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試乗・解説

アップデートした旅力ともうひとつ! ハヤブサともS1000GTとも違うぞコレ SUZUKI GSX-S1000GX
■試乗・文:中村浩史 ■撮影:森 浩輔 ■協力:https://www1.suzuki.co.jp/motor/ ■ウエア協力:アライヘルメット https://www.arai.co.jp/jpn/top.html、クシタニ https://www.kushitani.co.jp/




『電脳化を果たしたGSX-S1000GX 』( https://mr-bike.jp/mb/archives/45288?from=mr-bike )で紹介したスズキの新ツーリングバイクGSX-S1000GX。
GX=グランド・クロスオーバー、という意味合いで生まれたスズキの「トップオブ旅バイク」。
GSX-S1000GTとは違うの? ハヤブサとは違うの?
Vストロームとも違うの? そしてGSX-R1000Rとは違うの?
これ、上の4台を足して4で割ったバイクなんです!

 

グランド・クロスオーバーってなんだ?

 スズキがこのバイクに名付けた「GX」というネーミングは、グランド・クロスオーバーを指すカテゴリーなのだそう。スーパースポーツでもメガスポーツでも、ツーリングバイクでもアドベンチャーでもない新種。この、ヨーロッパで人気上昇中のグランド・クロスオーバーとは、スーパースポーツ+メガスポーツ+ツーリングバイク+アドベンチャーのハイブリッドだというのが、いちばんイメージに近いんだと思います。
「端的に言うとスーパースポーツの高い動力性能があって、ストロークの長いサスペンション、アップライトで快適なライディングポジションを持つモデル。いま1000ccクラスのアドベンチャーやスポーツツーリングのカテゴリーが20万台くらいの市場規模で、その中でクロスオーバーが3万台ほど。特にヨーロッパで人気が定着してきています」とは、スズキ二輪事業本部の野尻哲治チーフエンジニア。
 このカテゴリーには、スズキはまず2015年にGSX-S1000シリーズを発表。これは、GSX-R1000系のエンジンを使用したストリート&ツーリング向けモデルで、ハーフカウルのS1000と、フルカウルのS1000Fをラインアップしていました。21年にはマイナーチェンジを果たし、S1000は思い切ったスタイリング変更、そしてS1000FにあたるツーリングバージョンをS1000GTとしてリニューアル。このGTが、かなりツーリング向けに振ったキャラクターだったため、果たしてS1000GXはどう違うのかな、というのが最大の興味だったのです。
 

 
 スズキが言うクロスオーバーの定義でいえば、S1000GTと比べると、ハンドルグリップ位置が高く近く、カウルマウント高さやスクリーン高さもGXの方が高い。さらに電子制御などの装備が充実しているのが大きな差です。
 そして、いちばんのトピックが電子制御サスペンション。普通に走り出すとまったく普通、電子制御が云々ということを気づかせない。逆に言うと、それがよくできた電子制御の介入の仕方です。その意味で、制御が介入した瞬間にメーターに表示されるサインがなければ、なにに助けてもらったかが分からないほど、自然なフィーリングで走れる電子制御なのです。
 

 
 走り出すと、まずはエンジンのパワフルさを再確認します。GSX-R1000譲りのハイパワーは、最高出力150PS、それも3000rpmくらいまでに最大トルクの70%ほどを発揮するから、ラフにスロットルを開けると、グンと体が持っていかれます。このあたり、GSX-S1000GTの方がトルクの出方がおだやかだったように感じましたね。エンジン、吸排気系は同じ2車なので、ECUのセッティングなどが微妙に違うのか、S1000GXのパワフルさが際立ちます。普段に乗っている時は、パワーモードを「B」に、ワインディングでちょっとキツ目に走る時には「A」にモードチェンジして乗っていましたが、この変化もS1000GXの楽しみのひとつです。
 

 
 ハンドリングは、スーパースポーツをベースにストロークを大きく取った設定。これが、スズキ初の電子制御サスペンション=S.A.E.S.を使用しているから、結果どんなコンディションの路面を、どんなペースで走っても、まったく破綻がないのです。
 たとえばGSX-R1000Rで荒れた路面を通過する瞬間、またはGSX-S1000でペースが上がった瞬間、ちょっと「アッ」と気をつける瞬間があるんですが、それがない。その代わりにメーターのパワーモード表示の場所にパパパッとサインが表示されるのです。
 たとえば低いギアでラフにアクセルを開けた瞬間、当然ライダーはリアが沈んでフロントがフワッと軽くなる瞬間に対して身構えるのですが、メーターに「LF」ランプが表示されてオシマイ。これは「リフトリミッター」つまりアンチウィリーの電子制御です。
 さらにコーナリング最中にアクセルを大きめに開けてみると、表示枠右の「TC」ランプが点滅。これは「トラクションコントロール」つまりリアタイヤのスライドを防止する電子制御。LFとTCで、ビッグバイクにありがちな「コワい瞬間」を防いでくれています。
 S1000GTとS1000GXの違いは、たとえばワインディングでペースを上げた時に分かりやすいようで、ルートをつないでいってワインディングを走っていると、徐々にペースが上がって行くのがS1000GXの方、ペースが上がって行くと、おっとっと……と持て余し始めるのがS1000GTの方、というイメージ。もちろん、この日に同時に乗り換えて比較したわけではないので、S1000GXは電サスだもんな、これくらいのペースならOKだな……という思い込み効果もあるのかもしれません。ただその時、GSX-R1000Rで走るワインディングよりも、リラックスして走れるのは、視線が高い、このライディングポジションの差なのだと思います。
 

 
 S1000GTの得意エリアである高速ツーリングでも、S1000GXの「普通さ」を感じることができました。80km/h、100km/h、120km/hと高速道路でクルージングに入ると、不意に感じる路面のうねりがまったくわからないんです。いつも走るルート、ここでゆるやかで大きなうねりがあるはずで、前を走っているクルマもうわんうわんうわんとボディを波打たせているというのに、S1000GXでそれを感じることがない。
 それじゃぁ、とワインディング入り口にある「明らかに荒れた区間」に無造作に突っ込んでみると、ちょうどトラクションコントロールやリフトリミッターが効いた時のように出力が抑えられ、カタカタカタカタ、の増幅を抑えようとする。これがサスペンション制御を自動で切り替えるSRASの働き。これはスイッチOFFモードも試せるので、介入の具合がよくわかります。
 あまりにも介入が自然で「どんな路面でも普通に走れる」電子制御なため、SRASをOFFにして、トラクションコントロール介入が最小の「パワーモードA」でダートに入ってみると、やっぱりそこはハイグリップタイヤを履いた150PS、まっすぐ進むのも不可能で、細かな凹凸に車体がハネて、ちょっと恐怖を感じるほど。やはり僕らは、知らないうちに電子制御に助けられているのです。
 ストリートを抜けて高速道路に乗ると「あぁツーリングバイクってこういうのだよね、ハヤブサより身軽でフットワークが軽いなぁ」と思う。けれど、高速道路を降りてワインディング区間に入ると「あぁツーリングバイクよりフットワークが軽いし、重さを感じずにぐりんぐりんグリップするなぁ」と思うのがS1000GX。
 GSX-Rがいいかな、ハヤブサかな、いやS1000カタナもいいし、S1000GTもいいなぁ――というぜいたくな選択肢。このすべての上に位置するのがS1000GXなんだというわけです。
 

 

そしてS1000GXの本領を味わいに

 今回のテスト終盤に、S1000GXの真価を探るべく、1泊2日で福島ツーリングに出かけてきました。距離にして往復約500km。ほとんど高速道路を使っての、親しい友人に会いに出かけたツーリングです。
 編集部から少しだけ下道を走って高速道路、そのまま首都高→常磐自動車道を走る旅は、スピードを乗せてシフトアップ、トップギア6速に入れて巡航スピードに達したら、クルーズコントロールスイッチをセットするだけ。ハンドル右のクルーズコントロールスイッチをONにして巡航速度に達したら、ハンドル左の+/-の-ボタン側で決定するだけ。あとはスロットルを開け続けなくても、一定スピードでクルージングを楽しむことができます。
 この時思ったことは、高速道路の巡航でスロットルを開け「続ける」ことは、意外と力を使うものなのだ、ということ。100km/hを超えるスピードで、路面のうねりやギャップを踏みながら走り続けることは、無意識に右手に力が入り、それも疲れにつながるもの。
 その疲れがほぼなくなるのがクルーズコントロールの恩恵。スロットルを握る右手は軽く添えるだけでいいため、バイク本来の動きを妨げないことにもつながります。

 そして、このツーリングで気づいたことがもうひとつ。ご存知のように常磐自動車道は、東日本大震災の影響で、まだまだ路面のうねりやギャップがあるエリアが少なくないのですが、これがほぼ気にならないクルージング性能を味わうことができました。
 S1000GXに搭載されているS.I.R.S.(スズキ・インテリジェント・ライド・システム=スズキの電子制御システムの総称)のうちの電子制御サスペンションは、ごく簡単に言えば、ギャップを拾った瞬間に、伸び側/圧側の減衰力を調整するシステム。ギャップを感知する瞬間というのは1/1000mm単位のストロークセンサーで、1/1000秒単位でサスペンションを電子制御するもので、それを連続して調整することで、連続したギャップ、続く路面うねりに対応するものだ。
 実際に走っている最中に「お、いま電制御サスが効いてる」と実感することは難しいものですが、あれ?今ギャップ踏んだのにショックが伝わらない──と思うことの連続でした。
 高速道路を片道300kmほど走って、下道を数kmで宿泊のホテルへ。その日のルートは高速道路95%、一般道5%といった割合で、その実測燃費は19.7km/L。カタログデータのWMTCモード燃費(2輪専用実効燃費)である17.0km/Lを大きく更新していました!
 このテストで走った総走行距離670kmでは、一般道、高速道路、ワインディングすべて合わせての総合実測燃費は17.57km/L。GSX-S1000GXは、イッキに300km近くを走るツーリングで、体の疲労が素晴らしく少ないバイクでした!
(試乗・文:中村浩史、撮影:森 浩輔)
 

福島・南相馬の巨大コンセントモニュメントで。次は荷物満載やふたり乗りでのツーリングにでも乗りたいS1000GXでした。

 

ライダーの身長は178cm。

 

GSX-S1000系のエンジン/車体をベースに1000GX専用にリファインされたローリングシャーシ。シートレールには純正アクセサリーのパニアケース装着用のステーが追加されている。KATANA、GSX-S1000/GSX-S1000GTと兄弟モデルと言える。

 

旧GSX-R1000のエンジンをべースに、専用の味付けがされた水冷並列4気筒エンジン。GSX-S1000/1000GTやKATANAも同系列のパワーユニットで、このエンジンをべースにしたモデルは18万台も生産されているのだという。パワーモードはA/B/Cと選択可能で、アシスト&スリッパークラッチを採用。

 

φ310mmローターにブレンボ製対向4ピストンキャリパーをラジアルマウント。乗車時の右側フォークにストロークセンサーを、反対側にソレノイドバルブを装着し、左右それぞれに別々の役割を持たせるのがSFF=セパレート・ファンクション・フォーク。

 
 

右フォークに1/1000mm単位で測定できるストロークセンサーを、左フォークに即時に連続して伸/圧側の減衰力を調整するソレノイドバルブを内蔵。フォークトップにリード線が接続されているのが電子制御サスペンションの証だ。

 

マフラースペースを確保する左右非対称の湾曲スイングアームもGSX-Sシリーズ共通の装備。マフラーはショートタイプの4-2-1レイアウトで、集合部に消音と排出ガス浄化のキャタライザーを備え、排圧をコントロールして燃焼効率を上げるSET=スズキ・エキゾースト・チューニングを採用している。
リアサスペンションの油圧式プリロードアジャスターは電子制御され、プリロードをオート/ひとり乗り/タンデム/ひとり乗り+荷物と4モードにボタンで設定できる。写真の金色の筒がプリロード調整用モーターで、またがったまま設定を変えると1mm/sほどで最大10mm上下するのがお尻でわかる。

 

S1000GXのキャラクターを際立たせる縦2灯の六角形LEDヘッドランプ。上下両方とも点灯しているのはハイビーム時で、ヘッドライト左右には面発光のLEDポジションランプを装備。ヘッドライト、ウィンカー、ストップランプなど灯火類はすべてLEDを使用している。
フューエルタンクは容量19Lを確保。カタログデータではWMTC燃費が17km/Lとされているから、1タンク300km走行は確実。このあたりのレイアウトはS1000/1000GTとも共通で、今回のテストでは街乗りメイン=約15km/L、高速道路メイン=約18km/Lで、平均17.5km/Lあたりだった。

 

スクリーンはマウントボルト位置の差し替えで3段階に高さが変えられる。移動距離は最大50mmで高さは最大43mmの上下が可能。写真のいちばん低い位置でクルージングすると、ちょうどヘルメットの額部分より上にだけ走行風が当たる感じだった。

 

前後セパレートのシートはキー式でリアシートが外れるしくみ。カギ穴位置が適切で使いやすく、リアシート後方のリアキャリアは大きく掴みやすいグラブレールが装着されている。リアシートとキャリアの高さがほぼ同一で、大きな荷物も積載しやすい。ライダー用シートは純正アクセサリーでコンフォートシート(税込3800円)が用意され、15mm着座面が高くなるぶんクッション厚が増える。

 

 

リアシート裏に荷かけフック用フラップとヘルメットホルダー用ワイヤーロープが内蔵されているから、ワイヤーをシート裏のフックに留めて使用する。リアシート下にETC2.0車載器が標準装備され、アーレンキーでライダー用シートも取り外し可能だ。

 

6.5インチのフルカラーTFT液晶ディスプレイ。画面左はデジタルスピードとタコメーターで、右半分中央はギアポジション表示をセンターに、パワーモードのSDMS、トラクションコントロールとアクティブダンピングコントロールの状態、リアサス設定が表示される。その下は気温&水温、オド&ツイントリップ、瞬間&平均燃費などを表示する、まさにマルチインフォメーション。

 

あらかじめ、スマホに「SUZUKI My SPIN」アプリをダウンロードして、車体とブルートゥース連結しておけば、スマホの地図アプリ、電話やスケジュールアプリ、音楽再生ができる。さらに車体とライダー/タンデム用それぞれのインカムも連結できる。これでスマホをハンドル付近にマウントする必要がなくなる。バイクの振動でケータイが悪くなっちゃう、って言いますからね。メーター左にはUSBソケットも

 

ハンドルスイッチ右は上からキル&スタータースイッチ、ハザードスイッチ、クルーズコントロール用オン/オフスイッチ。左は十字キーとOK/リターンボタンに、ウィンカーの右にクルーズコントロールのスピード設定+/-スイッチが見える。OKボタンを押してパワーモード/トラクションコントロール/アクティブダンピング/リアサスプリロード調整に切り替えることができ、OKボタン長押しではスマホリンクモードなどの階層に入れる。
純正アクセサリーで樹脂製パニアケースが用意される。パニアケース左右セット(税込118800円)に、サイドケースブラケット(15400円)、アダプター(1540円)が必要。トップケースが用意されていないのは、左右パニアケースを装着、タンデムで長距離を旅したくなるモデルを演出しているのだろう。

 

●GSX-S1000GX 主要諸元
■エンジン種類:水冷4ストローク直列4気筒DOHC4バルブ ■総排気量:998cm3 ■ボア×ストローク:73.4×59.0mm ■圧縮比:12.2 ■最高出力:110kW(150PS)/11,000rpm ■最大トルク:105N・m(10.7kgf-m)/9,250rpm ■全長×全幅×全高:2,150×925×1,350mm ■軸距離:1,470mm ■シート高:830mm ■装備重量:232kg ■燃料タンク容量:19L ■変速機: 6段リターン ■タイヤ(前・後):120/70ZR17・190/50ZR17 ■ブレーキ(前/後):油圧式ダブルディスク(ABS)/油圧式シングルディスク(ABS) ■懸架方式(前・後):テレスコピック式・スイングアーム式 ■車体色:トリトンブルーメタリック、パールマットシャドウグリーン、グラススパークルブラック ■メーカー希望小売価格(消費税10%込み):1,991,000円

 



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2024/05/15掲載