ヤマハとホンダの猛追に、近年は苦戦?
市街地でもツーリング先でもよく見かけるので、相変わらず売れているのだなあ、と思っていたら、ニンジャ250が日本の軽二輪市場でダントツ人気だったのは’13年までで、以後はYZF-R25とCBR250RRの後塵を拝しているらしい。と言うことは、僕がよく見かけるニンジャの何割かは、’18年から小型二輪の王座に君臨している、400だったのか。
まあでも、基本設計の大半を共有する現行ニンジャ250/400は、開発・製造コストを巧みに抑制した兄弟車で、400は欧米でも好セールスを記録しているのだから、東南アジアがメインの250が日本で失速したことは、カワサキにとって大問題ではないのだろう。もっとも、今回の試乗を通して、僕自身はニンジャ250の魅力を再認識。今から10年ほど前に、250ccロードスポーツ市場を救った救世主の魅力を、改めて実感することになった。
本題に入る前に、ざっくり説明しておくと、排出ガス・騒音規制の強化を受け、’00年代後半の250ccロードスポーツ市場は消滅の危機に瀕していた。その窮地を救ったのが、コストダウンを念頭に置きつつも、当時の最新技術で設計された車体に、既存のGPZ~ZZRがベースの250cc並列2気筒を搭載するニンジャだったのだ。おそらく、’08年にニンジャが登場しなければ、以後の250cc市場が活気を取り戻すことはなかっただろう。
そんなニンジャ250は、’13年に大幅刷新を行った2代目、’18年にフルモデルチェンジを受けた3代目に進化したのだが、前述した通り、昨今の日本では後発のライバル勢に苦戦を強いられている。今回の試乗ではその理由を探ってみようと思ったものの……、残念ながら僕には、明確な理由はわからなかった。
ライバル勢とは一線を画するキャラクター
もっとも、’18年から発売が始まった現行ニンジャ250に対して、実は当初の僕は複雑な印象を抱いていたのである。’17年に登場したCBR-RRに対抗するため、本格的なスーパースポーツ路線にシフトしなかったことは、個人的には評価したい。でも400と基本設計の大半を共有するとなったら、車格が大きく、車重が重くなって、250独自の魅力が失われてしまうじゃないか……という感じで。
でも驚くことに、現行ニンジャ250/400は、2代目より、40mmも小さく、8/7kgも軽くなっていたのだ。それどころか、1370mmの軸間距離と、167/167kgの装備重量は、ライバル勢に負けず劣らずで(R25:1380mm・170kg CBR-RR:1390mm・167kg。数値はすべてABS仕様)、僕の心配は杞憂に終わった。
ただし、ワインディングロードやサーキットで、クイック&シャープなコーナリングが堪能できるR25やCBR-RRと比較すると、ニンジャのハンドリングは微妙に安定指向と言うべき印象だ。その特性をどう感じるかは人それぞれだが、僕自身はかなりの好感触。高揚感でわずかにライバル勢に及ばなくても、旋回性の要となるキャスター/トレールをライバル勢と同様の数値に設定し、H2の技術を転用したトレリスフレームとリアサスを採用したニンジャは、乗り手がその気になれば鋭い旋回を披露してくれるし、市街地走行やツーリングなどでは、微妙に安定指向のハンドリングが有効な武器になるのだから。
なお3代目ニンジャ250は、エンジン特性もなかなかいいところを突いている。最高出力/最大トルク発生回転数は、ライバル勢と同等の12500/10000rpmなのに、低中回転域でも露骨な力不足を感じないので、R25やCBR-RRのように、回してナンボ!という気持ちにならない。そのうえ、’15年型から採用されたアシスト&スリッパークラッチは、ツーリングでは疲労軽減、スポーツライディングではイージーなシフトダウンに大いに貢献してくれるので、ニンジャに乗っていると、心の中に大きな余裕が生まれるのである。
言ってみればニンジャ250は、ライバル勢とは方向性が異なる、フレンドリーなオールラウンダーなのだ。そんなニンジャ250にあえて異論を述べるとすれば、コーナー進入時に、時として前輪の接地感に不安を感じることを挙げたいけれど、その原因は400とは異なるバイアスタイヤのようだから、兄貴分と同様のラジアルタイヤを採用すれば、問題はあっさり解決しそうである。
最大の強敵は、基本設計を共有する兄貴分
ではどうして、近年のニンジャ250が、販売台数でライバル勢に及ばないのかと言うと……。MFJカップ/地方選手権のJP250で活躍していないから、という説があるものの、その背景にはMFJ公認のレースパーツが非常に少ないという事情があるようだし(逆に最も豊富なのはCBR-RR用)、そもそも一般的なライダーが、レースを意識して250ccを購入することは、現代ではほとんどいないと思う。となると、カワサキ好きが他の250ccに食指を伸ばした可能性が考えられるけれど、近年の同社が日本で販売している軽二輪、Z250、ヴェルシスX250/ツアラー、KLX230の3機種が、ニンジャの市場を奪っている気配はない。
いろいろ考えた結果、僕の頭に浮かんだのは、基本設計の大半を共有する兄貴分、ニンジャ400の姿だった。最高出力が37ps、前後タイヤがバイアス、価格が65万4500円のニンジャ250に対して、ニンジャ400は最高出力が48ps、前後タイヤがラジアルで、価格は72万6000円。車検の有無や税金の差異を考える必要はあるけれど、車両価格の差は意外に少ない、7万1500円しかないのである。
もちろん、この価格差をどう感じるかは各人各様だ。久しぶりにニンジャ250をじっくり堪能した現在の僕としては、価格差を抜きにしても、気軽に高回転域を使える250を推したいところだが、その一方で過去に試乗した400の低中速トルクの太さにも魅力を感じている。いずれにしてもニンジャ250/400の購入を考えている人は、できることなら、同条件で2台を試乗したほうがいいだろう。
なお試乗後に調べてみたところ、18~19年のニンジャ250/400の合計販売台数は、大ヒットと呼ばれているZ900RSを上回る、国内トップの数字を記録。ここまでの原稿ではニンジャ250に対して、失速、苦戦などという言葉を使ったけれど、カワサキとしては、まったくそう感じていないんじゃないだろうか。
(試乗・文:中村友彦)
全長×全幅×全高:1,990×710×1,125mm、ホールベース:1,370mm、最低地上高:145mm、シート高:795mm、車両重量:166kg、燃料消費率37.0km/L(国交省届出値 定地燃費値 60km/h 2名乗車時)、26.2km/L(WMTCモード値 クラス3-2 1名乗車時)、エンジン:水冷4ストローク直列2気筒DOHC4バルブ、総排気量:248cm3、最高出力27kW(37PS)/12,500rpm、23N・m(2.3kgf・m)/10,000rpm、燃料タンク容量:14L、タイヤサイズ:前110/70-17M/C 54H、後140/70-17M/C 66H 。メーカー希望小売価格:654,500円。
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