■聖地崩壊。
立ち喰いそばよ、どこへ行く。
今年は鈴虫の声を聞く間もなく、猛暑から冬になってしまったような今日この頃ですが、今頃になって南太平洋には熱帯低気圧が2つも発生しているとか。
と、ちょっとだけコラムC-1ハラキュウ師匠の「仙人生活」を意識した書き出しでスタートしてみました。
異常気象が通常気象みたいな雰囲気になりつつある昨今、前回は「立会川 立ち喰いそば」とGoogle検索すると一番上に出た本コーナー。通常ではないですが、これはこれでちょっと嬉しいです(「立ち喰い」ではなく「立ち食い」で検索すると、もちろん箸にも棒にもかかりません)。
ちなみに「おかかめし い号作戦」でもトップでした。今月は「小穴 品川駅」あたりで検索するとトップかもしれません。
というように実用的にはなんの役にも立たないし、読んでおもしろいかといえば、それほどおもしろいわけでもないんですが、一部の小穴なマニア(小穴=コアな)の方から「このページを見ながら白米を食べるとおかずがいらない」と生温かい声援いただいております。ありがとうございます。
さてと、今月はホットかつショッキングで悲しいお話をしなくてはいけません。
だから、社会派ルポにありがちな、意味がありそうで実はなんのこっちゃ?的タイトルを付けてみました。
だって、どこへ行くったって、「かけそばすするくん」(JR中野駅にポスターがあるらしい)が泣きながら駅と反対の方向に走って行った話は聞いたことありません。
ゆえに、立ち喰いそばはどこにも行きません(行けません)。
存在し続けるか、それとも
幻立喰・ソになってしまうのか。
立ち食い道の選択肢は、ふたつにひとつ。
しょくぎょうせんたくのじゆうららら〜♫
と、いつものことながら、やっと本題。
このコーナーの第一回目にお伝えした立ち喰いそば屋さんが駅構内に7軒もあった(第1回目で掲載したように、東海道線ホームにあった1軒がなくなったので都合6軒なのですが、京浜急行の下りホームに「えきめんや」があったことをすっかり失念していたので、品川駅全体では7軒になります)立ち喰いそば銀座の品川駅からまたしても「幻立喰・ソ」の仲間が増えてしまいました。
そういえば、同じようなものが集まっている所を○○銀座(戸越銀座とかの具体的地名ではなく)といいますが、本物の銀座は何銀座なんでしょう?銀座○○丁目が集まってるから銀座銀座ですか?
また話が逸れました。
だって、悲しいんだもの(あいだみつを風に)。
まさかなくなるとは思っていなかった品川駅の立ち喰いそばの二大勢力(二社しかないけど。あっ三社か。また「えきめんや」を忘れていた)の本丸が……たとえて言えば、……あまりに悲しいので……実は例えが思い浮かばないのでパス1です。
首都圏の駅立ち喰いそばの覇権を握る日本レストランエンタープライズ(=NRE。駅弁や車内販売をしているJR東日本系列の大会社)が経営する「しながわそば」(いわゆる「あじさい茶屋」系)が10月13日に、その4日後、品川の老舗常磐軒の本丸「あずみ野」(JR東日本系列にも似たような「あずみ」という立ち喰いそば屋さんがありますが似て異なる別物)という品川駅立ち喰いそばの大本営が本丸が、GHQが、ほぼ時を同じく消滅してしまったのです。
JR東日本で乗降客数第6位の品川駅構内ですから、まさかお客さんが減って経営難ということはないでしょう。
この一角にあった、いつも盛っていた本屋さん、CD屋さん、カレー屋さん、回転すし屋さん、薬局なども続々閉店しています。まだパン屋さん、中華屋さん、洋食屋さん、飲み屋(こうして改めて並べると商店街か)は営業中(ですが、しながわそばに貼ってあった張り紙によれば閉店の理由は「工事支障のため」(つまり工事のじゃまだからどけ!)ちゅーことなので、品川駅商店街(ホントはちゃんと「ディラ品川」という名前が付いてます)が幻商店街になるのも時間の問題でしょうね。
通路を挟んだ向かい側で大繁盛していて、「これって脱税じゃネーのか?」と石原慎太郎東京都知事を激怒させている、おしゃれな駅ナカを拡大するんでしょうか?
駅ナカは婦女子をメインにしているおしゃれ&高級店指向なもんで、オッサンにはどうにも敷居が高い。例え駅ナカに立ち喰いそば屋さんが復活しても、間違いなくNRE系でしょう。けしてまずい訳でも、高いわけでも、入りにくいわけでもないんですがねぇ。
- バ☆ソ
末期のあずみ野は食券を買って、その食券を注文カウンターでもあり配膳カウンターでもあるカウンターの上に置いてあるぬれぞうきんの上に載せるシステムでした。
食券を置くいなや「いらっさぁませー。ソバれすかー、うろんれすかー?」というちょっとカタコトな店員さんが尋ねます。
確認と同時に、にこやかに(不機嫌なときもある。いや不機嫌なことのほうが多かったような気がする)すでにゆでてどんぶり入れてあるハードボイルド(=固めにゆでられた)そばに、どぼどぼとおつゆを入れて、ねぎはばさばさたっぷりとかけて渡してくれました。
どんぶり(時にはいなりやおにぎりも)を持って、先客の間をすり抜け空きスペースを見つけて滑り込みます。
おつゆのたっぶりしみこんだ狭い上に、開店から閉店まで、常に人がぎっちりのカウンターで小さくなってすするそばは、わーわー言う程はおいしいハズはない(=もちろんまずいわけでもない)のですが、気がつくと再び「ソバれすかー、うろんれすかー?」の前に立っているという、とてもリピート率の高い立ち喰いそばでした。
2006年末頃から豚バラ天、ゴボウ天、ちくわ磯辺天、小エビ天、さんま天などバリエーション豊富なかき揚げを2枚チョイスする貴族階級のW天ぷらそばが登場しました。
480円もしたので、ショーウインドのトランペットを見つめる黒人少年のように遠い存在でしたが、その年の誕生日に清水の舞台から飛び降りて、たった一度だけ食べました。「立ち喰いでそばで480円も使ってしまってよかったのだろうか」という最悪感でいっぱいになり、あわててかきこんで逃げるように店を出ました(ウソ)。なぜか味は覚えてません(ホント)。やはり身の丈にあった立ち喰いそばをぼそぼそすすっているのが一番です。
品川は駅構内だけではなく、港南口に「立ちそばふじ」「梅もと」(有名なチェーン店)「都」「明月庵」、高輪口には「高輪どんどん」と、駅のまん前に5軒も立ち喰いそば屋さんがありました。
つまり12軒もの立ち喰いそば屋さんがひしめく、一週間毎日違う立ち喰いそばでも、まだ食べきれない「ようこそここへ〜♫パラダイス立ち食い」なネバーランドだったのです。ふぉーっ!
ですが、「明月庵」は2006年秋頃、多国籍居酒屋になってしまい、その裏の「都そば」もいつの間にか消えていました。
高輪口駅前の京品ホテルに間借りしていた「高輪どんどん」は、例のハゲタカファンド騒動に巻き込まれ、幻立喰・ソの仲間入りをしてしまいました。
駅ソトで営業しているのはチェーン店の「梅もと」と夜は立ち飲み屋さんに変身するサラリーマンの牙城「立ちそばふじ」のみ。
昨今の不景気も影響してこのあたり昼時には移動弁当屋さんがわんさか集まり、旧海岸通りのパーキングメーターは屋台村状態になっています。安い早いの立ち喰いそばも、ビッグバンの時代を迎えているようです。
いつまでもあると思うな立ち喰いそばとミスター・バ……(!)ウソです!
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