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2022年11月に開催されたEICMA/ミラノショーのカワサキブースに展示された2台のバイクがいま、川崎重工業グループの企業ミュージアム「カワサキワールド」に展示されている(2023年1月22日までの予定)。それがGPZ900RとNinja H2 Carbonだ。そう、2022年夏に公開され、世界中で大ヒットとなった映画『トップガンマーベリック』に登場した2台のカワサキ車だ。
■文:河野正士 ■撮影:西田 格 ■協力:カワサキモータースジャパン

 映画『トップガン マーベリック』は、1986年に公開された映画『トップガン』の続編。アメリカのエリート・パイロットチーム「トップガン」で、かつて史上最高のパイロットだったマーベリック(トム・クルーズ)が極秘ミッションに直面していた新世代トップガンのメンバーとともに、その危機に立ち向かうというストーリー。

 その映画『トップガン』で、マーベリックの愛車として登場したのがGPZ900Rだったことを覚えているバイクファンは多いだろう。そして映画『トップガン マーベリック』は、『トップガン』時からマーベリックが所有し続けているという設定で、ややくたびれたGPZ900Rが再び登場。また新世代トップガンのメンバーと出会う訓練所では、マーベリックがNinja H2 Carbonに乗って現れるなど、各時代のフラッグシップモデルとマーベリックがシンクロすることで、時代性とともに、アグレッシブなマーベリックのキャラクターを表現していた。

GPZ900RとNinja H2
2022年11月に開催されたEICMA/ミラノショーで展示されたGPZ900RとNinja H2 Carbon(写真:河野正士)。

 その2台のマシンは、なんの事前インフォメーションもないままEICMAのカワサキブースに展示された。映画会社との契約で、映画名を全面に打ち出すことができなかったためか、車両の後ろに滑走路をイメージさせる大型パネルと、そのなかに「PREPARE FOR TAKE-OFF/AS SEEN IN THIS SUMMER’S HIT MOVIE/ KAWASAKI(離陸準備/この夏にヒットした映画から/カワサキ)」という文字が刻まれていた。PREPARE FOR TAKE-OFFなんて書かれていたことから、一部メディアからは、新型GPZ900Rの予告ではないかと、噂がでたほどだ。EICMAの現場でそれを見た人間としては、新型ウンヌンというのは話題を提供したいメディアが造り上げたファンタジーではないか、と思っている。

GPZ900RとNinja H2
ガレージの奥にずっと眠っていたような、このヨレた雰囲気は、すべて塗装で表現されたもの。映画「トップガン」撮影時には、KAWASAKIやGPZ900Rのロゴなども使われておらず、したがって今回もロゴを取り払った状態で、マーベリックの愛車が再現されている。

 しかし、実際に映画で使われたという2台のバイクは非常に興味深かった。H2はいたるところに、実際に走行した痕跡が残されているし、古びたGPZ900Rは、塗装によって“古びた”雰囲気を造り上げていたのだ。

 このGPZ900Rは、ダメージデニムのように、完成後にヤスリで擦って使い込んだ雰囲気を造り上げているのではなく、塗装のテクニックによって、外装類の塗装がヤレてしまった感じや、一部の塗装表面が剥げている感じ、ステッカーの退色や錆を造り上げている。それは遠目で見ると、塗装とは気がつかないほどのクオリティだ。

GPZ900RとNinja H2
EICMAと同じような演出で展示されている。

「カワサキワールド」に展示されている2台のバイクを見て、その塗装のクオリティをチェックするのもヨシ、実際にスクリーンのなかに登場した車両を見て映画の世界に再度没入するもヨシ、さらには2台の車両に跨がったトム・クルーズに想いを馳せるもヨシ……たとえカワサキファンじゃなかったとしても、バイクシーンに大きな影響を与えたバイクを目の当たりにし、想像を膨らませるのも、楽しいハズ。期間中の来場を、是非にお薦めする。(文:河野正士)

<映画登場車両を期間限定展示>
展示車両:
・GPZ900R (映画登場車両、量産仕様車両)
・Ninja H2 CARBON (映画登場車両、量産仕様車両)
展示期間:2022年12月20日(火)~2023年1月22日(日)(予定)

<カワサキワールド概要>
兵庫県神戸市中央区波止場町2番2号
開館時間:10時~18時(入館は17時30分まで)
休館日:毎週月曜日(月曜日が祝日の場合は、翌日に休館)、年末年始(12月29日~1月3日)
TEL:078-327-5401
https://www.khi.co.jp/kawasakiworld/

GPZ900R
GPZ900R

GPZ900R
GPZ900R

GPZ900R
GPZ900R
GPZ900R

GPZ900R
GPZ900R
GPZ900R

GPZ900R
GPZ900R
GPZ900R

GPZ900R
GPZ900R
GPZ900R
GPZ900Rは、艶がなくなった外装の塗装表面、擦れて塗装が剥がれた外装のエッジ、各部の傷、ヤレたステッカー、ボディに積もった砂埃や油汚れなどなど、それらのすべてが塗装で表現されている。汚くなり過ぎず、でもヤレた感じを表現するのは本当に難しい。

Ninja H2

Ninja H2
Ninja H2
排気系が変更されているほか、ナンバープレートホルダーなどが取り払われているNinja H2 Carbon。走り込んだ痕跡があり、劇中で使用されたバイクではないかと想像する。ということは、GPZ900Rとともに、トム・クルーズが実際にライディングしたものと考えられる。

2022/12/22掲載