3月9日、スズキの海外向けモデルを取り扱うMoto Mapから2011年モデルの逆輸入が発表された。「GSX-R600が3月、GSX-R750が4月上旬、GSR750が5月中旬に発売開始する」(MotoMapを運営する伊藤忠オートモービルの小田善明さん)という。「価格は決定しだい発表します」ということで、購入を考えている方は、Moto MapのWEBサイトをチェックしていただきたい。
また、当日はスズキの二輪技術本部の佐々木達哉さんら開発陣から2011年モデルの概要が説明された。海外プレス向けの技術説明書と合わせて2011年モデルを解説していこう。
まずはブランニューといえるGSR750から。ネーミングからも分かるとおり、このマシンはGSR600の後継モデルというポジションだ。欧州でのミドルクラスであり、国内仕様の400との兼ね合いなどもあって600となった従来のGSR600だが、やはりパンチ不足感はいなめなかったことから“お手の物”のナナハン・エンジンを完全新設計のフレームに搭載しての登場だ。
それではさっそくそれぞれのパートに分けてGSR750を紹介していこう。
まずは注目のスタイリング。極端に短い前後のオーバーハング。アグレッシブなストリートファイターを思わせるコンパクトな車体は、フロントからリアへと力強いラインを形成している。そのスタイリングは「ライダーが乗車し、マシンと一体となって完成する」という。
フロントフェンダーには巧みにデザインされたエアインテークを備える。ヘッドライトカウルにも同様エアインテークを設け、インストルメントパネルもカウル内にビルトインされる。エッジの効いた全く新しい方向性を示すデザインが施されたバックミラーもマウントされる。
大きく開口したラジエターサイドパネルとアグレッシブなフロントサイドピース。17.5リットルの容量を確保するフューエルタンクには、タンクと質感の対比が鮮やかなタンクサイドパネルが装着されている。
アグレッシブなライディングを考慮したシート形状とフレームサイドカバー。エッジの効いたテールセクションにはLEDテールライトがビルトインされている。そしてデザインを引き立たせるコンパクトなターンシグナル。
ヘッドライトはマルチリフレクターハロゲンヘッドライト(ハイ/ロービームデュアルフィラメント)を採用。ヘッドライト両サイドには、パターンの入ったブルーポジションランプを装備。高い被視認性と配光特性を誇る。
インストルメントパネルには視認性の高いアナログ式タコメーターが採用された。大型の液晶パネルは、スピードメーター、ギヤポジションインジケーター、水温計、燃料計、時計、燃費計、オドメーター・ツイントリップメーターを表示する多機能メーターとなっている。液晶パネルのバックライトは、ホワイトのLEDを採用、輝度調整機能も備える。LEDインジケーターランプは、ニュートラル、ターンシグナル、ハイビーム、油圧、FI (フューエルインジェクション)、イモビライザー作動を表示。
次に注目はエンジン。エンジンは2005年のGSX-R750のエンジンをベースに、ストリートでの扱いやすさを追求。徹底したフリクションロスの低減と燃焼効率のアップが図られ、低中速のパワーをアップさせている。GSX-R750が本来持っている高回転域までストレスなく回るエンジンの魅力も合わせ持ち、ワインディングでライダーを夢中にさせるフィーリングを生み出している。また、燃焼効率を大幅にアップ。高い環境性能を備えている。
GSX-R750エンジンからさらに発展させたのは、カムプロフィール、吸排気系の見直し、徹底したフリクションロスの低減と燃焼効率のアップで、低回転から強力でほぼリニアなトルクを生み出し、高回転まで吹け上がる特性を確保している。狭いバルブ挟み角を持ち、インテークバルブφ27.2mm、エキゾーストバルブφ22mmによるコンパクトな燃焼室は同様だが、様々な見直しにより燃焼効率をアップさせている。低中速域でのレスポンス、加速性、燃費が向上したほか、排出ガスの低減に貢献している。ミッションは同じ6速だがクロスレシオトランスミッションを採用。
気筒ごとに2枚のスロットルバルブを装備し、インテークバルブ側に取り付けられたメインスロットルバルブはライダーのスロットル操作によって開閉され、エアクリーナー側に取り付けられたサブスロットルバルブはエンジン回転数、ギヤポジション、メインスロットル開度によってエンジンコントロールモジュール(ECM) が最適開度を判断し、トルクモーター駆動によって開閉するスズキデュアルスロットルバルブ(SDTV)も採用。
このSDTVにより、混合気流速が各回転域で適正化され、低回転域から高回転域まで効率的な燃焼を実現。出力特性のアップと、ほぼリニアでスムーズなスロットルレスポンス、排出ガス中の有害物質の低減を可能とした。各気筒には、8穴の高微粒子タイプマルチホールインジェクターを採用。
アイドルスピードコントロール(ISC)も採用。寒冷時の始動においては、水温センサーの情報に基づき吸入空気流量を増加しファストアイドル制御を行う。始動直後の排出ガスを低減しつつ安定したアイドリングを実現。
エンジンコントロールモジュール(ECM)では最新式のトランジスタ点火制御回路を採用。イリジウムスパークプラグの採用と合わせてより高い点火性能と耐久性を誇る。
二次エア導入システム(PAIR=Pulsed-AIRシステムは、スロットルポジションとエンジン回転数に従ってECMで制御されるPAIRソレノイドバルブを介して、エアクリーナーボックスからシリンダーヘッドエキゾーストポートに新鮮な空気を直接噴射、未燃焼の炭化水素HCと反応させ、一酸化炭素CO排出量を低減する)も採用された。
エキゾーストシステムのミッドパイプにはO2センサーを備え、排出ガスを監視。フィードバック制御を行うことにより、燃焼効率を最大限に高め、排出ガス低域にも貢献している。
また、ミッドパイプに設けられたバタフライバルブは、サーボモーターにより開閉を制御。エンジン回転数、スロットルポジション、ギヤポジションなどの走行条件に基づいて背圧を最適化することで、低中速回転域でのトルク、レスポンス、加速性を高めるのに貢献するスズキエキゾーストチューニング(SET)も採用。
触媒はエキゾーストシステムに組み込まれ、制御システムと連動して、炭化水素HC 、一酸化炭素CO 、窒素酸化物NOxを削減し、欧州排出ガス基準をクリアしている。
フレームはスチール製だ。D字断面を持つツインスパー部分と、丸型断面のチューブラーフレームが組み合わされ、コンパクトにまとめられたもので、剛性としなやかさがエンジンキャラクターにマッチし、ストリートからワインディングまで、あらゆるシーンでダイナミックな走りを楽しめるという。
フレームのミッドセクション(シートとフューエルタンクが接する部分)では、フレームがスリムに絞り込まれ、足着き性に貢献している。
キャスター角は25°20’、トレールは104mm。ホイールベース1,450mmとともに、軽快な走りを実現するディメンションとなっている。
フロントサスにはカヤバ製の倒立フロントフォークが装備される。φ41mmのインナーチューブと、ゴールドカラーのアウターチューブを採用。スプリングプリロードはフルアジャスタブルタイプだ。
リアには長方形断面のスイングアームを採用。プログレッシブリンケージを介してカヤバ製モノショックを作動させる。ホイールのストロークに応じてプログレッシブに減衰力が変化し、高い路面追従性を実現する。スプリングプリロードは、7段階に調整可能。
フロントブレーキは、φ310mmフルフローティング式のデュアルディスクに、トキコ製デュアルピストンキャリパーを組み合わせている。リアブレーキは、φ240mmシングルディスクに、NISSIN製シングルピストンキャリパーを装着。ホイールは軽量な3本スポークアルミキャストホイール。
ハンドルバーはアグレッシブなライディングスタイルを生む形状のパイプハンドルで、フロントブレーキレバーとクラッチレバーの握りしろは、ライダーの好みで5段階に調整が可能。
ゴムパッド付きのアルミ製ライダーフットレストを、アルミプレートにマウント。アルミ製のタンデムフットレストをマウントするブラケットには、便利な荷掛けフックを装備。取り外し可能なタンデムシート下には、U字ロックや小物が収納できるスペースを確保。シート下荷掛け用ループも装備している。
以上がスズキの新型スーパーネイキッド、GSR750の概要だ。あくまで走りにこだわるスズキの真打ち登場で、750スーパーネイキッドがブレイクするのは確実?
試乗記を乞う御期待。
★主要諸元
車名型式 | (海外向けモデル) | |
---|---|---|
GSR750 | ||
発売日 | 2011年5月中旬(Moto Map) | |
全長×全幅×全高(m) | 2.115×0.785×1.060 | |
軸距(m) | 1.450 | |
最低地上高(m) | 0.145 | |
シート高(m) | 0.815 | |
車両重量(kg) | 210 | |
乾燥重量(kg) | - | |
乗車定員(人) | 2 | |
燃費(km/L) | - | |
登坂能力(tanθ) | - | |
最小回転半径(m) | - | |
エンジン型式 | - | |
水冷4ストローク並列4気筒DOHC4バルブ | ||
総排気量(cm3) | 749 | |
内径×行程(mm) | 72.0×46.0 | |
圧縮比 | 12.3 | |
最高出力(kW[PS]/rpm) | -[-]/- | |
最大トルク(N・m[kgf・m]/rpm) | -[-]/- | |
燃料供給装置形式 | フューエルインジェクション | |
始動方式 | セルフ式 | |
点火方式 | フルトランジスタ式 | |
潤滑油方式 | ウエットサンプ式 | |
潤滑油容量(L) | - | |
燃料タンク容量(L) | 17.5 | |
クラッチ形式 | 湿式多板コイルスプリング | |
変速機形式 | 常時噛合式6段リターン | |
変速比 | 1速 | - |
2速 | - | |
3速 | - | |
4速 | - | |
5速 | - | |
6速 | - | |
減速比1次/2次 | -/- | |
キャスター(度) | 25°20′ | |
トレール(mm) | 104 | |
タイヤサイズ | 前 | 120/70ZR17M/C 58W |
後 | 180/55ZR17M/C 73W | |
ブレーキ形式 | 前 | 油圧式ダブルディスク |
後 | 油圧式シングルディスク | |
懸架方式 | 前 | 倒立テレスコピック式 |
後 | スイングアーム式 | |
フレーム形式 | ツインスパーフレーム |