末は荷台車か? レースカーか?
再生可能エネルギー、蓄電池、省エネ・節電技術、送配電機器、次世代 火力発電、環境先進技術、資源リサイクル技術など、さまざまな内容の展示が行われる「スマートエネルギーWeek」が東京ビッグサイトで開催された。我々におなじみの電動車両や燃料電池車などを製造する自動車関連事業者だけでなく、インフラ事業者から新しく特許を持つベンチャーまで実に広く次世代エネルギーに関する関連業者が集って行われる展示会である。
本田技研工業は、この「スマートエネルギーWeek」を構成する7つの展示会のひとつ、「第19回スマートエネルギーWeek【春】2023」に大きなブースを構え、着脱式可搬バッテリー「Honda Mobile Power Pack(モバイルパワーパック)」の活用事例を展示した。モバイルパワーパックは、ホンダが展開を始めた着脱式のバッテリー。すでに同社のe:ビジネスバイク・シリーズの「BENLY e:」、「GYRO e:」、「GYRO CANOPY e:」の3機種に採用されている。
また、それとは別に、このバッテリーのシェアリングサービスの提供とインフラ整備を目的に、カワサキ、スズキ、ヤマハ、それにエネオスを加えた5社共同で新会社「Gachaco(ガチャコ)」を2022年4月に設立し、このバッテリーの普及も進めている。
昨年の「スマートエネルギーWeek」でも、ホンダはモバイルパワーパックの展示を行っており、今回も同様の展示を行うこととなった(昨年の模様は→https://mr-bike.jp/mb/archives/28687)。
ホンダの「GYRO CANOPY e:」やバッテリー交換ステーションの「Honda Power Pack Exchanger e:」から、ホンダの商用軽バンN-VANをベースにこのモバイルパワーパックで動く電気自動車に仕立てた「MEV-VAN Concept」、電動パワーユニット「eGX」を搭載した電動レーシングカートのコンセプトモデルや電動耕うん機のコンセプトモデル、さらには、小型船舶向け電動推進機のコンセプトモデルといった具合にあらゆる領域にエンジンに変わるラインナップの展開を考えていることがわかる。
ホンダ社内のアイテムだけではない。昨年同様モバイルパワーパックを使用する各社の製品が登場し、よりバリエーション豊かな展示となった。コマツの「電動マイクロショベルPC05E-1プロトタイプモデル」、デンヨーの「スプリットライトLED投光機 PL-241SLB」、デンソーの「秋田版スマート農業モデル創出事業 大玉トマト収穫ロボットコンセプト」といった具合だ。
その中にいかにもコンセプトモデルといったふうに展示されていたのがこれ。一見すると、ホンダのF1創成期の葉巻型のマシンをオマージュしたものかなと思って近づいてみると、なんとそのボディには音叉マークが。
これはヤマハ発動機が持ち込んだ「YAMAHA MOTOR PLATFORM CONCEPT」である。ちょっと頭を整理したくなる展示だ。というのも、そのサイズ感がよくわからない、のだ。人を乗せるというには少し小さいイメージだ。だからといって巨大な乗り物というコンセプトのスケールモデルということでもなさそう、なのである。
現場で手渡されたリリースでは「1~2人乗りパーソナル低速モビリティの汎用プラットフォームコンセプト。このプラットフォームをベースに、多様な低速モビリティへの展開を想定」という。その展示スペースで流されていたコンセプトの紹介ビデオでは、荷台車両としてカルガモ走行で荷物の運搬を担うイメージ映像も出てきていた。
実際に話を聞いてみると、そのコンセプトというか、展開はまだまだ具体的に収まっているのではないという。小型低速EV領域での汎用プラットフォームの市場の実現性やビジネスの可能性を調査する目的での出品であるのだ。
具体的に車両を見ていくと、ユニットとしては、ステアリング機構を持つ前輪と、2基のインホイールモーターを後輪それぞれに配し、車両中央のフレーム内に、モバイルパワーパックを搭載する。バッテリーを横に寝かせて搭載しているが、これはフラットな荷台を作るというイメージでのもの。荷台車というイメージとは少し異なり、レーシングカーのようにも見えるが、ここでは敢えてフロントを伸ばしており、そのイメージを出しているという。
前輪のステアリング機構を持たせてあることから自動運転も視野に入っているよう。また、シャシー内でのユニットもゾーンで分けられており、モーター車以外にも、フレームとタイヤだけのモデルの展開もイメージしているという。荷物の運搬車両なら電車のような使い方も可能なのだろう。
荷台車として重量物を運搬することを考えればインホイールモーターではトルクの問題が出てくるかと思うが、それについても、インホイールモーターにこだわっているわけではなく、モーターをオンボードで使用することも可能という。レーシングカート風に仕上げるならバッテリーを立てたり斜めにしたりして、それでできたシャシー内のスペースにモーターを一基搭載するほうがよいだろうとも。
まだまだコンセプトのコンセプト。しかし、自動搬送機のようなものから、公共交通機関の最寄り駅から自宅までのラストワンマイルの移動のための乗用モデル、そして電動カートのようなファン・モビリティまで、さまざまな展開が考えられる。このモバイルパワーパックの今後の展開に期待したい。
(文・写真:青山義明)