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試乗・解説

YAMAHA MT-03 若いファンが多いスモールYZF-R/MTシリーズ。 いま50歳代というボリュームゾーン どんどん若返らせて!
250ccスポーツモデルのなかで
安定した人気を持続しているスモールYZF-Rシリーズ
これ、数ある世界中のバイクの中で
若いオーナーの割合が多いモデルなのだと思う。
若いファンは、YZF-R/MTの何に惹かれているのか
そこにバイク界を盛り上げるヒントがあると思うのだ。
■試乗・文:中村浩史 ■撮影:森 浩輔 ■協力:YAMAHAhttps://www.yamaha-motor.co.jp/mc/






 いまのバイク乗りは、平均年齢帯が50歳代前半なんだそうだ。ちょうど私もその年齢帯の、1967年生まれ。バイクの免許をとれる16歳の時に83年、ちょうどスズキRG250Γがデビューした「レーサーレプリカ」スタート期で、それからバイク熱がちっとも冷めないままこの歳になっちゃった。そんな同輩が多いのだと思う。
 バイク乗りの平均年齢帯と、実際にバイクに乗っている層は違うんだろうけれど、私が20歳代前半のころ、きっとボリュームゾーンは20歳代前半、30になったら30、40になったら40と、つまり私の年代がずっとボリュームゾーンにい続けている。うーむ、良いことなのか悪いことなのか。
 

 
 そのボリュームゾーンに変化が起き始めている。そのキッカケとなったのが2008年にデビューしたカワサキNinja250Rで、そのライバルとして登場したホンダCBR250R/CB250R、スズキGSX250R/GIXXER250、そしてヤマハYZF-R25/MT-25が、少しずつ若い層を掘り起こしてくれている。
 250ccクラスの持つ経済性、とっつきやすさや乗りやすさや、さらにバイクの魅力がきちんと詰まったキャラクターが、若い層、新しいバイク乗りたちの心に、何かを訴えかけたのだろう。
 中でもヤマハのスモールYZF-Rシリーズ(YZF-R25/3&MT-25/03の4兄弟のことです)が若いファンの支持を集めている。街で見かけるスモールYZF-Rオーナーは若い層が多く、これは個人的な感想なんだけれど、SNSとの親和性も高いのが若いファンとスモールYZF-Rシリーズ。Twitterばかり見てると、スモールYZF-Rシリーズには若いファンしか乗っていないような錯覚も覚えてしまう。
 

 
 そのスモールYZF-Rシリーズ、もちろんみんな乗った。初期型もモデルチェンジされた現行モデルも、250ccも320ccも、みんな。そのうえで、私のお勧めはMT-03。もちろん、250ccよりも320ccの方がトルクに余裕があって乗る楽しみが大きいし、普段乗りならば私はノンカウルモデルが好き。だからMT-03をイチオシする。
 というのも、スモールYZF-Rシリーズの250ccと320ccは明確な違いがあって、トルクのある分、320ccがラクに走れるのはもちろん、250ccはパワーの盛り上がりに表情がある。回すと力が持ち上がってくる――その楽しさは、320ccよりも250ccの方が上。けれど私の乗り方は、あんまり回転を上げずにとんとんと高いギアに入れていくことが多いので、320ccの方がラクで楽しいのだ。

 さらにカウル付きとカウルなしも違いが大きくて、これはハンドリングに差が現われている。しっとり安定感のカウル付きRと、軽快なハンドリングのMT、これは250も320も同じキャラクター差だ。おそらく装着しているタイヤの差なのだろう。
 

 
 そのスモールYZF-Rシリーズのイチオシ、MT-03に乗った。モデルチェンジで倒立フォークが標準装備となり、ライディングポジションも変化。ハンドルの高さが旧モデルに比べて44mmアップし、コブシ半分くらいグリップ位置が体に近くなった。カウル付きR25/R3と比べると、上半身の前傾角度もかなり緩やか。モデルチェンジで、もっとストリートラン適性を高めたという感じだ。

 現行モデルは、倒立フォークの採用やタンクカバーの変更などで、出力特性に変化はない────はずなんだけれど、これは試乗車のコンディションなのか、エンジンの回転フィーリングが上質になって、振動もやや低下してスムーズになった感触。
 パワー特性は、やはり250ccよりも低回転からトルクがあって、高回転まで回しても250ccほどの盛り上がりは感じられない。けれど、私はそういうエンジン特性が好きだ。
 2500rpmあたりからトルクがあって、街中のスピードでは600~7000rpmも回せば十分。あえて高回転を回してみると、8500rpmあたりからのピークパワーが10000rpmあたりまで続く。320ccとはいえ42psもあって、軽量な車体をらくにスピードに乗せてくれる。
 

 
 ボディが250cc/320cc共用のためか、パッと見ではさしてパワフルさをさして感じさせないモデルだけれど、YZF-R3/MT-03は最高出力42psに車両重量169kgで、軽量ハイパワーなモデルということが分かる。

 倒立フォークが採用されたハンドリングは、従来モデルよりもしっかり感が増した印象。もちろん、重量も増えているんだけれど、倒立フォークモデルに感じるフロントフォークの突き上げも重さも感じることはなく、前輪の接地感が増したように思える。
 少しスピードを上げてみると、特にブレーキングでのしっかり感がありながら、接地感もある、特にビギナーにも安心できるハンドリングに仕上がっている。
 

ここに初のモデルチェンジを受けた現行モデルでは新たに倒立フォークを採用。写真は基本骨格も共通のYZF-R25のもの。
こちらも人気のマットライトグレー(正式にはマットライトグレーメタリック4)。マットグレー×ブラックのツートンにレッドのホイールが映える。

 
 スモールYZF-Rシリーズのオーナーに集中して数人、話をする機会があった。購入動機はひと目惚れ、カラーリング(特にブラックメタリックの人気が高いこと!)、乗ってみての感想は、初めてのバイクでもコワくない、って意見が多い、そんなバイク。
 いま、このシリーズ4モデルの中で迷っている人がいたら、コレという使用用途が定まっていないならば、私はMT-03を推したい。車検の有無は、2年間で5~6万円に収まるケースも多いし、しっかり車検のあるモデルを安心して長く乗りたい、という若いオーナーが多かったのも事実。
 そうそう、現行MTシリーズといえば、あのプレデター顔。私なんか、やっぱりオーソドックスな丸ヘッドライトなMT-25/03を見たいけれど、、若いファンの方は、あのプレデター顔に抵抗ないみたいでした。
 バイク乗りのボリュームゾーン、スモールYZF-Rシリーズでどんどん若返ってほしいな。
(試乗・文:中村浩史)
 

 

ライダーの身長は178cm。

 

R25/MT-25との違いは、R3/MT-03がラジアルタイヤを履いていること。これがハンドリングの違いにもつながっている。20年3月にモデルチェンジした現行モデルはインナーチューブ径Φ37mmの倒立フォークを採用。ABSは標準装備だ。
マスの集中化を図るショートマフラーは先代からのR/MTシリーズの特徴。スイングアームは左右非対称で、ロングアームとしてトラクション性能を向上させている。ステップ上のヒールプレートが穴開きなのが250、写真の320は穴なし。

 

アルミ鍛造ピストン、浸炭コンロッド、直押し式吸排気バルブを採用した水冷2気筒DOHCエンジン。YZF-R25/MT-25に比べると、やはり+70cc分は低回転トルクが厚く、高回転に至るまでフラットトルクなキャラクターだといえる。
タンクカバーを配し、従来モデルよりも左右幅を51mm幅広としたフューエルタンク。ニーグリップ性やスポーツラン時のひじのホールド性を高め、スリムな車体幅との対比でビッグバイクをイメージした形状としている。

 

シートは前後セパレートのスポーティなタイプで、これはR25/R3と共通。ヘルメットホルダーは2つまで使用でき、シートを外してシート裏のフックにひっかけて使うタイプ。こういった使い勝手の良さもR/MT人気の秘密だ。

 

現行モデルはご覧の異形ヘッドライトを採用。個性がありすぎて好みが分かれるけれど、本文中にある「若い」バイクファンには好意的に受け入れられているよう。センターはメインのLEDヘッドライトで、上に2眼のポジションを配置。

 

アナログ+デジタルだった先代から、現行モデルはデジタルディスプレイを採用。ギアポジション、時計や燃料計付きで、タコメーターはバーグラフ、スピードはデジタル表示。オド&ツイントリップ、燃費を表示するマルチメーターだ。
R25/MT-25はセパレート、MT-25/MT-03はセミアップハンドルを採用し、MTはグリップ位置がこぶし2つほど高く、視線が高く、ライディングポジションが快適なのもストリートライダーの支持を集めている。

 

●YAMAHA MT-03 主要諸元
■エンジン種類:水冷4ストローク直列2気筒DOHC4バルブ■総排気量(ボア× ストローク):320cm3(68.0× 44.1mm) ■最高出力:31kw(42PS)/10,750rpm ■最大トルク:29N・m(3.0 kgf・m)/9,000 rpm ■変速機:6段リターン ■全長× 全幅× 全高:2,090 × 755 × 1,070mm ■軸距離:1,380mm ■シート高:780mm ■キャスター/トレール:25°00′/95mm■タイヤ:前110/70R17M/C、後140/70R17M/C ■燃料タンク容量:14L ■車両重量:169kg ■車体色:マットライトグレーメタリック4、ディープパープリッシュブルーメタリックC、ブラックメタリック112 ■メーカー希望小売価格(消費税込み):654,500 円

 



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2021/02/17掲載