Norton Commando Midashi 3

今回走らせたのは、ノートンが各種テスト用に使用したモデルで、すでに1万3000キロ近くを走行しているコマンド961スポーツだ。ノートン側の説明では基本的な違いはナニもないという。サウンドレベルの高いショートマフラーが装着されていた点で気分の高揚感は確かにアップしていたけど(笑)。

また操作感を向上させるチェンジペダル回りのプロトタイプパーツが装着されていたことをお断りしておく。

シート高813mm。リアサスにイニシャルが掛かっているのか意外と跨っただけでは沈む印象が少ない。やや高い印象だ。ただ、190kg(乾燥)を切る車重と細身のシートによって足つき性は悪くない。適度に後退したステップ、軽い前傾となるハンドルバーが造るポジションは適度なスポーティさをもたらせてくれる。最初、右足踝がブレーキマスターと干渉するのが気になったが、30分ほどで慣れてしまった。

Norton Commando

エンジンはパルス感とトルク感が実に心地よくブレンドされたもの。また、ルックスはビンテージ風だが中身は最新だから、クラッチの切れ、シフトのタッチやストローク、操作性も含め完成度は高い。

また、パワー感とトルク感がどの回転域でもリニア。しかもパーシャルから開け始めのドライバビリティがとても良く、高めのギアで緩やかにアクセルを開ける場合でも、低いギアで右手を大きく開けたときでもイメージ通りの駆動力を生み出してくれる。

このエンジンは、同じ270度クランクのヤマハTDMより全域でまろやか。特に2000回転+αから暴れることなく蹴り上げて行く加速は最高。トライアンフのスラクストンのエンジンよりも全体的にビート感、トルク感、パワー感とも厚目だ。そんな意味で過去乗った270度クランクの並列ツインでは一番スイートな仕上がりだった。もちろん、ドニントンの回りの道と一部高速道路を走った印象だが、気分屋のバイク乗りの精神構造を知り尽くした特性だ。推進力の原動力、というつまらない物ではなく、心が喜ぶ原動力という感じだ。

しかも回転上昇とともにトルクの波に押されるような加速感は本当に楽しい。ドニントン周辺の田舎道を流す、あるいは流すより少し飛ばすぐらいのペース(といっても80km/hから120km/h)がとても楽しい。ステップに軽く荷重しながら左右に切り返す場面など、このバイクが持つ楽しさの真骨頂。

シャーシのレスポンスは、細身のタイヤを履くSRやW650的にリーンウイズのままヒラリと走る、というものではない。ワイドラジアルのバイクらしく、ライダーがステップなり身体なりで明確なアクションを与える必要はある。でも、その僅かなアクションを見逃さないコマンド961は、乗れば乗るほど心が通うバイクだった。

流すようなワインディングでは前後にオーリンズを履く足が良い仕事をする。低速域ではコツコツとやや硬い、と思わせたリアサスも50km/hを越すと滑らかになり、並列ツインが生み出すパワーを見事に路面に伝えている。

Norton Commando

攻めれば持ち前の軽い車体を利してライディングファンを堪能できる。フェアリングを外したスーパースポーツ的なストリートファイターほどキュンとは曲がらないが、エンジンが生み出す生命感と実に寄り添うように旋回していく。攻めてみても、深いバンク角で安定感が良く(さすがワイドラジアル)、旋回中にパワーを掛けても弱アンダーの旋回性でコーナーを切り取っていく。ルックスからイメージされる古さは何処にもない。30分ぐらいクローズドエリアで全開走行も試みたいが、深いバンク角からキャンバー変化のある路面を通過し、加速していくような場面でも、接地感は充実している。旋回初期からフルバンク時、脱出加速時でも旋回量は安定していて夢中になれるタイプだ。

そんな場面でもブレーキがタレることもなく、タッチ、制動感もリニア。80BHPのパワーをぶつけるのに足る信頼性を持ったバイクである。濡れたアスファルトの上でも操作性は満足のいくもの。スポーツライディングでフルブレーキングを試みると、フロントフォークがゆったりとした動きで減速Gを受け止め、その安心感が大きい。オーリンズのサスを見事な味付けで装着している。ブレーキを軽く引きずりながら旋回を開始し、クリッピングまで不安なくその状態を維持できる。今の乗り方で走れるのだ。OEMで装着されるダンロップクオリファイヤーも満足できるハンドリングとグリップ感を提供してくれた。

限られた時間だが限定車のコマンド961SEにも乗るチャンスがあった。こちらはまだ硬さが残る新車で、音もスタンダードの静かなもの。唯一確実に感じられたのは、カーボンホイールがもたらすハンドリングの軽さ。それは低速から60マイルぐらいまで全体にそう感じられた。ホイールの慣性マスが少ないせいか、慣らしの終わっていない出荷状態のフロントフォークだと、少し荒れた路面でダンパーが強すぎるようなやや硬い印象すらあった。これ全体が馴染んだらどうなるんだろう? と期待が膨らむ乗り味だった。

この961SEは世界で200台。オーナーにならなければその先の成長は解らない。実はこれこそ、新生ノートンが仕掛けた未来のオーナーへのダイレクトメールなのかもしれない。

でもナゼ、今ノートンは復活したのか。そのビハインドストーリーはまたあらためて報告したい。

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