2時間ほどワインディングばかりを走った。景色を楽しみ、めくるめく道の変化にバイクを合わせてコントロールする珠玉の時間。ロングコーナーからタイトへの複合など自在感があり、170mmという長いサスストロークを意識させない。ボクの場合こんな道ではツーリングモードとの相性がいいようだ。むしろスポーツにすると車体のレスポンスが良くなる分、リーン速度が速まり、切り返しの時に伸びきるサスペンションのストロークの長さを感じる場面があった。だから、ボクにとってはツーリングモードのほうが全体としては自然に感じたのだ。これはあくまでも出荷状態の設定であり、サスペンションは細かく体重などの個人差、好みに合わせてイニシャル調整の変更が可能なので、ツルシの設定で足りない部分はフォロー出来るのも新型ムルティ1200Sの売りだ。
ブレーキは完璧だと思う。ブレンボとボッシュ、そしてドゥカティが共同で煮詰めたABS付きブレーキのシステムはタッチにABS付き車特有の初期のぶかぶか感がなく、シャーシ設定の妙もありタイヤにしっかり荷重がかかった上でブレーキ制動を楽しめ、リアも制動感がキッチリあるのにあまり介入してこない。ダートでも自信をもってフル制動を試みられる。バイクが軽いというのが最大の武器だが、姿勢変化のコントロールも絶妙で、前後17インチのグリップ感を享受できる場面だ。
高速道路での快適さはハナマルではなく◎レベル。むろん悪くない。むしろ夏だとこれぐらい風が当たって欲しい。スクリーンは左右にあるノブを緩め手で60mm上方に可動するから、被るヘルメットやその時の風の状況、プロテクションの欲しい部分を自分で探しながら走れる。パニアを標準装備した1200Sツーリングエディションだとグリップヒーターも標準となる。
長い距離を一定速度で走る。新型ムルティはロングツーリングでも急かすことも疲れさせることもなく走り続ける。エンジンのテスタストレッタ11°が生み出すメリットに、巡航燃費の良さもある。あれこれ試し、決して燃費運転に徹したワケではないが、230キロほどを走りオンボードコンピューターが示した平均燃費は18~19km/lほどをさしていた。また、湿式クラッチを採用し音も静かだ。また、クラッチバスケットにアイディアを盛り込み、クラッチの回転マスで圧着力を増やすロックアップクラッチ機構的構造を盛り込み、スプリングの張力に頼ることなく駆動力を伝えることで、クラッチの操作力も軽くなっている。もちろんスリッパー機能も付いているので、駆動系のスムーズさは場面を問わない。
さぁ結論だ! このバイクはボクの欲しいなリストに見事にヒット。このカテゴリーの中で新参者だったムルティが、総合的魅力で本命GSに見事肩を並べたように思う。なにより、リアビューミラーがチャント見えるドゥカティ、初めてです。こりゃ先行組は大変だ。正直そう思う。GSセグメントに謀反勃発?!というこの新型の誕生に、次なるライバル達のせめぎ合いにも期待したい。そんな小躍りしたくなるほど良くできたバイクとの出逢いだったのである。
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