収納しよう、そうしよう。

前カゴやリアキャリアではなく、本格的な収納スペースがあればスクーターはもっと便利になるのではないか。単純かつ当たり前に思えるが、ボクスンが登場するまで、そんなスクーターはこの世に存在しなかった。

ボクスン(CQ50E 1985.4)

ボクスン(CQ50ES 1985.4)
●エンジン型式:空冷2ストローク単気筒●総排気量(内径×行程):49cc(40×39.2mm)●最高出力:5.8ps/7000rpm●最大トルク:0.61g-m/6000rpm●全長×全幅×全高:1640×630×960mm●軸距離:1115mm●乾燥重量:55kg●タイヤ前・後:2.75-10・3.00-10●発売当時価格:139,000円
ボクスン(CQ50ES 1985.4)

 自転車のように軽く安く扱いやすくからスタートしたスクーターは、1980年代に入ると街乗りの足として定着し、あっというまに広がった。

 需要が拡大すれば要求も拡大するという経済法則? に則り、スポーツスクーターや大柄で豪華な装備のスクーター、原付二種スクーター、小型軽量スクーター、女性向けスクーターなどスクーターのバリエーションは日進月歩の勢いで増えていった。

 そんな時代のニーズを先読みし、パッソル、ジョグとスクーターレボリューションを巻き起こしたヤマハが着目したのは、本格的な収納機能であった。

 当時のスクーターのリアキャリアは標準装備ではなくオプション扱い、もちろんコンビニフックなどというものもなく、高級車のみ小さなインナーポケットが着いている程度。

 今日では当たり前のシート下収納スペースは、ガソリンタンクやバッテリーの居場所であり、せいぜい書類入れと車載工具が入るスペースしかなかった。

 原付ヘルメットの着用義務化が決定的となったことも開発の大きな推進力となり、1985年4月1日、シート下に本格的な収納スペースを持つ初の原付スクーター「ボクスン」が登場した。

 Mサイズのフルフェイスが収納できる大容量のスペースは、シート下というよりシート後部に増設された形となったためリアがふくらんだ独特のスタイリングとなった。

 リアのアンバランスな印象を小さくするためと、センタースタンドを上げるため太く大きめのバーが装着された。プレスリリースには「テクノ感覚のハンドルスタンディング」と表記されているところに時代を感じる。

 エンジンはパワフルで定評のあるチャンプ50系の7ポートトルクインダクションエンジンをベースに5.8psにパワーアップし、電気式オートチョークも装着。寒い日の始動性が向上した。

 カタログコピーは「スクーターパッキングしましょう」で、イメージキャラクターにはビッグな体型ながら、意外とフットワークの軽いウガンダさんが起用された。

 今日、スクーターと言えば収納スペースがあって当たり前になっており、ボクスンの先見性は正しかったのだが、リアヘビーなスタイリングがイマイチだったようで、ボクスン自体はモデルチェンジどころかカラー変更されることもなく、一代限りで消えてしまった。


百花繚乱、原付スクーター黄金の時代・2

ミントカスタム(SH50ED 1986.4)

ミントカスタム(SH50ED 1986.4)
キュートの後継にあたる女性向けスクーター。カスタムはフロントトランク標準装備。2000年初頭まで販売された息の長いモデル。96,000円。

ミント(SH50 1986.6)

チャンプ(1984.4)
6月に追加されたキックのみのスタンダードモデル。セル付きのデラックス(SH50E 93,000円)は4月に先行発売された。83,000円

エクセル(CK50E 1986.5)

エクセル(CK50E 1986.5)
5.8psのハイパワーエンジンはボールベアリングとラバーの防振リンク式で懸架され、フロントはトレーリングアクスル式ボトムリンクサスやキー付きフロントトランク等の豪華スクーター。イメージキャラクターはあの平 忠彦さん。135,000円。

チャンプスペシャル(CJ50ES 1986.7)

チャンプ(CJ50EE 1984.5)
86モデルのチャンプ(CJ50E 122,000円)は5.8psにパワーアップ。スペシャルはガス封入式リアショック、バーエンドグリップ、専用メーターなどのスペシャル仕様。129,000円

チャンプスペシャル(CJ50ES 1986.7)

チャンプ80(CJ80E 1986.8)
7psの79ccエンジンはベルトドライブ強制空冷システムやセリアー二タイプフロントフォーク、95mm大径ドラムブレーキなどを専用装備。1人乗り専用。149,000円。

ミントスペシャル(SH50ES 1986.12)

ミントスペシャル(SH50ES 1986.12)
フロントトランク、セル付きのミントカスタムをスペシャルカラーとしたモデルがミントスペシャル。好評でカラーを変え末永く続いた。98,000円。

チャンプRS(CJ50RS 1987.4)

チャンプRS(CJ50RS 1987.4)
6.3psにパワーアップされたエンジン、新設計チャンバータイプマフラー、油圧式ディスクブレーキにWGPレーサーイメージの専用カラーでキメたスポーツスクーター。144,000円。

チャンプRS(CJ50RS 1987.4)

チャンプRS TEHC21(CQ50RS 1987.7)
チャンプRSをベースに、1986年の鈴鹿8耐で平 忠彦/クリスチャン・サロン組が8耐でライディングしたYZF750資生堂TEHC21イメージのカラーとした限定車。

CZ150R(CZ150R 1987.4)

CZ150R(CZ150R 1987.4)
快速スクータートレーシー125をベースに水冷2スト単気筒141ccクランクケースリードバルブエンジンを搭載したビジネス特快スクーター。310,000円。

シグナス125(XC125 1988.1)

シグナス125(XC125 1988.1)
4ストG2スクーターシグナス125が段付きシート、扁平チューブレスタイヤ、新フロントフォークカバーなどを新たに採用してマイナーチェンジ。249,000円。

チャンプCX(CX50 1988.3)

チャンプCX(CX50 1988.3)
スポーツスクーターチャンプ50をベースに、ボクスンの経験を生かしスタイリッシュにリアを延長してヘルメット収納スペースを増設。139,000円。

BW`S(CW50 1988.4)

BW`S(CW50 1988.4)
オフイメージのボディに、ビッグ&ワイドタイヤ、ロングストロークサスペンション、デュアルヘッドライトで雰囲気満点のプレイ・スクーター、149,000円。

キュート・ミント系概略史(1984-1996)

1984.6 キュート(CN50ED)登場。
1984.6 キュートカスタム(CN50EC)登場。フロントトランク付き。
1984.11 キュートカスタム(CN50EC)カラー追加。
1985.3 キュート(CN50ED)カラー変更。
1985.3 キュートカスタム(CN50EC)カラー変更。
1985.4 キュートカスタム(CN50EC)パステルカラー限定車。
1986.4 ミントデラックス(SH50E)登場。セル付き。
1986.4 ミントカスタム(SH50ED)登場。フロントトランク、セル付き。
1986.6 ミント(SH50)登場。スタンダードモデル。
1986.12 ミントスペシャルエディション(SH50ES)登場。カスタムベースのツートンカラー。
1988.3 ミント(SH50/ES)カラー変更。デラックスが廃止されミント、カスタム、スペシャルエディションに。
1988.3 ミントオリジナルセレクション(SH50ES)登場。フロントトランク付き。
1989.1 ミントスペシャルエディション(SH50ES)。カスタムベースのニューカラー。
1989.9 ミントスーパースペシャルエディション(SH50ES)。カスタムベースのニューカラー。
1991.7 ミント/スペシャル(SH50/ES)小変更。ミントとフロントトランク付きのスペシャルの2車種に。
1992.3 ミントスペシャルエディション(SH50ES)カラー追加。
1993.8 ミント/スペシャル(SH50/ES)メインスイッチ改良。
1994.9 ミント/スペシャル(SH50/ES)ヘッドライト等改良、昼間点灯。
1996.7 ブラックミント(SH50ES)2000台限定車。

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