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さらなるパワーとコントロール性
完全新設計エンジン
エンジンは驚異的な最高出力と扱いやすさの両立を目指して造られた完全新設計。スロットルコントロール性の向上と、より長いスロットル全開時間を可能にするエンジンキャラクターを実現しています。
■エンジン
* リニアなパワーデリバリーにより、ピークパワーを瞬時に引き出すニューエンジン。
コーナリングでの理想的なエンジンの扱いやすさを実現するため、「コーナー進入時のスロットルオフ~コーナー中間付近からのスロットル開け始め~立ち上がりでの全開までの過度特性」に細心の注意を払い開発。
そのために、トルクの山と谷を取り除き、ピークパワーを高回転域へと移動、さらに、不必要な中間トルクを削ぎ落としました。従来モデルでレーサーが自信を持ってスロットルを開けることを難しくしていた、これらの要因を排除したことで、スロットルを開け易いエンジン特性としています。
* クランク、トランスミッション(インプット/アウトプット)シャフトの3軸レイアウトを刷新。インプットシャフトをクランク及びアウトプットシャフトの上方へと配置しています。クランク位置も従来モデルと比べ、アウトプットシャフトを基準にして約10度高い位置へ移動。この新しい3軸レイアウトにより、さらなるマスの集中化に加え、重心位置が高まったことで、より軽快なハンドリングを達成しています。
* ダミーヘッド付きシリンダーボア加工を採用。ダミーヘッドを装着した状態で加工することで、真円度と円筒度の精度向上を達成。その結果、低張力ピストンリングの使用が可能となり、メカニカルロスを低減しています。
* クランクシャフトから伸びるシリンダー軸線をボアセンターから2mm排気側にオフセット することで、ピストン側圧のメカニカルロスを低減。ピストン自体への負荷も減らすことで、軽量ピストンの使用を可能としています。
* 吸気側はバルブの大径化(30 mm → 31 mm )とともに、ポート径を拡大。 排気側はバルブには変更はありませんが(24.5 mm)、ポート形状を全面刷新しています。充填効率の向上やエンジンブレーキのかかり具合の最適化、リニアなパワー特性、スロットル開け始めのコントローラビリティの向上などに貢献しています。
* ハイリフトカムの採用により、バルブリフト増加とバルブオーバーラップの改善を実現。
吸気側: 9.7 mm(ZX1000F) → 10.3 mm
排気側: 8.5 mm(ZX1000F) → 9.1 mm
* この変更により理想的なエンジンブレーキも実現。リヤホイールのトラクション向上だけでなく、安定したシャーシによるコーナー進入時のスムーズなマシンコントロールも可能とします。このハイリフトカムの改良とシャーシの見直しにより、コーナー進入時のスピードも向上させ、スロットルの開閉によるシャーシコントロールも実現しています。
* ハイリフトカム化にともない、吸気タペットを大径化(26.5 mm → 29 mm)。
* 新しい軽量ピストンは、ショートスカート化(20 mm → 16.5 mm)された軽量ピストンを新採用。 ハイリフトカムに適合した、薄いオイルリング(1.5 mm → 1.2 mm)を使用。
* カムシャフトは素材にクロームモリブデン鋼を採用し、重量の増加を抑えることに貢献。 カムシャフトは滑らかな窒化処理が施し、カム部はハイパワーカムに必要な高荷重 バルブスプリングが使用可能な耐久性を確保するため、ラッピング処理を実施。 高回転化に対応させています。
* 高出力化に伴い、コネクティングロッドはロッド部と大端部をより強度に優れる形状へと変更。
* クランクシャフトの素材を高強度化したことにより、ピン部とジャーナルのフィレット部分の 剛性が向上。ギアの歯も耐久性が向上しています。
* 新しいイグニッションスティックコイルは、優れた二次コイル電流を有しています。 燃焼効率の改善により、パフォーマンスとドライバビリティが向上しています。
* 一軸二次バランサーを採用することで、エンジンの振動を低減。これにより、他の振動低減 パーツを簡素化することが可能となり、重量増加を抑えることに貢献しています。 特にハンドルバーウエイトが減量されたことでステアリングレスポンスが向上しています。
* 新しいECUの重量は、僅か242 g (以前のモデルは305 g)を実現。 小型化されたECUは、エアーボックスボディに取り付けられています。 さらに、短いハーネスとの組み合わせにより、重量の抑制とマスの集中化に貢献しています。ECUのコネクターピンも68ピンから78ピンにも増加し、優れた機能性を実現します。
* 従来のものと比較して、半分以下の重量となったコンパクトなバッテリーを採用 (4130 g → 2040 g)。ABS搭載モデル(ZX1000K)においても、僅かに大きい程度 (3080 g)のバッテリーを搭載することで重量軽減に貢献しています。
* 重量軽減に貢献する軽量タイプのフューエルポンプを採用。
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完全新設計フレーム
- アルミツインスパーフレームを採用
- よりコントローラブルとなった車体
- コーナリングの安定性を向上
- フィードバック特性を向上
ホリゾンタルバックリンクリヤサスペンション
- 優れた路面追従性を実現
- スムーズな作動性
- 優れたフィードバック特性
- マスの集中化に貢献
- 熱の影響を最小限にし、安定した減衰力を実現
- ピギーバックリザーバータンクを装備
エンジン&シャーシパッケージを刷新
- 大幅な軽量化を実現
- しなり特性の最適化とマスの集中化により、 あらゆる状況下で高いコントロール性を実現
・エンジンレイアウト
・エンジンマウント位置
・ツインスパーフレーム
・ホリゾンタルバックリンクリヤサスペンション
・大容量プレチャンバーと小型サイレンサー
ニューフレーム
ハンドリングの進化、コントロール性の向上、飛躍的な重量低減を目指し、完全新設計とされた、アルミニウムツインスパーフレーム。
■アルミニウムツインスパーフレーム
* 新設計のアルミニウムツインスパーフレームは、ヘッドパイプからスイングアームピボットまでをメインチューブが直線的に結ぶ形状。ねじれの中心軸をメインチューブに近づけることで素直な特性とし、優れたコントロール性を実現しました。
* フレームは、コーナリング時の安定性向上と、高いレベルのフィードバック特性を実現しています。
* わずか7つのパーツから構成されるメインフレーム。主要パーツを鋳造製法とすることで、自由度の高い設計が可能となり、充分な剛性を保ちながらもフレーム各所の薄肉化が実現しました。
* 構成パーツの減少とともに、溶接の箇所も減少。美しい外観を得るとともに、工作精度の向上にも貢献しています。
* エンジンハンガーは、フレームのメインチューブと一体化され、重量の低減に貢献しています。
■完全新設計のエンジンとシャーシのパッケージ
* ニューエンジン、ニューフレーム、ニューサスペンション、全く新しいレイアウトの排気系など、車体全てを新設計とすることで、ハンドリングは飛躍的に向上しました。
* 最適な車体のしなり特性や高度なマスの集中化により、様々な状況下で高いコントロール性を達成しました。
■重量の削減
* 新しいNinja ZX-10Rは、従来モデルと比較し大幅な軽量化を達成しています。
* 重量削減に最も貢献している要素は、新しいフレームです。最適なフレームの厚さを実現する鋳造製法で、従来モデルよりも少ないパーツによって構成されています。
* BPF、グラビティ鋳造製法の3スポークホイール、小径ピストンを採用したリヤキャリパー、ECUの取り付け位置変更により短縮化されたワイヤーハーネスなど、軽量化のために車体各部を刷新しています。
■エルゴノミクス
* ライティングポジションにも細かな調整が施されています。シート高を低くし、フットペグ位置を5 mm 下、2mm前方へ移動。ハンドルバーは前方に移動し、たれ角は減少しています。サーキットでもストリートでも、アグレッシブなライディングが愉しめるポジションが実現しました。
* シート高が低められ、足付き性が向上しています。
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■ラムエア/エアフロー/デュアルインジェクション
* ラムエアインテークは、マシン先端に近い場所へ配置。吸入空気の充填効率向上を実現しています。
* 新しいエアボックスは背の高いボックス形状を採用。上部から吸気ファンネルに空気が入るようになり、より効率的な吸気を実現。エアボックスの容量も8Lから9Lに拡大しています。また、新しいエアフィルターにより、有効ろ過面積を約48%向上させ、さらに効率的な吸気に貢献しています。
* 吸入効率に優れるオーバルタイプの吸気ファンネルを採用。
* スロットルボディは、大径φ47 mm のメインスロットルバルブ(従来モデルはφ43 mm)を採用し、出力向上に加えスロットルコントロール性を向上。 オーバルサブスロットルバルブも、同様に大径化しています。
* より安定したパフォーマンスのため、アイドルスピードを自動的に調節するISC(アイドルスピードコントロール)バルブを、スロットルボディユニットの上部に装備。
* 常に作動するメインインジェクターに対し、セカンダリーフューエルインジェクターはスロットル開度とエンジン回転数によって作動。高回転域でのトップエンドのパワー出力とパワー特性に貢献しています。
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■エキゾーストシステム
* 新しいエキゾーストヘッダーパイプは、耐熱チタン合金製で、レースで使用されるパーツとほぼ同じ長さと径のパイプを採用。サーキットにおいて性能向上を図る際にも、マフラー全体の交換は不要です。
* メインパイプの集合部分(4-2、2-1部分)には、ハイドロフォーミング加工を採用し、シンプルで、軽量な構造となっています。
* 大容量プレチャンバーは、排出口に2つの触媒と排気装置を備えています。プレチャンバーは、騒音低減と高出力を両立、さらにマスの集中化に大きく貢献しています。
* 小型化したステンレス製サイレンサーはストレートパイプ構造とされ、パフォーマンスの向上とマスの集中化を実現しています。大容量プレチャンバーとショートサイレンサーの組み合わせにより、コンパクトなイメージを生み出しています。
■カセットトランスミッション
* レーススタイルカセットトランスミッションは、トラックコンディションに適したギヤ比の変更が簡単にできます。新しくなったエンジンレイアウトにより、カセットトランスミッションはエンジンオイルを抜き取らなくても、アクセスすることができます。
* 最適化された一次減速比と二次減速比により、加速時と減速時のリヤエンドの動きを最小限に抑制。リヤまわりの挙動が落ち着いたことで、自由度の高いサスペンションセッティングが可能となっています。
* 4速、5速、6速をクロスレシオ化し、サーキットパフォーマンスをより高いものとしています。
Q:開発コンセプトの概要をまず紹介してください。
上嶋さん(以下敬称略):今回、完全に新設計でZX-10Rを作りました。ZX-10Rは2004年モデルから3世代にわたって進化させて来たんですけど、新しいモデルを作るにあたって、我々のやりたいことがいっぱい溜まっておりまして、完全進化というカタチで作りあげようということで、このプロジェクトがスタートしました。
我々が目指したのは、速く走る為に車全体を適正化することでした。
新しい10Rのエンジンは、減速~倒し込み~旋回~アクセルを僅かに開けて~脱出でアクセルをどんど開けて行くところまで、車体挙動に対してネガになる部分を排除することに焦点を当てて開発しました。これらの狙いを実現する為に、エンジンのレイアウトも変更しました。
フレーム形態も大きく変わってますし、リアのサスペンションのレイアウトも変わっています。フロントフォークもBPFという現行ZX-6Rで好評のビッグ・ピストン方式のフォークを採用しました。コーナーの入口から出口まで、適正化したエンジン特性を存分に活かす車体特性を追求しました。
そして、我々が目指したものを実現する為のアイテムのひとつが予測型トラクション・コントロール、S-KTRC(Sport-Kawasaki TRaction Control)です。これはMotoGPテクノロジーのフィードバックといえるもので、2008年のMotoGPマシンで開発していたシステムをベースに市販車用に作り直しました。
ニューフィーチャーとしては一番誇れる部分だと思います。幾つものデータの0.005秒ごとの変化を読み取って、バイクの挙動、ライダーの意志、例えばライダーがどんな風にアクセルを開けていこうとしているか?などを常に予測するトラクションコントロールシステムで、他社に対して大きなアドバンテージのあるテクノロジーです。
簡単に申しますと、ECUの中に“モーターサイクルのモデル”が入っていて、実際のデータを与えることで次の0.005秒後の挙動に対処させるというものです。競合車のスリップ率をベースにジャイロセンサーや加速度センサーで補正するといったものに対して、センシングデータをもとにクルマやライダーが次にどんな動きをするのかを予測して『トラクション』をコントロールします。タイヤが変わってもライダーが変わってもOK。ライダーがリヤタイヤを滑らせたいと思ったら邪魔せず滑らすこともでき、ライダーの意思でウイリーもコントロール出来ます。
パワーモードはフル、ミドル、ローの3モードです。ミドルモードはスロットル操作に応じてエンジン特性も変化します。
もう一つのテクノロジーがスーパー・スポーツ専用超高精度ABS、KIBS(Kawasaki Intelligent anti-look Breake System)です。こちらのABSのユニットはエンジンECUと連動したマルチセンシングシステムによって高精度な液圧コントロールを実現し、ABSの介在時の減圧を最小限に抑制、ABS動作中でもブレーキレバーフィールを維持することを可能としています。一般的にスーパー・スポーツでは後輪荷重が少ないのですが、この液圧コントロールを採用することでフォローしています。
最後にタコメータ部分がLEDになったメーターを採用していますが、欧州雑誌向けの試乗会で「夜間走行も含めてかなり見やすい」という御意見を頂きました。視認性にこだわって開発しています。
Q:今までの10Rは公道で乗るにはどちらかといえば“優しくない”モデル、硬派、硬質なモデルだったが、今回のモデルではステップの位置が下がったりなどユーザーフレンドリーな方向に振ったのでしょうか? コンセプトが今までと違うのか違わないのか?
ZX-10Rの3世代にわたって得たものは我々の財産であり、それがカワサキの象徴でもあったと思うんです。ただ、今回の車体に与える影響を極力少なくしたエンジン特性というのは、カワサキらしさが薄れてしまうかな? というのもあったのですが、それでも全てが新しいパッケージングで新たなカワサキというものを作り上げました。
従来モデルですと、はまったときは非常に速く走れるんだけど、乗りにくい面がありました。そういう部分を排除しようと。繰り返しになりますが、どんなスキルの方に対しても乗りやすい、乗ってすぐに速いラップタイムが出せるようなクルマにしました。
Q:スムーズな限界性能といったものを追求していく中で、結果的の多くのライダーにフレンドリーなマシンに仕上がったというわけでしょうか?
上嶋:欧州で市場調査した時に、10Rには「fear、怖い」印象があるという調査結果が出てきました。それはどういったことなんだろうと議論して、車の中身で『怖い』印象を改善していく必要があると考えて新しい10Rを作りました。
Q:パキューンっと、ガンガン走る、が今までの10R。今回のヤツは…更にコントローラブル性をプラスした? 使えるやさしい特性に変わってますよということ?
松田:やっぱり10Rっていうのは、カワサキの顔なんで、“サーキット・ナンバー・ワン”とか“リーディング・エッジ”というのは外せないでしょ。尖ったものじゃなきゃいけないんですけど、それぞれ意識したのは“間口の広いリーディング・エッジ”。
乗れない人は乗らなくていいよ、分かんないヤツは乗らないでいい、がカワサキですから。その部分は譲れないですけど、ただそれだけではちょっと申し訳ないですから、“怖い”というのであれば、いかにその人をこっち側に引き入れて来られるかをコンセプトにしようと。実はそうすることによって、すでにこちら側にいた人でも、もっと上に行けるようになる。本気の性能を引き出したいときはちゃんと出て、そうでない時もある程度幅広く走れるようにしました。
Q:勝てることは重要だが?
松田:研ぎ澄ませて行くというのは幅が狭くなる、というイメージがあるが、じゃあ車両として高性能を目指していくと必ず乗りにくくなっていくかというとそうじゃないですね。たとえばMotoGPの車両などは新しいマシンほど乗りやすくなっている。高性能イコール乗りにくい、じゃないんですね。間口が広くなればトップライダーにもプラスになる。
Q:基本的なところの味付け。どんな走りをしてもらいたいと思って作ったのか? 今までと変わったのか?
古橋:基本的にはサーキット! カワサキらしさをもう一回見直そうということでやった。スタイリングを含めて、今までちょっと不満だったところもあったので。スーパー・スポーツの新しいイメージリーダーになるという目標も立てた。
ただサーキット性能を上げるだけでなく、フレンドリーさというところもありますし、シートの跨りやすさ、足つき性などもかなり改善している。ただ、カワサキらしさというところではサーキット性能もやはり外せませんので、一般道ではちょっと固めかなという意見があるかもしれませんが、そこら辺はカワサキだから、で割り切った部分もあります。
松田:乗れない人は乗らなくていいよ、分かんないヤツは乗らないでいい、がカワサキですから。その部分は譲れないですけど、ただそれだけではちょっと申し訳ないですから、“怖い”というのであれば、いかにその人をこっち側に引き入れて来られるかをコンセプトにしようと。実はそうすることによって、すでにこちら側にいた人でも怖さを“やせ我慢”しなくて済み、もっと上に行けるようになるのがわかったんですね。本気の性能を引き出したいときはちゃんと出て、そうでない時もある程度幅広く走れるようにしました。
Q:某ドイツ製B車に勝てるか?
上嶋:カタールのロサイルサーキットで開催したヨーロッパの雑誌社向けの試乗会で、新しい10Rは攻めに集中できるという車になっている、と言われた。まさしく、それが新しい10Rの特徴です。だから、新しい10Rは、異なるスキルのライダーが乗っても、いずれも少ない周回数で速いラップタイム、トップタイムが出せる、そんな車になっています。
B社の新型スーパースポーツは私も試乗しました。トラコンは確実に我々の方が勝っていると思います。全く違うシステムです。ABSに関しては良い競合関係にあると思います。ただ、テストしたのは我々のクルマの開発もすでにほぼ終わってる段階だったので、比較はしましたが、参考にした部分はありません。
Q:そのB車は150PSの日本仕様を簡単な操作で200PS(レース等の対応として)にすることが出来るが、カワサキさんに“裏技”は?
上嶋:裏技はありません。性能に関しては、欧州仕様とは、ECUとサイレンサーが違います。
Q:直4のままで行くと決めたのは最初から? もう少しコンセプト、全体像の話を。
門:キーワードの“とっつきやすさ”というのは、一番最初からで、常に頭に入れて意識しながら開発してきました。“サーキット・ナンバー・ワン、かつ公道でもナンバー・ワン”の答えが取っつきやすさであるんじゃないかとやってます。とっつきやすさは、もしかしたらウチにはかけていた部分だったかもしれないですね。
Q:200馬力。パワー、ウエイトレシオが1kgを切りました。
増田:CBR1000RRが整備質量199kgだったのでそれは是非超えたいなというのはありました。フレームで3kg以上軽くなっています。しなり、しなやかでありながら200馬力のエンジンパワーを受け止められるフレームはどうすべきなのかを考えて開発しました。前の10Rはフレームの幅が狭かったですね。それが売りでもあったし、デザイン的にも特徴があった。今回のコンセプトとして扱いやすさ、とっつきやすさ、を挙げていまいしたので、それを達成するためには、エンジンを抱え込んで、先代の10Rよりは幅の広いフレームにはなりますが、フレームの軽量化と剛性バランスを優先させました。
Q:開発スタートにあたって数値目標は? パワースペック等があったのか?
上嶋:当然ありました。初代10Rを超える、出力200馬力、は当然でした。
Q:リアショックのレイアウトについて。特徴的だと思うのですが、マフラーが先かショックが先か?
増田:マシンの構成ではいろんなテストをしました。リアショックもその一連であの場所になりました。難しさはありました。アッパーリンクにした一つの理由は、チャンバーを下に置きたい、マフラーを短くしたいというのもありますが、あのレイアウトにするとアッパークロスの位置がスイングアームピボットから離れ、スイングアームピボット周辺の柔軟性が出せます。
ここの剛性が旋回性に大きく影響することは分かってましたし、リヤショックユニットを車両重心の近くに持って来れるというのもメリットです。熱の影響をサスが受けにくいのも利点で、長時間走っていてもタレが少ない。いろんな面のメリットを総合しました。確かにプラスばっかりじゃないです。トータルとしてプラスになるのであれば積極的に採用していくということです。
門:もちろん難しかったです。このホリゾンタル・バックリンクに決めるまでに、従来までのユニトラックやプロリンクなどもトライしました。フレーム剛性に自由度を持たせることがメリットです。何が良かったと言えばやはり旋回中にギャップを踏んでもガンガン開けていける、これは大きかったですね。スライドしてもコントロール性が良くて、どこまでも開けていける。確かに当然一箇所良くしようとすると悪い部分も出てくるのは当たり前で、その部分が底上げできればトータル的に判断できますから。
Q:難しさって? 動き出しはスムーズでしょうけど、奥はどうなんでしょう?
門:高速域のバランスの取り方が難しかった、という部分があるのは確かです。エンジンの位置を上げたり、ヘッドパイプの位置を手前に持ってきたり、立てたり。その辺はいろいろチャレンジしてます。
苦労はしましたけど、最終的には我々が目指すところに落とし込むことが出来たと思ってます。
Q:資料に「黒豹をイメージした」というのがありますが、猛禽類的にも見える?
古橋:見方によってはそういうこともあるのでしょうか? 猛禽類を意識したと言うことはないです。“攻撃的なもの”ということをデザインでイメージした。今後のカワサキのイメージリーダーとなるのですからスタイリングにも力を入れて開発しました。
エッジを出すと、空力的には悪いんじゃないか、というイメージがありますが、そこら辺も挑戦の課題に、とトライしました。実際に何度も風洞テストして納得のいくデザインにできました。
松田:空力っていうのは、流線型が良いって言われますけど、そうとは限らないんです。新幹線など決まった走り方をするものはそうかもしれませんが、バイクはライダーを含めてのプロテクションになるので、曲線でやっていくと流速が上がって、その流速の上がったヤツをまったくライダーにあてずに流せれば良いんですけど。
バイクでは人が出たり入ったりするんです。流速の速い部分に、体にひっかかると逆にドラッグが凄く大きく出てしまうんですね。確実に流線型でライダーを囲うとなるととんでもない大きなカウルになってしまいますから。ある程度乱流を作っておいてライダーにあたる流速を下げてやれば、ライダー込みの全体でのCD値は下げられるという考え方ですね。単純に丸いからいいというのは、イメージはそうなんですけど、コーナリングしたり、向きを変えたりするバイクでは逆にエッジがあった方が切れが良くていいんです。
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