『W』が帰ってくる。あの名車、650W1~W3シリーズのイメージを取り入れて、1992年2月に発売された空冷4ストロークSOHC4バルブ並列2気筒を搭載する“ネオクラシック・スポーツ”W650。
弟分のW400とともに中高年層の熱い支持を受けて独自のユーザー層を形成したが、このビッグツインもご多分に漏れず、2008年9月の排出ガス規制強化には勝てず、残念ながら生産終了となっていたのはご存じの通り。
復活を望む多くのWフリークの前に登場したのは排気量こそ800にアップしたが、まぎれもなく「W」だ。
空冷4ストロークSOHC4バルブ並列2気筒エンジン、そしてクラシカルなダブルクレードルフレームと写真を見る限りは、W650のイメージのまま復活をはたしたと言えるだろう。一般的なチェーンによるカムの駆動ではなく、ハイポイドベベルギア+シャフトを介して作動させる独特の機構もそのままだ。
復活ではあるが、当然ながら完全にそのままってわけでもない。エンジンでは排気量をボアを72mmから77mmへアップ(ストロークは83mmで同一)し、シリンダーもブラック塗装からシルバーのアルミの地肌を生かしたものに。同時にリアハブ周りもブラック塗装からシルバーになった。ピストンはサイズアップながら軽量化することでW650と同等の重量におさえている。カムタイミングやバルブリフトはW650と同一。マフラーはW650ではテーパー形状のサイレンサーを採用していたが、W800ではストレート形状に変更することで性能向上につなげている。
そして何よりの変更点は、燃料供給装置を従来のキャプレターからフューエルインジェクションへと切り換えていること。年々厳しくなる一方の排出ガス規制や吸気周りの騒音規制をクリアするには、もうキャブレターの出番は回ってこないということなのだろう。スルットルボア径はφ34mm。コンパクトな12ホールのインジェクターの採用で軽量化、省スペース化も実現している。
クラシックイメージを醸し出すひとつのポイントでもあったキックスターターもついに廃止されてしまった。まあ、W650でも非常時でもない限りキックスターターで始動させる方はいなかっただろうから…。
ブラック塗装から変更されたのはエンジンと、リアハブ周りだけでなく、フロントフォークボトムケースも同様にアルミの地肌を生かしたものとなった。ヘッドライトマウントステーもクロームメッキ仕上げに。ブラックのリアサスカバーも廃止となった。
ハンドルバーはインチバーからφ22.2mmへと変更、タンクラインの変更、タンクエンブレムの変更、マフラーカバーの追加、リヤウインカーはテールランプマウントの位置にまとめられた。
このほかにもシートのステッチラインなど細かい部分での変更はあるが、とにかく「W」が「W」のイメージのままで復活してくれることを単純に喜びたい。「やってくれるじゃないカワサキさん」だ。
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