「起きてる~? もうヒデ君家の前だよ~!」
はいはい、珍しく起きてますよ、あとは嫁の支度待ちっす。
……つ~か、朝8時で猛暑。もうしょ~がない、とか言ってる余裕もないほどに。
「はい、これ着てこれ被ってこれ装着してね~!」
……わ~い! 素敵な長袖ウェア着て、素敵なジェットヘルメット被って、素敵な皮のグローブ装着ですね!
まぁ、東名インターは“すぐですしね”。乗ってしまえば意外と涼しいに違いない。
……はは~ん。“すぐDEATH氏ね”でしたか。
あの……バイク乗りって確実にドMですよね、再確認。
しかし、暑さを除けばビックリするほど快適な乗り心地。高速でもしっかり安定、それでいて面白味がないという訳ではなくちゃんと“自分で操ってる感”があって楽しめるバイクですね。これならネイキッドでもロングツーリングできそう。
何度か水分補給をしながらのんびり走るも、意外とあっさり静岡IC。
出口付近で中尾さんと合流して、早速予定していた一軒目のおでん屋さんへ。
……と、ここで中尾さんがおかしなことを口走る。
「そこの看板にさ、“登呂遺跡”って書いてあるよ!」
ええ、書いてますね。
- 住宅街の中にある登呂遺跡……ん? 登呂遺跡の周りを住宅地にしたのでしょうか? と、ガイドのオジサンみたいに疑問符になっちゃったよ。で、登呂遺跡には囲いがない、入場料は無料。遺跡を突っ切る道(未舗装)は、近隣住民の生活道路でもあるのだ。
「まだ時間も早いことだし、ちょっと見ていこうよ」
遺跡をですか? いやぁ、面白いこと多分ないと思うんですが。
「絶対楽しいって! うん、近いし行こう行こう!」
竪穴式住居とか弥生人の生活とか稲作とかを楽しいと言いきれちゃう中尾さん。素敵すぎる。
「ほら、近いじゃん。あれじゃない? タテアナ」
住宅地を挟んだ駐車場らしきスペースに停めて歩くこと3分。
我々の眼前に現れたのは……数軒のタテアナシキジュウキョ。水田。照りつける日差し。
そして……次の瞬間、嫌な予感が。
そう、タテアナから弥生人らしき人が現れたのだ。
「こっち見てるよ!」
つ~か、完全に向かって来てるぢゃないですか! 身構える3人。あまり目を見ないようにしとこう。
「ようこそいらっしゃいました! 登呂遺跡です」
わわわ、喋った! ていうか、老眼鏡かけた60過ぎのおじさんなんだが。
「私、こちらでボランティアのガイドをしております、○○です」
はい、こんにちは。でも僕たちあまり時間ないのでサックリ見て帰ろうかと……。
「こちらへどうぞ」
……全然聞いちゃいないよ、弥生さん。そこから小一時間、弥生さんの独壇場@炎天下ですよ。
「登呂遺跡はですね、鹿の骨は見つかってるんですが、人骨は見つかっていないんです、どうしてでしょうねぇ?」
「この住居の柱は、杉の木を鋭利な鉄器、もしくは青銅器で削って作ったことは間違いないんですが、鉄器も青銅器も発掘されてないんですよ、どうしてなんでしょうか?」
……こちらが疑問に思うことをすべて疑問形で説明される感じが、3人の心を鷲掴みでしたけどね。
「あちらで是非、火おこしを体験してみてください」
と、おいらと嫁さんを見て、
「ね、若い人も」
中尾さんに視線を移して、
「そしてお父さんも、ね?」
……中尾さんが暴れそうになったのを初めて見たよ。
火をおこすまで帰らせてもらえない雰囲気の中、嫁さんがやってくれました、ナイス嫁。
やっとのことで弥生時代から解放された一行は、いよいよ本来の目的地へと向かう。
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