいます。新品の純正部品はまったくありませんから、使える部品はとても大事にしています。サスペンションは、リビルト品を取り寄せたのですが、実際の寸法と違うため取りつけられるように部品を自作することになりました。外観も大切ですが、実際に長距離を走らせるためには、ブレーキとか足周りも大事ですから妥協はできない世界です」
「一般的にレストアというと、1人でやることが多いと思います。または、ショップにすべて任せる方法があります。我々のプロジェクトは10人以上で取り組んでいるのですが、レストアの達人はいません。分担作業にしていますが、毎日参加できない時もあるので、進捗状況の伝達とか、次に何をやるのかを共有するのが難しいです。リモートではできませんから」
―C100のエンジンを分解して新たに発見したことはありますか。
「最新のカブと比べて、基本的な構造は変わっていないところが驚きです。自動遠心クラッチの構造は、分解して何度も動きを確認したので理解できました。今も使われていることを思うと、設計した人は凄いと思います」
「点火方式のCDIは知っていましたが、ポイント点火を調整したりするのは初めての経験です。原始的なメカニズムですが、基本原理を理解できたのは良かった。C100のエンジンは、単気筒エンジンの完成形だと思います」
― 先輩から後輩に伝えることは。
「自分は4年生なので3月に卒業します。レストアの基本は、元々あるものを活かすことだと思っています。ネジ1本も今では作ることができない貴重なものもあります。そういった基本的なことを伝えていけるよう気を付けています。当初の計画では、12月末に完成予定でしたがだいぶ遅れています。自分が卒業するまでには完成した姿を見たいです」
―スポークホイールの調整はこれからの仕事にも役立ちますか。
「横ブレと縦ブレ両方を調整するのは難しいですし、根気がいる作業です。今ではスポークホイールのバイクはオフロードマシンくらいになりましたが、ショックを和らげる仕組みが良くわかります。なぜこのような構造になっているのか、基本を知ることがこれからの仕事に役立つと思います」
― 電装系のレストアについて教えてください。
「C100のハーネスは、断線している可能性がありましたので、すべて新作にしました。配線すべての長さを測って、現在販売している汎用性のあるコードを購入しました。ギボシ端子を取り付けたり、ハンダ付けなども行い、2台分のハーネスが完成しました。これで安心して走行できるはずです。出来上がりには満足しています」
―塗装も自前なのですか。
「このRebornのフレームは、錆落としから始まって、下塗りを経てマルエムブルーの純正色を塗装しました。学園内に塗装ブースがあるのですが、均等に塗装するのはとても難しくて、塗装が垂れてしまってやり直しをしたこともあります。乾く前に何かの跡がついたりすることもあって、手ごわい作業です」
Cubチャレンジは9月まで続きます
プロジェクトに参画している学生は、学業が優先ですから作業は放課後に限られます。午後4時過ぎから始まって夜8時までおよぶこともあるそうです。中には、整備士の国家試験を目前に控えている人もいました。各々、ホンダ学園で技術を習得して実現したい目標を持ちながら、プロジェクトに参画しているのです。
根気と神経を使う作業が多いのですが、ものづくりの大切さ、そしてチームワークで創りあげていく過程をとても楽しんでいる姿が印象的でした。
4年生が卒業する3月には、颯爽とテストランしている姿を見たいと思います。Cubチャレンジは、4月下旬ころに日本走破の旅がスタートして、9月にはゴールする予定です。
本田宗一郎氏が開発総責任者として世に出したスーパーカブC100を、ホンダ学園の学生がレストアして全国を駆け回るのは間近に迫っています。これからも、機会ある毎にCubチャレンジについて紹介したいと思います。
