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試乗

KTM 390 ADVENTURE 拡大された裾野。 390に見た大いなる可能性。
 KTMの十八番、アドベンチャーファミリーにコンパクト系モデルをベースにした390 ADVENTUREが加わった。インド生産の世界戦略車としては初のアドベンチャーモデルであり、エントリーレベルのライダーをキャッチアップするのが狙いだ。
 実際走ってみると、その層へのアピールする裾野の広さはもちろん、ライダー次第で相当楽しめことが確認できた。大排気量ばかりで全開を忘れているオトナにもオススメしたい深く意外性をもった逸材だったのだ。
 スペイン領のテネリフェ島(カナリア諸島の一つ)での試乗をお伝えします。
■試乗・文:松井 勉 ■撮影:KTM ■協力:KTM JAPAN http://www.ktm-japan.co.jp/

 

単気筒は初代以来。

 KTMにとってADVENTUREシリーズは、ストリートモデルの稼ぎ頭だといってもいい。日本国内に目を向けると、最も売れるストリートバイクは390 DUKEだと言うから、今回のニューカマー、390 ADVENTUREはその良いとこ取りだから好調な売れ行きになる予感がする。
 現在、KTMのアドベンチャーモデルをお復習いすると、1301cc、1050㏄のV型2気筒エンジン、799ccの並列2気筒エンジンを搭載した大排気量もしくはミドルクラスを軸にしている。KTMのADVENTUREと言えば、水冷OHC4バルブ単気筒LC4エンジン搭載の620 ADVENTUREからその歴史が始まり、Vツインの950 ADVENTUREに引き継がれた。当時のモデルは、ダカールラリーを走るレーサーと同根、同質のトラベルバイクという明確なキャラクターを立てていたから、その匂いが強く、大排気量2気筒が決め技だったのだ。しかし、その後、ラリーのレギュレーション変更もあり、現在は450㏄単気筒を上限としていることはご存じの通り。つまりADVENTUREとダカールに様式的な近似性が今はない。その分、KTMが築いた連勝記録やオフロードでのプレゼンスなど、アドベンチャーバイクへの期待値が相応に高いというルーツ的な部分に重きを置いている。
 そんなファミリーに加わった390 ADVENTUREはどんなバイクなのだろうか。
 

手堅いマシン作り。

 2020年モデルとして登場した390 ADVENTUREは、KTMの手慣れた手法で造られていた。フレームはスチールのトレリスフレームを採用。サブフレームは別体式だ。前後のサスペンションはWP製を使う。フロントに170mm。リアは177mmのストロークを持っている。ホイールサイズは前が19インチ、後輪が17インチでキャストホイールを履く。このあたりのスペックを見ると、オフ重視ではないことが想像される。
 装着されるタイヤはコンチネンタル製TKC70だ。スイングアームは専用設計で390 DUKEと比べると15mm長く、オフ用のブロックタイヤに履き替えてもアームと干渉しないようにという配慮だという。さすがだ。

 搭載されるエンジンは373.2cc、DOHC4バルブ水冷単気筒ユニットだ。89mmのボアと60mmのストローク。オイルパンをフラットにしたオフロードバイク用に設計されたような前後にも天地方向にもコンパクトなエンジンで最高出力は44PS/9000rpm、最大トルクは37N.m/7000rpmとなっている。

 この骨格に14.5Lを飲み込む燃料タンクを搭載し、ヘッドライト、メータパネル、フェアリングを一体化させてフレームマウントさせたフロント周りを合体させる。このあたりの意匠は、790 ADVENTUREと同一路線だ。オフロード走破性を意識して200mmのグランドクリアランスを確保。シート高は855mmとなっている。

 また、5インチサイズのTFTカラーモニターの採用や、コーナリングABS、モーターサイクルトラクションコントロール(以下MTC)も備えている。

高回転型の気難しさを感じさせない。
電子制御スロットルの頑張り。

 跨がってみると、身長的には855mmのシート高が気になるライダーもいるかもしれない。しかし満タンで172㎏という車重ながら、エンジン搭載位置が低く車体中心に寄せられているためか250クラスと同等な重量感で取りまわせる印象だ。

 エンジンを始動する。振動が少なくスムーズな回転フィーリングだ。実はこのKTMのスモール系エンジンの美点がここ。単気筒の魅力の一つでもあるドコドコ、ブルブルという鼓動感があるが、そちらのテイストを味わう方向とは異なり、高回転まできっちり回すことでパワーを得るタイプ。乗り手の快適性や、エンジンケースの強度や、車体の搭載強度などを考えても、振動低減は高回転まで回す高性能ユニットにとって軽量化の要だ。その点でこのエンジはこの段階で期待が高まる。

 発進のトルク感などは排気量なり。イージーに走り出す。そこに重たさなどは感じない。しかし、トルク感がアクセルに同調するのは4000rpm以上というイメージ。フライホイールマスもそれほど大きくないから、ある程度の回転維持は必要なタイプだ。

 ポジションはKTMらしく左右幅をあまり感じさせないハンドルバー、そして着座位置がハンドルバーから遠く感じないこともあり、上半身はアップライトな印象だ。それに合わせる下半身の収まりが秀逸で、足を乗せるステップ位置はやや後ろ目にも感じるのだが、実はステップの踏面が斜め前下がりになっており、足を乗せた段階でものすごくバイクをホールドがしやすいのだ。自然と加速時にバイクに自分の体重が載る印象なのだ。

 出発して間もなく、市街地でジワジワと進む渋滞に遭遇した。そのとき、エンジンは2速より積極的に1速を使って走りたくなる。400クラスの単気筒というとトルクの塊を想像するかもしれないが、そうではない。例えば1速4000rpmあたりまで回しても、250の並列ツインのようにスムーズにトルクが出るのでアクセルコントロールがとても楽だ。ギクシャクせずに楽に走ることができる。ギア比の低いオフ車とは違った個性だ。

 もちろん2速と3速を使ってトトトトと走ることもできる。電子制御スロットルは低い回転領域でもエンジンをガツガツさせない開け方で応じてくれる。反面、ショートストロークの単気筒を補うためか、4000rpmあたりから高めのギアでアクセル開度を大きく取ると、右手に対して電子制御スロットルが少しだけディレイ制御をするように感じる部分もあった。5000rpmを越えトルクバンドに乗ってくるとそれも綺麗に右手と同調しはじめるから限られた領域、限られた操作環境ではあるが、このあたりは素直にシフトダウンしてあげたほうが気持ち良く加速を得られると思った。

 1速と2速のギアリングがやや離れているのは確かだが、20km/h以上であれば、2速の守備範囲は広く、これはこれで扱いやすい。高速道路へと入った時、加速レーンで初めて全開にしてみたが、伸びがよく、この設定がドンピシャであることが解った。1万回転のレッドゾーンまで綺麗に回り、シフトアップしてもパワーの勢いが弱まらない。あっという間に追い越し車線の速度まで到達する。今回、オプションのクイックシフター+(プラス)というアップ、ダウンともにクラッチレバー操作なしで変速ができるアイテムが装着されていた。単気筒でクイックシフト体験は初だったが、加速、減速ともにマッチングしとてもよかった。特に、シフトダウン時、ダートでも舗装路でもバックトルクが大きくなる高回転多用時でも駆動が途切れる時間が短いので、単気筒こそ欲しい装備だと思った。

 さすがに大排気量バイクのように巡航速度からアクセルひとひねりで豪快に追い越し、とはいかない。むしろ、シフトダウンしてしっかり回しきる乗り方をした方がこのエンジンは実力を簡単に引き出せる。1万回転までキッチリ回りパワーがそこまで追従しているので無駄に回している感はゼロだ。

 小ぶりに見えるフェアリングだが、高速道路を120km/hで流していてもしっかりと胸回りまでの風圧をおさえてくれるから快適だ。サスペンションも良い仕事をするので、距離を稼ぐのに高速道路を使ってもライダーは快適に移動ができる。

ワインディングが楽しい!

 高速の出口を出た。80km/hから90km/hの速度で大きなS字カーブを進む。アクセルを一定の巡航状態からカーブの切り返しをすると意外と手応えがあり動きはマイルド。逆にアクセルを一瞬閉じるなどのリズムを取ると、動きに軽快さが加わる。がっちりした剛性バランスというより、柔軟な車体の造りなのだろう。

 切り返しの連続するワインディングに来た。先導も快適なペースで走り出す。2速から4速を駆使し加減速を交えて駆け抜ける。こんな場面で大きなS字で感じた車体の粘りのような感じはない。ごく軽いアンダーステア特性で、アクセルの開度でそれを調整しながら描いたラインを通れるのは楽しい。アドベンチャーバイクは舗装が得意であってほしい。これは個人的な尺度だが、舗装路を走るときはロードバイクのように楽しみたい。前後タイヤはコンチネンタルのTKC70。ここまで好印象だ。ブレーキは制動力も良くこのバイクの特性によく合っている。前後ともコントロールしやすいのが印象的だ。

さすがKTM。
ダートも得意ジャンル。

 今回の試乗テストには25㎞ほどのダート路が含まれていた。乾いて埃が立つ路面には時折ゴロゴロと拳ほどの石が転がり、山からの雨水を流すための溝状のギャップが道を横切る。ダートに入る前、MTCとABSをカットして走り始めた。

 上りのパートで砂利が深くトラクションを掛けにくい場所があった。わずかに S字に曲がりながらの上りだ。センタートレッドが接地面を稼ぐために連続的になっているTKC70。トレッドの両サイドはブロックが意外に深い、センタートレッドから想像する限り高いグリップは期待できそうにない。そんな場面でもしっかりとエンジンの特性を路面に伝える。尻は振ったが推進力が落ちることはなく、スイスイとのぼってゆく。スタンディングで走っても、ステップから車体に荷重が載る印象だ
 低いギアでアクセルを開けていっても、伸びる回転に対して急激なパワー、トルクの炸裂がない分、MTCをカットしていてもリアが空転して推進力が弱まるような印象がない。回り込むようなカーブを旋回中に、アクセル一つでオーバーステアに持ち込むような底力はない反面、いつでも安心して開けられるのも特徴だ。
 もちろん、クラッチを使って一気に駆動力を炸裂させればそうしたこともできるが、8000rpmから1万rpmあたりを常用して路面に後輪がシンクロしているような走りのほうがアベレージ速度が高く保て気持ちが良い。

 途中に現れるギャップは意外に深く、いったん減速してサスペンションを伸ばしてから進入する必要があった。それでも、エンジン下部をガツンとグランドヒットすることも無い。さすがKTM!
 正直、170mm+177mmというストローク、19+17インチのキャストホイールとタイヤなど、ダートで飛ばせば馬脚を現す、と思っていた自分の予測は見事外れた。それどころか、このほどよいパワー感のエンジンを全開で走らせることが楽しくて仕方が無い。大排気量アドベンチャーでダート路を走るのも醍醐味だが、このバイクで走るとピュアな対話が詰まったスポーツ感がたまらないのだ。

 ダート区間で一度もABSカットやMTCカットによる不安を覚えたことは無かったし、操作性などパッケージが優れていた証拠だろう。

 結論を言えば、全方位的に楽しいバイクだった。いや、このクラス、単気筒という組み合わせは盲点だった。どうして誰もしなかったんだろう。まさにベストなパッケージに思えてくる。全てにほどよいし、足りないところがない。
 かつて自身でも640 ADVENTURE、990 ADVENTUREと暮らした体験からすると、ロードのハンドリング、快適性には満足できたが、オフロードにいくと、パワフルで剛性のあるフレームの車体はもっといけ、と急かす。すぐにオフタイヤが欲しくなる。でもオフタイヤを履くと、今度はオフまでの移動区間やワインディングが楽しみ半減となる。
 何所を切り取って評価するかだが、390 ADVENTUREが持つ裾野の広さとピーク域の高さ、というよりピーク域の充実感の濃さ。ここが最大の魅力だ、と思った。
 急ぎ足でエンジンを回し倒したにもかかわらず、燃費は24~25km/lをマーク。日本の速度域だったら30km/lも難しくなさそうだ。遠くの林道を走ってまた戻る1デイのロングにも良き相棒になると思う。高次元にバランスがとれたバイクだった。
(試乗・文:松井 勉)
 

 

フロントフォークはWP製APEXフォークを採用。170mmのサスストロークと19インチの前輪がもたらすオンロードでの旋回性、オフロードでの安定性、走破性はさすが巧くバランスしていた。フロントブレーキはφ320mmのディスクプレートとラジアルマウントされた対向4ピストンキャリパーを組み合わせる。リア同様バイブレ製。
リアブレーキはφ230mmのディスクプレートとシングルピストンのフローティングキャリパーの組み合わせ。ブレンボプロデュースのバイブレ製だ。ホイールは細身スポークのキャストを装着する。

 

リアサスペンションユニットはWP製APEXモノショックをリンクレスにマウントする。177mmと長大なストロークではないが、ストロークの奥までしっかり安定感のある動きでリアの挙動を乱さなかった。

 

サイレンサーはオーバル形状の細身縦型のものを装着。オプションで用意されたアクラポビッチ製のスリップオンが装着された車両もあって乗り比べたが、シングルらしい歯切れ良さを求めるなら考えたいチョイスだ。

 

390 DUKEと同じ排気量、同スペックのエンジン。スムーズな伸びの良さが印象的で、遠慮無く高回転を多用できる。その点で並のツインエンジンよりも楽しい特性だとも言える。SR400の性格とは対極的にあるパワーユニットだ。
アドベンチャーバイクが持つ強い押し出しとオフロードバイクらしい軽快さを上手く合わせた390 ADVENTURE。LEDのヘッドライト、ウインカーなど時代性を示すアイテムを使いながら重さを持たせないデザインだ。

 

エンデューロマシン同様アルミ製ハンドルバーを装備する。減衰圧調整はフォークキャップ上部で変更ができるダイヤルを装備。圧側、伸び側、左右でそれぞれ異なる機能を分担する。
初めてのアドベンチャーバイクでダートを走る時、オフ車乗りからよく聞くのが「直近の路面が見えなくて恐い。」というもの。ごらんの通り、390 ADVENTUREはカウルとタンクが一体化したデザインではないので、メーター脇あたりからも視界がいいのが解る。

 

ハンドル左側のスイッチにある上下キー、SETキー、そしてリターンキーを使ってMTCの設定やコーナリングABSの設定を変更することができる。TFTモニターに各種設定画面を呼び出し、そして設定を行う時の選択、決定をこの4つのスイッチから行う。ナックルガードは走行風を効果的に弱めてくれた。

 

いわゆるシガー-ソケットサイズの12V電源アウトレットを備える。ハンドル周りでスマホを活用する場合など、ここにUSBをさせるプラブを挿入するだけで充電も可能に。
TFTカラーモニターは5インチサイズ。燃料、水温など見やすい配置。回転計中心の表示で、レッドライン近くになると回転計表示部分が点滅して視界の片隅に入り、シフトアップを促す。エンジンがトップエンドまで綺麗に回るので必須だと感じた。Trip 1 Trip Time1など縦に並ぶ表示は気持ち太字にしてもらうと一瞥で認識しやすいと感じた。

 

シートは前後セパレート。シート高そのものはライダーのシート下にエアクリーナーボックスが収まるため、これより大きく下げるのは難しそうだが、855mmという数値からすると高く感じるが、足着き感が悪くないので、ライダーシートは前後長もありダートライディング時に前後に動きやすいものだった。グラブバーも大きいものが装着されている。

 

Engine

排気量:373cm³
出力:32kW
トルク:37N・m
形式:水冷単気筒、4ストロークエンジン
ボア×ストローク:89mm×60mm
スターター:セルスターター
潤滑:ウェットサンプ
クラッチ:PASCアンチホッピングクラッチ、機械操作式
EMS:Bosch製 EMSライドバイワイヤー
CO2 emissions:78g/km
消費燃料:3.37リットル/100km

Chassis

フレームデザイン:スチール製トレリスフレーム、パウダーコート塗装
フロントサスペンション:WP APEX 43
リアサスペンション:WP APEX Monoshock
サスペンションストローク (フロント):170mm
サスペンションストローク (リア):177mm
フロントブレーキ:4ピストンラジアルマウント固定式キャリパー
リアブレーキ:1ピストンフローティングキャリパー
フロントブレーキディスク径:320mm
リアブレーキディスク径:230mm、
ABS:Bosch 9.1MP Two Channel-ABS (incl. Cornering-ABS and offroad mode)
キャスター角:63.5 °
最低地上高:200mm
シート高:855mm
燃料タンク容量 (約):14.5リットル
乾燥重量:158kg

 



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2020/04/03掲載