国産400ccモデルを象徴するロング&ベストセラーと言えば、先日このコーナーでも紹介したホンダCB400 SUPER FOUR/SUPER BOL DO’R(https://mr-bike.jp/mb/archives/22951)。それは間違いではないけれど、実際の販売ランキングでは2018、19、20年と、3年連続でカワサキNinja400/Z400が首位をキープしています。あれ? ちょっと意外! そうだったんだね! っていうバイク乗りも少なくないでしょう。それくらい、Ninja400/Z400は過小評価されている!と思います。
現行Ninja400は、2018年にNinja250とともにフルモデルチェンジ。これが、ひょっとして史上初めてなんじゃないか? ってパッケージでの登場でした( http://www.mr-bike.jp/?p=138142 )。
それは、250/400と車体を共用化したこと。それだけならば珍しくないことなんだけれど、250の車体に400のエンジン積んじゃった! もちろん、そんな簡単なことではないんだろうけれど、基本骨格どころか、同じサイズの車体を、250と400が共用しています。
もちろん、これまでも「兄弟モデルで車体を共用」ってことはありました。カワサキで言えば、かつてのZ400FXやZ400GP、GPZ400Rなんかも、それぞれ海外仕様のZ550FX、Z550GP、GPZ600Rっていう兄貴分のモデルを持っていたけれど、そのほとんどは「大きい方の排気量の車体を共用する」ってのが当たり前だったんですね。
当時は、小さい方の車体を使うと車体剛性や強度に問題がある──って解釈だったように思います。それが、今回のNinja250/400では違っている。やっぱりコレって、スゴいこと! もちろん、自作改造車のように「250の車体に400のエンジンを積んで」なんて無理やりなわけじゃない。きちんとメーカー作の250/400兄弟車です。
今回試乗したのは、Ninja400の兄弟車であるノンカウルモデルZ400。同じくNinja250のノンカウルモデルであるZ250とも兄弟車であり、Ninja250/400の2モデル、Z250/400の2モデル、計4モデルが兄弟車ということ(Z250の試乗インプレッション記事も、近々更新します)。双子がふた組で4人──カワサキは、同じプラットフォームで4台のモデルを作り上げたことになります。これ、現代の工業製品に重要な、生産の効率化、スケールメリットを達成していますね。
そのZ400。乗るとびっくりするくらい小さく、軽い! 本当に間違えて250ccにまたがっちゃった?って思うくらい。事実、Z250と同じサイズで、車両重量は3kg重いだけ。これが、ライバルであるCB400SFと比較してみると、
CB400SFが、
全長×全幅×全高=2080×745×1080mm
ホイールベース=1410mm
車両重量=201kgなのに対し、
Z400は、
全長×全幅×全高=1990×710×1120mm
ホイールベース=1370mm
車両重量=167kg。短く、小さく、35kgも軽い!
250に乗っちゃった? って勘違いしたのはもうひとつ。発進しようとローギアにシフトしようとすると、クラッチがべらぼうに軽い! これは近年のカワサキスポーツモデルが多く採用しているアシスト&スリッパークラッチのおかげ。僕は通常の握力で、たとえ40年前の1100カタナに乗ったって「クラッチが重いな」って感じることはないんだけれど、「クラッチ軽っ」って感じるバイクはあります。Z400はそれくらい、あっけなく切れる。クラッチの重さで悩んでる女子や手の小さい人、お試しあれ。
発進トルクは、これはもう、当たり前のように250ccとは別物。クラッチミートと同時に、トン、と車体を前に押し出す力が強い。ドン、じゃないですね、適度にトン。レスポンスも鋭く、回転の上昇も軽いキャラクターです。
アイドリングすぐ上からトルクがあって、回転上昇が速い──これってすごく使いやすいエンジンの典型。そのまま高回転は10000rpmまで軽々と回り、まさに低回転から高回転まで、全域パワーのあるキャラクターです。えええ、400ccの2気筒ってこんなに元気だっけ、っていう印象です。同じ2気筒400ccのホンダCBR400Rよりも軽快でパワフルな感じで、CBRの方がもっと低回転でネバるかな、というフィーリングです。
低回転からシャープなレスポンスがあって、高回転まで軽々と回るZ400の2気筒ユニット。さらにトントントンとシフトアップして低回転をいじめてみても、トップ6速2000rpmくらいでギクシャクなく40km/hくらいで走り、そこからアクセルを開けて行っても、息継ぎなく加速してくれる。
こういうシーンで、トルクのないエンジンだったらややもたつきながら加速したり、スピードとアクセル開度が合っていないと、クラッチまわりがガシャガシャ鳴ったりするものだけれど、Z400はするするする、っと加速する。高回転の振動もなく、いやぁ2気筒エンジンをよくここまで煮詰めたなぁ、って感心する完成度なんです。これは、2気筒400ccの最高傑作なのかもしれませんね。
そのエンジンが搭載される車体周りは、上で説明したように250ccサイズ。同じタイミングでモデルチェンジしたNinja250/Z250と同じサイズで、車両重量だってZ250よりもわずか3kg重いだけ。3kgなんてなかなか体感できるものじゃありません。
さらに言うと、旧Ninja400Rに比べると、車両重量はなんと36kg減! これが、上で述べた「上級機種との車体共有化」との差で、旧Ninja400Rは、ER-6シリーズと車体を共有していたんです。その結果の36kg軽量化なんですね。600ccが250ccになった、って言っていいほどの軽量化です。
旧モデルから36kg軽量化というよりも、Z250とほぼ同じ車体で11PSアップ、という面が印象に残りました。低回転からトルクのあるエンジンが軽量な車体をぐいぐい進め、ハンドリングも良くキレる。少し頭をよぎった、「250ccの車体に400ccエンジン」による車体剛性の低さなんて心配する必要ナシ!
少しイジワルして負荷をかけたまま車体をバンクさせてみても、頼りない手応えなんかまるでなし。むしろステアリングヘッドとスイングアームピボットがしっかりして、タンクの下、エンジンマウントあたりがきれいにしなるようなフィーリング。同時にZ250に乗ったんだけれど、この時Z250で、重いとか、応答性が悪いなんて感じることはなかった(※注──Z250の試乗インプレッション記事は、近々更新予定です)。これぞ、排気量別の車体剛性チューニングなんだろうと思います。
高速道路に乗り入れると、軽量な車体のもうひとつのキャラクターが顔を出してくれます。それがクルージングでの安定性。前後タイヤがきちんと接地している感触が伝わってきて、120km/h巡航でピタリ、レーンチェンジでもふらつくことなく、安定性と俊敏性を両立しています。
トップ6速では80km/hで4800rpm、100km/hで6000rpm、120km/hで7000rpmあたり。エンジンは10000rpmまで軽々と回ろうとするので、120km/hでエンジンがうなっている印象もなし。ビキニカウルでやや整風されているとはいえ、120km/hくらいならば、風圧と戦う、なんて印象もなく、穏やかにクルージングできます。
この時のエンジンの回り方もスムーズなもので、4気筒とはまた違った無振動なスムーズさ。わずかにころころころころ、ってパルスを感じさせてクルージングすることができます。こうなると2気筒だとか4気筒だとか考えるの、意味ない感じですね。
ワインディングに持ち込んでも、やっぱり250ccサイズの車体が武器になります。とはいっても、闇雲に軽いわけではなく、しっかりと手応えを感じさせるハンドリング。小さいバイクがクルクル曲がる──そんなキャラクターのハンドリングです。
ただ、気になったことがひとつ。どんどんペースを上げていくと、フロントブレーキがちょっと足りない気がしました。通常の使用ではもちろん問題ナシなんですが、ペースを上げながらのコーナリングで、感覚よりもちょっとスピードが殺し切れないで、おっとっとってラインが大回りになってしまう感じ。Z400は、これも250と共通の片押し2ピストンキャリパー+シングルディスクを使用していて、これが一瞬の感覚のズレを感じさせるんだと思います。
かつてのヤマハRZ250はシングルディスクにRZ350はダブルディスク、カワサキではエリミネーター400の後期モデルはダブルディスク、250はシングルディスクって違いがあったように、Ninja250/Z250はシングルディスク+2ピストン、Ninja400/Z400はダブルディスク+4ピストンキャリパー、と差をつけるといいなぁ、と思いましたね。
400ccで「なんだ2気筒か」って、おじさん世代は言いがちです。ひょっとしたらNinja ZX-25Rの登場で、400ccにもまた4気筒でないかな、なんて待望論だって少なからずあります。けれど、たとえば4気筒のCB400SF/SBと比べても、Ninja400/Z400のパフォーマンスはなにひとつ引けを取りません。
2気筒400ccとしては、日本の歴史上ナンバー1なんだと、僕はそう思いました!
(試乗・文:中村浩史)
■エンジン型式:2BL-EX400G ■エンジン種類:水冷4ストローク並列2気筒DOHC4バルブ ■ボア× ストローク:70.0×51.8mm ■最高出力:35kW〔48ps〕/ 10,000rpm ■最大トルク:38N・m〔3.9kg-m〕/8,000rpm ■変速機:6段リターン ■全長× 全幅× 全高:1,990×800[710]×1,055[1,120]mm ■ホイールベース:1,370mm ■シート高:785mm ■タイヤ(前・後):110/70R17M/C・150/60R17M/C ■車両重量:166[167]㎏ ■ブレーキ(前・後):油圧式シングルディスク・油圧式シングルディスク ■燃料タンク容量:14L ■車体色:キャンディライムグリーン×メタリックフラットスパークブラック、メタリックフラットスパークブラック×メタリックスパークブラック[パールナイトシェードティール×メタリックスパークブラック、ライムグリーン×エボニー、メタリックスパークブラック] ■メーカー希望小売価格(消費税10% 込み):620,000 [715,000 / 726,000]円※[ ]はNinja400
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