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EWC、優勝候補となるチームを率いて日本人監督3名が誕生

 二輪の世界耐久選手権(EWC)に「Team Kawasaki Webike Trickstar」が参戦を表明、監督は鶴田竜二が就任した。2021年のチャンピオン「Yoshimura SERT Motul」のチームディレクターは加藤陽平、昨年度に2度目のタイトルを獲得した「F.C.C. TSR Honda France」は藤井正和が率いる。優勝候補のチーム監督がすべて日本人となり、EWCの戦いの見どころが増えた。


Team Kawasaki Webike Trickstar

 「Team Webike SRC Kawasaki France」(SRCカワサキ)代表のジル・スタフラ監督が昨年引退を表明、2020年から同チームをサポートしてきたTRICKSTARの鶴田竜二が、その後を受け継ぎ「Team Kawasaki Webike Trickstar」としてEWCシリーズフル参戦する。

 ジル・スタフラ監督からチームを受け継いだ鶴田竜二が監督を務め、マシンは「Kawasaki Ninja ZX-10RR」を駆り、Team SRCが長年使用したゼッケンナンバー“11”で勝利を目指す。ライダーにはMotoGPの経験を持つランディ・ド・プニエを筆頭に渡辺一樹、クリストフ・ポンソンがレギュラーライダーとなった。


 SRCカワサキは、EWCで7度のタイトルを獲得する名門チーム。そこを率いたジル監督は名物監督として知られる重鎮、その監督の後を引き継ぐ鶴田監督は元カワサキワークスライダーとして活躍。その後、チームを率いて2013年ル・マン24時間耐久参戦9位完走し、2017年ボルドール24時間耐久で3位表彰台を獲得した。

 鶴田監督は「これまでKawasakiブランドを背負いEWCに参戦してきたTeam SRC監督ジル・スタフラ氏が2022年をもって引退する事となり、新たに2023年から私がそのチームを引き継ぐ事になりました。TRICKSTARレーシングが2013年ル・マン24時間耐久レースに世界一を目指し挑みはじめてから10年が経ちました。これまで栄光と挫折を繰り返す日々を送ってきましたが、振り返れば失敗の方が明らかに多かったと思います。ただその失敗を繰り返し 立ち上がる事で我々は強くなり成長してきていると感じています。今後も成長しもっともっと強くなり勝ち続けたいと願っております。この機会を与えて頂いた事に感謝すると共にEWCをはじめモータースポーツをより盛り上げていけるよう取り組んで参ります」と語った。


Yoshimura SERT Motul

 2021年には加藤陽平チームディレクター(TD)率いる「Yoshimura SERT Motul」がフランスの名門耐久チームSERTとコラボ、EWCに参戦してタイトルを獲得した。昨年はランキング2位となり、今季のV奪回を誓う。チームマネージャーのダミアン・ソルニエと共にスズキGSX-R1000Rを駆り、ヨシムラの伝統ナンバーである“12”をつけて戦う。ラインナップはグレッグ・ブラック、シルバン・ギュントーリの従来のライダーにエティエンヌ・マッソンが加わった。


 加藤TDは「ライダーキャプテンであるブラックは2023年もチームのまとめ役として、そして力強い走りを魅せてくれるライダーとして継続起用となりました。同じく継続のギュントーリは様々な経験からチームの屋台骨として期待しており、安定したパフォーマンスで貢献してくれるでしょう。そして新メンバーではありながらスタッフもライダーも慣れ親しんだマッソンを再びスズキチームへ迎え入れることができ、非常に嬉しく感じております。欧州の24時間レースに対し、異なったスキルが望まれる鈴鹿8耐には日本人ライダーの起用も検討しておりますが、この3名をシリーズの軸として、3つの24時間耐久レース全てにおいて勝利を目指して参ります」と語った。


F.C.C. TSR Honda France

 2022年は藤井正和監督の「F.C.C. TSR Honda France」が世界チャンピオンとなった。ホンダCBR1000RR-R(TSR-EWC耐久仕様 2023モデル)を駆り、ゼッケン1で戦う。今季の体制は、従来からのジョシュ・フック、マイク・ディ・メリオに加え、負傷したジーノ・リアに代わり2022年9月のボルドールに参戦したアラン・テシェを引き続き起用する。


 藤井監督は「2022年は目的をタイトル奪還と定め、あらゆる努力を重ねてきた。乗り越えなければならないものも多かったが、それだけに達成感は大きいものがある。2023年の戦略は変えないこと。2022年ボルドールの体制のまま変えずにチームを構成できた。先日2023モデルのシェイクダウンも行い、手応えとしても数字の上でも2022モデルを上回っている。ヨーロッパテストを行い、シーズンに突き進んでゆく。目標は連覇。2022シーズン同様、ル・マン、スパ、ボルドール、3つの24時間レースに集中して取り組み、再び皆さんに戴冠の報を伝えられるようにしたい。今季は初のタイトル連覇を狙い、耐久レースの第一人者としてしぶとく戦い、チャンスを見逃さずに結果につなげたいと考えている」と言う。


 今季、EWCに日本人監督が3名誕生したことになる。それも、優勝候補となるチームを率いての参戦だ。監督同士の火花散る戦いが見物になるだろう。

 また、ライダーへの注目度も高まる。渡辺一樹は、昨年はヨシムラライダーとして活躍、全日本、鈴鹿8耐、EWCスポット参戦していたが、今季は、電撃移籍でカワサキを駆る。

 渡辺の代わりヨシムラライダーとして全日本参戦するのは、鈴鹿レーシング所属だった亀井雄大。会社を辞め、プロライダーの道を選択した。こちらは、ホンダからスズキへの移籍だ。加藤TDも「鈴鹿8耐に関しては日本人ライダーの起用も」と語っており、亀井は全日本の活躍次第ではヨシムラライダーとして8耐参戦の可能性もある。

 鶴田監督は第4ライダーに日本人起用もほのめかしており、新たなライダーがEWC参戦の可能性をある。

 藤井監督は「変えないこと」が信条で、鈴鹿8耐も現状ライダーを優先する方針は変わることはないだろう。昨年の鈴鹿8耐のクラッシュで生死を彷徨い、世界中のファンを心配させたジーノは、奇跡の復活を見せリハビリ中、彼がまた、鈴鹿8耐を訪れてくれることを待ちわびるファンも多い。

 日本車のメーカーだけでなく、BMW、ドゥカティのチームへの注目も年々上がっている。日本人ライダーも渥美心、石塚健らが海外チームから参戦。スポット参戦で日本チームのTONE RT SYNCEDGE4413 BMW がボルドール24時間耐久に参戦を表明している。例年になく、EWCが大きな関心を集めるシーズンとなりそうだ。

(文:佐藤洋美)

EWCスケジュール
4月15日 フランス ル・マン24時間耐久
6月17日 ベルギー スパ24時間耐久
8月6日  日本 鈴鹿8時間耐久
9月16日 フランス ボルドール24時間耐久







2023/02/09掲載