VTR帯下

ネガな部分を確実に潰して誰にもやさしい
健康優良児が誕生した

VTRインプレッション
  • 置き前73
  • 置き後73

 昨年春、VTRがエミッション対応のためにFI化された。デザインは見た通り前のイタリアンテイスト的なものから大きく変わったようで、見た目が変わらないフレームなどもあり人によってはあまり変わらないと感じるかも。

 開発を担当した方にお話を伺うと、新型のコンセプトはリアルスポーツだと言う。初心者からベテランまで楽しく操れる本物のオートバイにしたと。フレームの剛性を見直して、剛性としなやかさを両立させ、直進安定性と気持ちよく曲がれるハンドリングを手に入れたそうだ。

「腰下でコントロールできるカービングスキーのように」という表現を使っていたのが印象的だった。

 キャスター角など足廻りは基本的に変わっていない。

 さらにFIのセッティングとエアクリーナーの容量アップでパーシャル状態の特性を扱いやすくして、コーナー立ち上がりでのスロットルオンの時に初心者の人でも開けられる特性に。

ベテランの人ならリニアにパワーが繋がってより速く走れると言う。1速、2速で回るようなコーナーがあるサーキットだったらライバルよりタイムが良いと豪語していた。

 前後に動きやすいシート形状でポジションの自由度を上げ、新たに付けられたサイドカバーは適切なニーグリップが出来るよう考慮している。乗車した写真のモデルは身長170cmの僕。足つきはご覧の通りかなり良い。ハンドルグリップまで適度な距離がありポジションは窮屈ではない。

 開発前は直4エンジンのホーネットを残すという案も出たらしいが、ホンダはV型2気筒エンジンを選択した。成功しているニンジャの価格を考えればコストが上がる4気筒にしなかったのは当たり前かもしれない。

エンジン

基本的には先代VTRと同型の長い伝統を持った水冷2気筒V型DOHC4バルブエンジンだが、新たに装着されたフューエルインジェクションPGM-FIのセッティング大幅変更により、乗り味は変わった。

 

 性能は飛び抜けて良いが価格も飛び抜けて高いものというやり方では難しい。かと言って、安かろう悪かろうでは通用しない。開発陣もここにこだわったと言う。

 デザイン途中にはスーパースポーツのようにテールカウルを後ろに向かって跳ね上げたものもあったそうだが、こういう形状にしたのは、荷物を積むことも考えてのこと。

 見て判るとおりテールカウルには左右合わせて4本の立派な荷掛フックを装備された。後席の上面が平らになり格段に積みやすくなったシート形状で、荷物の積載も格段に使いやすい。

旧VTRはシートを外さないと使えなかったヘルメットホルダーだが、リアカウル下部に単独のタイプが装備されたので、積んだ荷物をもういちど下ろし、シートを外すという面倒もなくなった。

コストは下げられるだろうが、安易なシートを取りはずして引っかけるタイプにしなかったのもこだわりのひとつ。

 MFバッテリーを横にしてシート下へ収納したことで、それまでのバッテリー位置には小物入れが付くなど、なるほどコストばかりで使い勝手を疎かにしたわけではなさそうだ。

 実際に乗ってみればなるほど、よく考えて作り込まれている。これが最初に触れて乗った時に思ったこと。

 
    フロント

    ゴールドカラーのZ断面5本キャストホイール。フロントブレーキはφ296mmディスクブレーキに2ポッドキャリパー。基本構造は従来モデルから変更はない。

    リア

    リア周りZ断面5本キャストホイール、φ220mmディスクブレーキにシングルポッドキャリパーと、基本構造に変更はないが、スピードセンサーが追加された。



    メーター

    メーターは従来モデルと比べると、インジケーター類をセンター部分に移動し、タコメーター内下部に設置されていた水温計は廃止され、新たに液晶表示のトリップメーターと時計機能を追加している。

    シート下

    バッテリーを横に寝かせて配置したため、バッテリーボックス部分は小物入れになった。カッパくらいなら楽に入りそう。最近のモデルでは意外と略されがちなキー式のヘルメットホルダーもうれしい装備。


 シートは座るスペースを前側に拡大し、角をならして、元々良かった足つき性はさらに向上し、小柄な人でも大柄な人でも運転しやすいポジションがとれる。

 さらにブレーキの効きタッチ共に旧モデルよりかなりレベルが上がった。

 人によっては不満に感じた先代のネガティブな部分を、真面目に潰していったに違いない。

 インジェクションを採用した90度Vツインから出てくるスピードは当然驚くものではないが、下から必要充分なトルクで扱いやすく、そのまま1万回転まで回してもストレスを感じさせない。特にパーシャルからの開け始めではパワーがスムーズに繋がり、容易に開けていけてキモチイイ。

 車体の動きはとにかく軽い。ライダーが動きたいと思ったように操れ、バイクとの一体感を感じさせる。それでいてフラフラと不安定なそぶりを見せない。タイヤの接地感を掴みやすく、「ビギナーからベテランまで楽しくスポーツライディングが出来る」と言うホンダの主張がブラフではないということが良く判った。

 新VTRの機械的な出来栄えは高レベルだ。速さ遅さなんて関係なく、積極的にワインディングや街を走りたくなる元気がある。

  欲を言えば、必要なものを揃え余分がないさっぱり感もいいが、見た目的にもう少し趣味方向に振ったバージョンもあったら250がもっと面白くなるんだけどなぁ。(試乗・文 濱矢文夫)


    乗車姿勢前

    乗車姿勢右



    乗車姿勢後

    乗車姿勢左




    ●エンジン型式:水冷4ストロークV型2気筒DOHC4バルブ
    ●総排気量(内径×行程):249㎤(60×44.1mm)
    ●最高出力:22kw(30ps)/10500rpm
    ●最大トルク:22N・m(2.2kg-m/)8500rpm
    ●圧縮比:11.0●変速機:5速リターン
    ●全長×全幅×全高:2080×725×1055mm
    ●軸距離:1405mm●車両重量:161kg
    ●燃料タンク容量:12L
    ●タイヤ前・後:110/70-17 M/C 54H・140/70-17 M/C 66H
    ●価格:VTR B-STYLE 567,000円・VTR 567,000円

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