「ところで祥ちゃん! 信州はどちらに向かうのでしょうか?」
「はい! 軽井沢から長野を抜けて白馬までですよ」
おおーこれはかなりの長旅だ。
素直に、レイチェルとの長旅に顔がほころぶ。
中年は実に単純である。
さて、白馬に向けて、まさに白馬となる馬はホンダのVツインVT400Sだ。
VT──この響きは懐かしいなぁ~、学生時代にVT250に乗る友達がいたので、何度か乗ったことがある。
高回転までよく回る、モーターのようなエンジンだったと記憶している。
黒いタンクに、真っ赤なホイールラインが映える、渋いバイクだ。
さぁ! 白馬が見つかれば、後は王子様だ!
白馬の王子様気分で、レイチェルをエスコートする私だが、恐らく、よそ様の目には、ただのおっさんにしか見えていないだろう。
しかし、いいのだ、人の目など気にせずに、人生は自分向きに都合よく生きることによって、真の幸せに近づく! 今までそう信じて生きてきたのである。
早速、レイチェルを後ろに乗せて、関越道を北へと向かう。初めて乗るVT400Sでのタンデム走行である。
慎重派ですから、後ろに乗るレイチェルに気遣いながら丁寧にクラッチミートして発進する。400cc故にトルクの弱さは否めないが、回転数を上げてやればタンデムでも難なく発進できる。
紅葉につつまれた信州への旅なんだから、レイチェルと景色を見ながら、のんびり走るのにはもってこいのVTちゃんである。
- 色付いた木々の間を縫うように進むのだ。
関越自動車道から上信越自動車道へと続く紅葉の道を、のんびりVT400Sで運転する。
VTにも慣れてきて後ろに座るレイチェルに話しかけるが、残念ながら話が伝わらない。会話を楽しみながらのタンデム走行にはインカムが必需品だとつくづく反省する。
会話は無くても気持ちはひとつ、心地よいV型サウンドを楽しみながら、快適タンデムで軽井沢に到着した。
- 群馬県と長野県を分ける鳥居峠。わーいわーい!なレイチェルなのだ。ちなみに峠の茶屋はやってなかった。
白馬まで移動することが目的であれば、長野インターまで走るのが一般的だが、今日の目的は信州を楽しむ旅です。碓井軽井沢インターから国道を走り、のんびり白馬を目指すことにする。
中軽井沢を経由して国道146号に入る。国道146号は別名日本ロマンチック街道。レイチェルとのタンデム旅にはバッチリなネーミングだ。
ロマンチック街道の程よいワイディングを楽しんで、VT400Sのハンドリングが実にニュートラルなことを知りました。このバイクは気楽に快適なツーリングを楽しめるバイクです。
国道146号から144号へと進路を西に向け、長野街道を走り嬬恋村に入ってきた。田畑は稲の収穫も終わり、のんびり時を刻みながら秋を深めていた。嬬恋村をのんびりと走る中、レイチェルに話しかける。
「レイチェル! 寒くない?」
「大丈夫です!」
「お天気でよかったね!」
「そうですね! 気持ちいいでーす!」
バイクは二人を乗せて嬬恋村から、夏合宿のメッカ菅平高原に入った。夏には多くの学生たちで賑わう町だが、この時期に眼に入ってくるのは、誰もいないグランドと高原野菜の畑で収穫に励んでいる農家の皆さんだけである。
この辺りは信号機もなく、車も少ない、カラシ色の景色を眺めながら、のんびり秋を満喫して長野に向けてVT400Sは快走する。
峠道の合間から長野市街が見えてきた。山間の牧歌的な集落とは対照的に広がる平野には近代的なビルが立ち並んで見える。
千曲川を渡り長野市内に入ると車の量も多く、信濃路で初めての渋滞に遭遇する。一人旅なら、前へ前へと進むが、タンデム旅ではのんびりと渋滞の列に並んで走る。信号に止まるたびに、レイチェルに話しかけ、二人旅を楽しむ。
軽井沢を走っていた頃は、レイチェルのメットが私のメットにコツンコツンとぶつかっていたが、すでに5時間を超えるタンデム走行を経て、彼女のメットもぶつかることもなくなった。二人の息も合ってきたところで昼食にすることにした。
- 菅平はラガーマンを始めとするアスリート達にとっては夏合宿のメッカなのだ。ちなみに山本先生は、この地で合宿したことはないのだった。
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