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レース・イベント





■開催日・開催地:10月13日(日) 決勝 モビリティリゾートもてぎ オーバルコース
■文・写真:高山正之 ■協力:Honda

 この大会は、1981年2月に燃費に優れたエコノパワーエンジンを搭載したスーパーカブ50が発売されたのを機に、このモデルのPR活動も兼ねて同年6月に第1回大会を鈴鹿サーキットで開催したのが始まりです。
 1滴のガソリンも無駄にしないという環境保全を目的に、創意工夫を凝らしたマシンで競う“科学のモータースポーツ”とも言われてきました。エンジンは、ホンダの4ストローク50ccエンジンをベースとしています。
 今年は大きな変化点がありました。これまでのガソリン使用に加えて、カーボンニュートラル燃料(以下CN燃料)を使用するクラスが新設されたのです。CN燃料は、既存のエンジンで使用できますが、揮発性が低い特性のため難しいセッティングが必要になるとのことです。果たして、CN燃料元年と言えるエコマイレッジチャレンジの各クラスの成績はいかに。

#2024EcoMileage
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 快晴の下、開会式が行われました。ステージの横には、昨年の中学生クラス、高校生クラスで優勝した学校の車両が展示されました。今年は、さらに進化しているのでしょう。走行コースは、平坦で広大なオーバルコースです。クラスによって、7周または3周を平均速度25km/h以上で完走し燃費を競います。
 では、この大会のルーツでもあるスーパーカブ50が多く出場した”二輪車クラス”から紹介いたします。

#2024EcoMileage
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CN二輪車クラスは、昨年に続き「Little Cubs」が優勝。燃費は251.488km/L。燃料を変更しても、このクラスでは常にトップクラスを維持しています。

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CN二輪車クラスの2位は、「Super Cub’s+水戸藩」。246.090km/L。優勝チームとの消費燃料の差は、わずかに0.6ccでした。

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ハイオクガソリンを使用する二輪車クラス。「静岡工科自動車大学校 二輪チーム」は42回の参加を誇る伝統のチーム。最多参加賞があれば受賞間違いなしです。207.855km/Lの記録で4位を獲得。
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今年もめでたく出場を果たした「がんばる99才」の菅原さん(左)とチームメンバー。98才で出場した昨年は、惜しくもタイムオーバーで順位の記録に残りませんでしたが、今年は見事に規定時間内にゴールして21位を獲得しました。来年はいよいよ100才での参加になります。今から楽しみです。

 そして最もフレッシュな”中学生クラス”は、あきる野市立東中学校Team-AがCNクラスで優勝。昨年優勝した車体とエンジンをベースに、CN燃料を使用し768.633km/Lの好記録を叩きだしました。
 優勝チームメンバーの報道取材会がありましたので、その様子をご紹介します。
「今年の2月にCN燃料を試しました。寒い時でしたからエンストするとなかなか始動できない。圧縮比を上げて点火タイミングを変えるなど試行錯誤しました。私たちのマシンはキャブレターを使っています。キャブレターの構造を知ってもらい、空燃比の基礎知識やセッティング技術を学ぶことが出来るからです。良いマシンに仕上げるためには、練習できる場所も重要です。以前は、校舎内の10メートル程度の廊下でテストしていました。その後、サマーランドさんの駐車場をお借りして練習できる環境が整いました。さまざまな支援をしてくださる地元の方々には感謝しています。現在27名の部員がいます。この大会では、部員たちが発想したアイデアを実際に試すことが出来るのがいいですね」池田さん(マネージャー)
「新しい事に挑戦できることがいいです。そしてエコマイレッジ大会はCN燃料が中心になると思い活動してきました。僕はクルマが好きで、将来はレースにも出たいと思っています。マシンづくりは難しい事が沢山ありますが、それも面白いと思っています」角田さん(メカニック)
「私は、小学生の時に東中学校に燃費競技のクラブがあることを知りました。入学する前から入部を決めていました。CN燃料は分からないことばかりで大変でした。走り方も変えなければなりませんでした」北村さん(ドライバー)

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あきる野市立東中学校Team-Aのマシンと同校メンバー(3チームが出場) 。
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あきる野市立東中学校Team-A。左から、角田さん、北村さん、池田さん。

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CNクラス 中学生クラスのスタートシーン。あきる野市立東中学校Team-B。スタートフラッグは、大会会長の加藤稔さん(本田技研工業 執行役)が担当。
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創意工夫とアイデアが駆使された車両に贈られるモノづくり賞の中学生クラスは長野県から参加した2チームが受賞しました。#11「松本市立筑摩野中学校科学技術部C」 #13「清水中学featuring社中P」

 最も台数が多いのが”高校生クラス”です。今年はCNクラスに17台、ハイオククラスに68台、合計85台のエントリーがありました。

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CNクラス最初のスタートは、千葉県立下総高等学校自動車部A。流麗な車体が目を引きます。1845.600km/Lの記録で見事優勝しました。そして、ものづくり賞を受賞して2冠に輝きました。

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フルカバードの車体やオープンエアの車体など、さまざまな工夫を凝らしたマシンが見られます。
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東京都市大学塩尻高校の車体には、2011年大会から現在までの参加ステッカーが一堂に。メンバーの話によると、車体は毎年修正を加えながら使い続けているとのことでした。

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高校生クラスは台数が多いので、コース上では静かなバトルが繰り広げられていました。

 大学・短大・高専・専門学生クラスは、CNクラスに10台、ハイオククラスに23台がエントリーしました。

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ハイオククラスは、長野高専Reginettaが1,753.044km/Lの記録で優勝。
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日本のチームでは、最も遠い所からの参加です。CNクラスに出場した鹿児島高専MOMOチーム。537.883km/Lの記録で5位でした。

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ものづくり賞を受賞したMONTY(長野県)。記録は149.394km/Lで、ハイオククラスの25位でしたが、ユニークな車体が評価されました。
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大会唯一の「デザイン賞」に輝いたのは、東京電機大学理工学部自動車部Bでした。

 毎年、最高記録を狙うスペシャリストのクラスともいえる「一般クラス」には、CNクラス15台、ハイオククラスには17台がエントリーしました。

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CNクラスの激戦を制したのは、チームファイアボール。30回の出場を誇る名門チームです。CNクラスで最も優れた燃費を記録したチームに与えられる”最優秀賞 本田宗一郎杯”を受賞しました。記録は、2,516.072km/Lでした。
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ハイオククラスは、名門と言われる水曜クラブが優勝。ハイオククラスで最も優れた燃費を記録したチームに与えられる”最優秀賞 本田宗一郎杯”を受賞しました。記録は、3,010.105km/Lでした。

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水曜クラブのマシン。とてもコンパクトな車体でカウル表面はとてもきれい。

 CN燃料を使った一般クラスを代表して、team truthのメンバーに取材する機会がありましたので、紹介いたします。このチームは、昨年の大会でCN燃料のエキジビションに出場した、本田技研工業の社員チームです。
「私の仕事は、自動車の燃費性能を評価する内容です。CN燃料の特性は熟知していますから、少し濃いめのセッティングをしています。ハイオクに比べて燃費は少し劣り、パワー感も少し低下する傾向です」石手さん(写真左から3番目)
「私の仕事は、CN燃料の製造にかかわる内容です。Hondaが燃料をつくるわけではありませんが、将来の自動車に合った燃料を企画していくのも重要になっていくと思います。マシンの操縦については、それほど違いがあるとは思っていません。パワー感はハイオクと違わない印象ですね」隅さん(写真左から2番目)

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左から2番目がドライバーの隅さん、3番目がマネージャーの石手さん。

 この大会は、他にもニューチャレンジクラス(このクラスのみ、50cc以上150cc以下のHonda製4ストロークエンジンを使用)と、二人乗りクラスがあります。各クラスの詳細な成績表は、Hondaのホームページで見られます。ぜひご覧ください。

 では、CN燃料元年となったこのイベントで大会会長を務めた本田技研工業の執行役でもある加藤稔さんの共同取材の一端を紹介いたします。
「MotoGPをはじめ、全日本ロードレースやスーパーGTでもCN燃料が規定されています。エコマイレッジもCN燃料クラスを設定したのは当然の流れでした。参加者の皆さんは、常に創意工夫とアイデアで車両づくりをしていますから、CN燃料を使っても好記録を出しています。
 少し前の統計ですが、世界の主要国で保有されている二輪車は約4億台と言われています。四輪車は約15億台です。Hondaは、世界で最も多くの二輪車を生産している企業ですから、その責任において、さらに燃費向上の技術を磨くとか、バイオ燃料に対応したモデル、そしてバッテリー二輪の開発が急務です。二輪車は、バッテリーを搭載できるスペースが限られていますから、バッテリー二輪が普及するには、バッテリーの革新的な進化が欠かせません。従って、現在はあらゆる可能性を探っていかなければならないのです。
 来年のエコマイレッジ大会では、電動クラスを新たにつくる計画です。電費を競うレギュレーションをどのようにしていくのかを、これから詰めていきます。チャレンジしたいと思っていただけるようなクラスにしていきたいですね」

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大会会長を務めた本田技研工業執行役・加藤稔さん。

 1981年にスタートしたこの燃費競技大会は、環境の変化に合わせながら創意工夫とアイデアを実践できる世代を超えたチャレンジの場として、今後も継続していくことでしょう。
 そして、参加できなくても見るだけでも楽しく、時代の変化を敏感に感じられるイベントだと思います。見学したことが無い方が多いと思いますが、ぜひとも来年は、見る楽しみを見つけてください。
 最後に燃費競技会場ならではの風景を紹介いたします。
(文・写真:高山正之)

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左がハイオクガソリン、右がCN燃料です。
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走行後に消費燃料を計測します。

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ピットサインを出すメンバーは真剣そのもの。
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パドックでは間近にマシンを見られます。

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Honda F1 60周年記念展示。
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MotoGPマシンRC213VとCN燃料。

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記念写真コーナーにて。宮崎県から二輪車クラスに出場したチーム「Phoenix」。また来年、モビリティリゾートもてぎで会いましょう。


2024/10/22掲載