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《Kawasaki 2011年モデル・インフォメーションより》
正統派のクラシカルなルックス
=クラシカルな美しさと昔ながらのライディングフィール、カワサキ伝統のルーツ=
W800はヴィンテージバイクの持つ美しさとライディングフィールを徹底的に追求して開発されました。極上の美しさを誇る各部のコンポーネントは細かいディテールにまでこだわって造られ、ふんだんに使われたメタルパーツが正統派の上質感を実現しています。空冷バーチカルツインエンジンの鼓動、大径ホイールのもたらす独特のハンドリング性能は、けっして忘れ去られることのない昔ながらのオートバイらしいフィーリングを思い起こさせてくれるでしょう。W800はそのルックス、フィーリング共に、45年の長きにわたって続くカワサキの「W」ブランドの起源、歴史的な名車W1に敬意を表しています。
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●クラシカルな美しさ
こだわりの造形がもたらす美しい外観
-Wの象徴であるベベルギヤと美しい空冷バーチカルツインエンジン
-大径ホイールとバランスの取れた車体がもたらすクラシカルなイメージ
-細かなディテールまでこだわって造られた造形
-シンプルでありながら上品なマフラーのデザイン
メタルパーツの輝きと上質感
-プラスチックではなく、各部にメタルパーツを使用
-高品質な仕上げのクロームとバフ仕上げのエンジンカバー
-細かい部品もブラックのアルミニュウム製
-美しさを継続させる耐食性パーツ
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●ライディングフィール
味わい深いバーチカルツインエンジン
-鼓動感を生み出す773cm3エンジン
-360度クランク軸の独特なパルス感
-エンジンは2,000rpmで最大トルクを発生
-ライダーを急かさず、のんびりとライディングを楽しませてくれる低中速域の力強いトルク
-重いフライホイールが中低速域での力強いトルク感に貢献
-フューエルインジェクションを新採用
大径ホイールのクラシカルなハンドリング
-フロント19インチ、リヤ18インチホイールを採用
-扱い易く、軽快なハンドリング性能と直線安定性を両立
-19インチフロントホイールを採用することでゆったりとしたステアリングフィールを実現
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「W」スタイリング
※シャーシはシンプルでありながら機能的、かつエレガントというコンセプトに基づいて設計されています。
※大径ホイールとコンパクトなマシンデザインがクラシカルなプロポーションとバランスの取れたデザインを生み出しています。
※高品質な塗装が施された美しい造形の燃料タンクは、機能的でありながら上品さを醸し出しています。
※燃料タンクのグラフィックには水転写デカールを採用。繊細なグラデーションの表現が可能となり、しかも凹凸のない美しい表面仕上げを実現しています。
※新たにデザインされたタンクエンブレムはクロームメッキ仕上げ。W800の美しいルックスに貢献しています。
※サイドカバーはスチール製とし、W800の高品質なスタイリングを演出。
※トラディショナルなスタイリングの前後フェンダーはクロームメッキ仕上げのスチール製。ルックスはもちろん耐久性にも優れています。
※スピードメーター、タコメーターの計器類は大型のヘッドランプ後部に設置。
※スチール製のヘッドライトボディには燃料タンク、サイドカバーと同色の塗装を施し、ヘッドライトリングはクロームメッキ仕上げ。クラシカルなイメージを強調する、カットガラスレンズを採用してます。
※トラディショナルなスタイリングのフロントフォークにはインナーチューブ、シールの保護を目的としてゴム製のフォークカバーを装着。またアウターチューブには美しく輝くバフ研磨を施しています。
※マシン全体の雰囲気と合わせるため、リヤショックにはあえてカバーをつけずシンプルなデザインとしてます。
※ホイールにはトレンドのアルミリムと軽量スポークホイールを使用。
※フロントブレーキには外径300mmのシングルディスクブレーキを採用し、確実な制動力を確保しています。
※リヤブレーキには有効径160mmのドラムブレーキを採用。リヤまわりのシンプルなデザインに貢献しています。
※フロントホイールのハブとリヤドラムブレーキのサイドパネルにはバフ研磨を施し、軽快なルックスを演出しています。
※クラッチレバーは5段階、ブレーキレバーは4段階の調整式。好みの位置に調整することができます。
※深いバンク角でも邪魔にならないよう、ステップは可倒式としています。また、ステップは前後ではなく上下に倒れるようにすることでペダルの操作性を向上させています。
※メインテナンスに便利なセンタースタンドを装備。スタンドアップ時に踏む部分の面積を大きくとることで容易にスタンドが掛けられるようになっています。
※左右にグラブバーを装備。センタースタンドを掛ける際、またパッセンジャーのタンデムグリップとして機能します。クロームメッキを施すことで上質な仕上げとしています。
※ヘルメットロックを2個装備。左側はアクセスしやすいサイドカバー後ろに、右側はシート下に配置しています。
※シート下にはU字ロックを搭載できるスペースを確保。
※薄型520タイプのドライブチェーンとスプロケットが重量軽減に貢献。
※タイヤにはトラディショナルなトレッドパターンとグリップ性能を両立する、チューブタイプのダンロップTT100GPを採用。
※リヤタイヤのエアバルブはアクセスしやすいL字タイプを採用。
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■メーター類
※クラシカルなパネルのスピードメーター、タコメーターを備えるトラディショナルなメーター。メーター内のマルチファンクション液晶スクリーンにはオドメーター、トリップメーター、および時計を表示、また、FI警告ランプ、ターンシグナルインジケーター、燃料警告ランプ、ハイビームインジケーター、ニュートラルインジケーター、および油圧警告ランプを装備しています。
※軽量、コンパクトなスイッチボックスは、ハンドルまわりをすっきりと見せると同時に、クラシカルな外観にも貢献しています。
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■その他
※各部には極力プラスチックではなく、メタルパーツを使用しており、メタルパーツならではの硬質な感覚がもたらす、オーセンティックなクオリティを実現しています。
※ポリッシュ仕上げのパーツがW800の高品質感と美しい外観に貢献。
※W800の持つ美しさを損なわないよう、高品質な塗装とクロームメッキには耐食加工を施してます。
※軽量のアルミリムは耐食性が高く、スポーク、ニップルには汚れを簡単に落とすことのできるコスマーNC塗料を使用しています。
※角断面のメインフレームと丸パイプのダウンチューブから構成されるフレームがつくるクラシカルな外観。ブラケットやガセットを最小限に抑えることで、見た目の美しさだけでなく軽量化にも貢献しています。
※ヘッドライトステーはクロームメッキ仕上げ。
※楕円形状のミラーはクロームメッキ仕上げ。
※シフトレバー、リヤブレーキペダルにもクロームメッキを施しています。
※W1と同様、クロームメッキのチェーンガードを採用。
Q:開発コンセプトをお聞かせください。
赤松さん(以下敬称略):W800はW650のコンセプトを継続しましたので、W650の話から始めさせてもらいます。
W650は1999年に発売されましたが、実際に調査などを開始したのは1995年頃でした。この頃は1989年に発売したゼファーがネイキッドという市場を創造しました。そこでZEPHYRを購入して頂いたお客様に「ゼファーを選んだ理由」という調査をしたところ、「雰囲気」という回答を多く頂きました。
この「雰囲気」とは何かと調べてみると、それはお客様の「スタイル」というキーワードへ行き着きました。この「スタイル」とは単なる流行のファッションとかではなく自らのポリシーや経験から自らに染み込んだ感性であり、その感性を持って色々なモノの雰囲気を感じ取り、乗り物や身につけるものを選択していると理解しました。
そこで、ゼファー等のモデルとは違った雰囲気を持つモデルを出せないか、というところを表現したものがW650でした。
エンジンの造形や、スチールを多用した素材のこだわりとかが醸し出す雰囲気を感じて頂きWに乗る事でお客様のスタイルを深められたらという思いで企画しました。
W800では、排気量が変わってもW650を提供した思いを継続させるべく「美の継承」というコンセプトで開発を進めました。
Q:800cc化の動きはいつぐらいから?
菊地:排気量をアップして欲しいという声は早くから出ていましたが、最終的に決まったのは2009年4月頃です。
Q:W650は日本専用モデルでスタートしましたが?
赤松:アメリカ、ヨーロッパも視野にはありましたが、やはり軸足は日本でした。
W650の生産終了は2008年?
大杉:2008年モデルまでです。
Q:W800はW650の上を目指したもの?
赤松:W650を買われたお客様にはもう何年もW650を乗ってこられてそろそろステップアップを考えられているお客様もいらっしゃいます。そのお客様から「Wの持つ雰囲気は好きだがもう少し上の排気量にも乗ってみたい」との声を頂きました。そこで、お客様の要望に応えられるよう開発しました。しかし、ただ単に排気量を上げただけじゃなくて“W”としての存在を守った上での新たな“W”としての開発を行っています。
Q:650という数値にこだわる意味はあまりないな、という感触もあった?
赤松:W650を企画した当初は、昔の“W”を知っているお客様へのメッセージとして650という排気量も1つのアイコンとして考えました。その後、販売を継続していくうちに徐々にエンジン型式や、車体の造形などのパッケージが今の“W”として認識されてきて、もう昔の“W”を踏襲した650という数字の意味合いが薄まってきたこともW800の開発につながりました。
Q:パワーは同じだけどトルクは上がった。
菊地:乗ってもらうと良く分かると思うのですが、やはり排気量が増えた分だけ、ピークパワーは同じだけどトルクが増し、低回転時の余裕度が増え、良いエンジンになったと思います。方向性はW650と同じでしたが、性能も同じ、というわけにはいきませんでしたから。
Q:国内は2,500台(年間販売計画)ですね、欧州は?
菊地:ほぼ同じくらいです。国内ではスタンダードが1,800台に、Special Editionが700台。欧州ではスタンダードのみで約2,600台。それと少数ですがオーストラリアなどもあります。
Q:トライアンフの存在は?
赤松:軸足はあくまで日本。W650の時もそうでしたが、カワサキはカワサキの信じるパッケージで行こうと思ってましたので、特に意識はしませんでした。
Q:デザイン面の概要説明を。
松村:以前に250TRやエストレヤのF.I.モデルを担当しており、W800は是非やらせて欲しいと思いました。どんなスタイリングがいいのか、いろいろ考えたのですけど、ベースモデルのW650が完成されたデザインでしたので、下手にいじると“W”のイメージが壊れてしまう。だから、イメージを維持したまま、質感、クオリティアップに気を遣いました。
パッと見ただけではW650から変わってない? という印象を持たれるかもしれないですけど、ひとつひとつの部品のクオリティをアップさせているんですよ。
エンジンについては、シリンダーをシルバーに変えて差別化を図りました。同じデザインなんですけど見た目の二極性を狙っています。
タンクエンブレムもかなり長い時間をかけて作っています。あえて“W”という文字だけを入れることで、“W”ブランドを強調しています。また、インジェクションになったことで、もともとキャブレターがあった場所はすっきりしたんですが、左側はカバーで覆うことで昔のキャブ周りのイメージを出しました。
ヘッドランプステーはスタンダードでもメッキに(W650はスペシャルのみメッキ)、フロントフォークのボトムケースをバフ処理にしています。ベベルギアのカバー(アルミダイキャスト製)はバフ処理からメッキに。ヘッドランプケース、サイドカバーもボディー色として全体の統一感を出すようにしました。燃料タンクのグラフィックは今回、水転写という方式を採用して段差を感じさせない仕上がりにしました。以前はステッカーで、ステッカー分の厚さがあったのが、水転写ではインク自体の厚さだけになりました! 転写という技術自体はカワサキが1970年代のモーターサイクルでも使っていましたが、当時は水ではなく溶剤転写というものでした。
表面処理の話が多くなりますが、リアブレーキパネルなどバフがけの箇所を多くしています。ウインカーはW800の存在感にこだわって、やや大きめのターンシグナルを採用しています。バックミラーは従来品の四角いものから質感の追求と、見た目の柔らかさを表現するためにオーバルタイプに変更しました。
チェーンケースは今回、スチールのプレス成型なんですが、久しぶりに手書きで図面を書きました。ちょっと見たときにこだわっている部分を更にこだわってもらえるようにしました。設計担当者には相当厳しかったでしょうけど、無理言って製品にしてもらいました。
Q:チェーンケースではどのような点で苦労したのでしょうか?
松村:あの形状は非常にプレスの行程が多いんです。
菊地:プレスの行程が多いのも大変なんですが、もともとW650のチェーンケースは樹脂製で、それを単純にスチールにすると重量が増え、チェーンケースの取り付け部が強度的に足りないところが出てきます。そこをどうしていくかというのがなかなか難しかった。単に強度を上げればいい、というわけではなく、バランスというものがありますから。
Q:Special Editionのチェーンケースを樹脂製とした理由は?
松村:板金製チェーンケースの造形はクロームメッキを前提としたもので、単なる黒塗装ではスペシャルエディションにマッチしませんでした。樹脂製とすることで、存在を主張させず、スペシャルエディションの黒いスタイリングに違和感を与えない様にしました。
Q:歴代の“W”は参考にされるなり、眺めるなりしました? どのタイプの“W”が好きですか?
松村:個人としては“W2TT”が好きですね。“W1SA”のヘッドライトあたりも雰囲気がいいですね。
Q:車体設計面の概要を。
菊地:フレームはW650とほぼ一緒ですが、F.I.化でブラケット類を追加したり、と細かい部分は作り変えています。又、トルクアップに応じて部分的に補強したりしています。
シートについては、足つき性をW650からもう少し良くしたい、シート高をなんとかしたい、というのがありました。単にウレタンだけ薄くしたのでは乗り心地が悪くなってしまうため、タックロールのウレタンを柔らかい素材に変更し、ピッチの幅や厚みもいろいろ試して最適なものにしました。玉縁もデザイナ-に色々検討してもらい、ライダーの内股にあたらないようにするなど、トータルで足つき性を改善しながら乗り心地も向上させました。
ショックアブソーバーはカバーレスにするなど外観をちょっと変えているんですけど、内部的には減衰をもう少し上げて全体の乗り心地も変えています。これによって走りも変わっています。
それから、W650のヘルメットホルダーは片側に一個だけだったんですけど、タンデムライダーの分も搭載できるようにシート下にワイヤー式ですがひとつ付け加えました。
メーターは意匠変更だけではなく、視認性を向上させるために、約8.5度起こしています。また、クラッチレバーとブレーキレバーを調整式に変更し、ユーザーの手の大きさに合わせて自分好みに調整できるようにしました。一見あまり変わってないようですけど、細かいところでいろいろ改良しています。
Q:シートベースは一緒?
松村:基本的には同じですが、ETC車載器本体の取付スペースを作るために後部形状を変えています。
Q:ライディングポジションの設定についてですが、新しい方向を目指したとか?
菊地:W650はアップハンドル仕様とローハンドル仕様の二種類あったんですが、今回はカフェスタイルを作るという方針が有りましたので、そのスタイルに合わせるべくロー仕様のみとしました。ステップもW800ではキックを廃止することになったので、右側のステップを左側と同じ位置に設定出来る様になり、乗車時の違和感を解消出来ました。
Q:W650のローハンドルに近いライディングポジション?
菊地:ハンドルのポジションはW650のローハンドル仕様と同様ですが、シート高が下がっている分、W650のローハンドル仕様と比べるとやや起きたライディングポジションになっています。
Q:ショックアブソーバーの減衰を変えた?
菊地:リアショックに関しては変更しています。W650では2段バネを使っていましたが、W800では不等ピッチにしています。全体のバネレートとしては同じですが、圧側減衰力を約10%、伸側減衰力を約20%上げています。
Q:フロントフォーク、ブレーキは?
菊地:フロントフォークの機能部分は同じですが、ハンドルをインチサイズからミリサイズ、φ22.2mmに変えたことに合わせてアッパーブラケットを400ベースのものに変更したり、アクスルの締上げ方法を変更しています。ブレーキはW650と同じです。
Q:カフェスタイルのオプションパーツは?
菊地:カワサキモータースジャパン(国内販売会社)が企画・デザイン・部品調達、川崎重工がテストを担当しました。
Q:キックペダルを無くした理由は?
菊地:実際にお客様が必要としているのかを調査した結果、無くしたことでこのオートバイの価値が下がることはないと判断しました。重量も1kgくらいは軽くなりますし。
Q:タイヤは?
菊地: W650では欧州と国内では別ブランドだったけど、今回は統一しました。
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