TMAX530試乗

TMAXを簡単な言葉で言い表すならば、“ワインディングを攻めても楽しいスクーター”である。

便利に使えるスクーターと高いスポーツ性能という、水と油のように交わらないと思われてきたものを融合させて、2001年に登場してからずっと国産スクーターの中では類い稀な存在であり続けた。

乗ったことがない人の中には「そんなこと言っても所詮スクーターでしょ、大したことはない」と軽く見ていることがある。ボクも恥ずかしながら最初はそう思った。「百聞は一見に如かず」とはよく言ったもので、ワインディングで初めて乗ってみて、既存のスクーターを大きく上回ったポテンシャルの高さと走る楽しさに驚いたものだ。

TMAX530試乗
TMAX530試乗
こちら上下写真は、ウルトラショートスクリーンやローダウンサスキットなど、カスタマイズパーツを装備した“ワイズギア TMAX530”。
TMAX530試乗

そのTMAXのフルモデルチェンジした最新モデルに乗れる、それも試乗はサーキット。ということで、革ツナギをバッグに詰め込んで、意気込んで現地に向かったが、あめ、小雨、大雨、豪雨。到着した袖ヶ浦フォレストレースウェイのコース上は、いたるところに川、というか場所によっては池のような状態だった……。

4代目(車体も含めた変遷で数えると3代目)となる新型のエッジの効いたデザインは、それまでより精悍さを増して、特に小顔に見えるフロントマスクから、全体的にキュっと塊感が強まった。

身長170cmが跨って、シート前方のいちばん細いところに座っても両足のつま先が着くのがやっと。一般的なスクーターだったら「足つきをもう少し良くして欲しい」と書くところだけど、TMAXだとそれが許せてしまう。これまでと同じトランクスペースを確保しつつ、運動性にこだわった15インチホイール、サスペンションストローク、2気筒エンジンが股下にあるのだから、と考えると気にならなくなる。

人間とはそういうものだ。「足つき性」と「楽しい走り」のどちらかを取るとなると後者だ。

事実として、今回から国内モデルではなく、プレストコーポレーションによる輸入車の扱いだから、メイン市場である欧州ライダーの平均身長ならまったく問題ないのだろう。

DOHC4バルブ2気筒エンジンは、ボアを大きくして499cc→530ccになっている。試乗前に新作CVTベルト、クラッチサイズUP、ポンピングロスの低減など説明を受けたが、何よりもこの排気量増大が目玉である。それは発進してすぐに分かった。前モデルより確実に力強くなっている。コース上の川や池を避けながら、加減速を意図的に頻繁に繰り返してみても全体でパワフル。どの回転数からでも開ければ車体を前に押し出す。フィーリンはよどみがなく、スロットル開閉に対しダイレクト。いわゆるどこからでも力がついてくる感じ。ワインディングのみならず、使う速度域が広い街乗りで間違いなくゆとりが生まれる。加速に対してのまどろっこしさが小さくなった。

軽量ホイールの採用。特に後輪はスイングアームやなんやかんやでバネ下を3.5㎏もの軽量化。全体でみても排気量を増やしながら5kg軽くなっている。何度も悪態をつくようで申し訳ないが、ヘビーウェットだからして、低μ路面で思い切って攻めてみるなんてことは出来ない。性能を体感できることは限られていたが、150km/h以上の速度から、試乗車はABSモデルではなかったので気をつけながらのハードブレーキングで、ハンドルを含め車体にヤワなとことはなく、終始カチっとした剛性感が印象に残った。見た時に感じたキュッと締まった塊感を走っても感じられた。スラロームやレーンチェンジのような動きをしてみても、その印象は変わらず。

横断する川に向かってスロットルを開けながら突っ込んだところでハンドルが大きく振られたりするような不安定さを見せず。小心であまり速度を乗せられないコーナーリング中も旋回は安定していて、ヒヤっとする場面に遭遇しなかった。前後タイヤのグリップ状態を伝える能力は他スクーターより一枚も二枚も上。

せっかくだから、もう一度晴れた温かい日に思いっきり走りたい、と思わせるスクーターはそうはない。

こぼれ話として、乗り始めは小ぶりだったのでカッパを着ずに乗った。ところが走りだしてすぐに雨がやや多めに落ちてきた。試乗時間を終えてピットに戻ると、ジーンズにはポツ、ポツと斑点が付いているだけですんでいる。そんなところで「スクーターなんだなぁ」と感じた。

(試乗・文:濱矢文夫)

Block01 Midashi
■TMAX530〈ABS〉主要諸元■
●全長×全幅×全高:2,200×775×1,420(Low)~1,475(High)mm、ホイールベース:1,580mm、最低地上高:125mm、シート高:800mm、最小回転半径:-m、車両重量:217kg〈ABSは221kg〉、燃料タンク容量:15L●水冷4ストローク並列2気筒DOHC4バルブ、排気量:530cc、ボア×ストローク:68.0×73.0mm、圧縮比:10.9:1、燃料供給装置:F.I.、点火方式:T.C.I.(デジタル)式、始動方式:セル式、潤滑方式:ドライサンプ、最高出力:34.2kW(46.5PS)/6,750rpm、最大トルク:52.3N・m(5.3kgf・m)/5,250rpm●変速機構:Vベルト無段階自動変速、変速比:2.041(Low)~0.758(Top)、一次減速比:1.000、二次減速比:6.034●フレーム形式:ダイヤモンド、サスペンション前:テレスコピック、ホイールトラベル120mm、後:スイングアーム、ホイールトラベル116mm、キャスター/トレール:-°/-mm、ブレーキ:前・油圧式デュアルディスク、後・油圧式シングルディスク、タイヤ:前・120/70R-15M/C、後・160/60R-15M/C
●価格:997,500円〈ABSは1,050,000円〉※南アフリカ仕様
Block01 Midashi
<※以下プレストコーポレーションサイトより>

Multi purpose Sports commuterの称号を引っさげ日本上陸、
新たな歴史を刻むTMAX530。



2000年秋に発表され、1日数百kmの移動も珍しくない欧州に於いて、快適性ばかりでなく従来のスクータータイプの概念を覆す高いスポーツ性能から大きな反響を生んだTMAX。
そのTMAXの新たな進化を遂げた3代目となる「TMAX530」が、いよいよ日本に上陸する。

■530ccの排気量を持つ、新CVTエンジン


 水平に配置された並列2気筒、ピストンバランサーを持つ独自のエンジンレイアウトを継承しつつ、新たな進化と熟成を遂げた。
 排気量はこれまでの499ccからポア・ストローク68×73mmの530ccに約6%アップとなり、これまでより1,000rpm以上低い回転でトルク、出力とも10%以上の性能を発揮。
 バルブリセスなど新設計の軽量アルミ鍛造ピストンと吸気側26mm、排気側22mmの4バルブ構成でスキッシュエリアの最適化を図った新形状のペントルーフ型燃焼室、新しいカムプロフィールにより、燃焼トルクを効果的に絞り出している。
 TMAXのユニークな往復ピストンバランサーは、新たに軽量なアルミ製スリーブを採用。さらにバランサーピストンには孔を設けることでポンピングによる馬力ロスを大幅に低減している。
 エンジンとともに一層の進化を遂げているのが新設計CVTシステム。開発ポイントはエンジントルクの立ち上がりと変速特性相互のマッチングで、1次と2次シーブの材質と表面処理、ベルトの特性と材質、ベルトの負荷を低減するベルト室冷却システム、変速レシオなど全てを一新。
 幅の広がったトルクレンジを効率よく駆動力に活かすよう変速特性の最適化を図り、ゼロ発進加速と実用走行域(40〜90Km/h域での定速走行)からの追い越しでは、飛躍的な加速特性を引き出している。
 また湿式クラッチもトルクとパワーの厚みを増した新エンジンに合わせて容量アップする一方、プライマリーシーブ、クランクシャフト、ウェップ、ACMなどによるクランク慣性マスは現行とほぼ同様に設定している。
 ほかにも吸気から排気の全行程にわたり新スペックのエンジンに適合させるべく各部の設計を一新。
 スロットルポア径を34mmに、エキゾーストパイプ長を延長、サイレンサーの仕様変更、インテークマニホールドをヤマハ初となる樹脂製として軽量化、クランクケース内部壁面に孔を設けるなど圧縮による馬力ロスを低減など細部に至るまで最適化と軽量化が進められ、F.I.セッティングとの相乗効果で優れたドライバビリティとまろやかな走行性を引き出している。

■熟成と革新を織り交ぜた車体廻り


 キャスター、トレール等ハンドリング特性のベースとなるディメンションと、前後サスペンションのストローク等のアライメントは従来モデルと同スペックとし、持ち味のスポーティな走行性を継承。
 その上でアルミCFダイキャスト製法のアルミ材とアルミ押し出し材を組み合わせフレームは、現行ユニットを継承しつつ530ccCVTの特徴を効果的に引き出すため剛性バランスを最適化。エンジン懸架部とラジエターを懸架するスチール製クロスメンバーの肉厚と締め付け剛性を見直している。
 またスポーツ感溢れるハンドリングと躍動的な外観を実現するため、左右別体アルミダイキャスト製スイングアームを採用。従来の2段掛けチェーン内蔵アームと比較して約4kgとの飛躍的な軽量化となって、約1%の前輪分布荷重アップにも貢献。
 幅広い走行環境に対して狙ったラインをトレースしやすい走行性能と軽さと落ち着きをバランスさせたハンドリングにも大きく貢献している。
 なおアームエンド部のチェーンテンショナーは、スーパースポーツと同構造として剛性バランスを最適化、シャフトを支えるカラーにもアルミを採用している。
 2次駆動にはダイレクト感をさらに引き出すため、市販コミューターとしては初装備であるベルトドライブ方式を新たに採用した。
 たわみ量(遊び)の殆どないベルトドライブ駆動は、スロットル操作に対しリニアに駆動力を引き出すことができるので、より高いマン・マシン一体の走行フィーリングに貢献している。ベルト素材には張力・弾性特性・対衝撃性、耐蝕性に優れた軽量アラミド系繊維を用いて、新スイングアームとともにバネ下重量低減とマス集中化にも貢献している。
 ブレーキシステムは優れた制動力とともに制動時の優れた操作フィーリングを実現するため、フロントにはダブルディスクにモノブロック4ポットキャリパーの組み合わせ、そしてリヤには大径282mmディスクローターに整備性の良いピンスライド式油圧シングルポットキャリパーを組み合わせた。
 またリヤブレーキとは別系統でリヤブレーキロックとしてメカニカルな印象をもつデザインの機械式1ポットキャリパーを設定している。
TMAX530試乗
カラーは4色。ブルーイッシュホワイトカクテル1(BWC1)。
TMAX530試乗
カラーは4色。ブラックメタリックX(SMX)。
TMAX530試乗
カラーは4色。ハイテックシルバー(HTS)。
TMAX530試乗
カラーは4色。マットダークグレーメタリック1(MDNM1)。

■TMAXのデザインアイデンティティ


 前後に走るブーメラン形のサイドカウル形状はTMAXの象徴だ。TMAX530ではベルトドライブケースの形状をブーメランの後方ラインをなぞる造形としたり、くびれ形状を織り込んだフロントカウル、車体全体のコンパクト感や凝縮感を強調するリヤ廻りなど、ブーメランイメージを一層主張させる造形を推し進めている。
 車体フロント部では、取り付けボルト位置の変更により、好みに応じて50mm幅で2種から高さ選択可能な新設計スクリーンを採用。外殻形状とスラント角を最適設計し、フェアリングとの間のダクト部には整流板を設けて、風の巻き込みの少ない優れたエアロダイナミクス効果を引出した。
 これによりミニマムなスクリーンとしながらも、CdA(空気抵抗係数)値は従来モデルと同レベルを確保。走行中の風切り音を抑え、快適な居住空間を作り出している。
 シャープな「表情」もTMAX530の魅力の一つ。メカニカル感溢れる精悍な切れ長の2眼のヘッドライトにはムラが少なく配光性能を備えるプロジェクターヘッドライトを採用。コンパクトなプロジェクター構造による設計自由度を活かし、レンズ内部上下にサブリフレクターを配することで照射率の効率化を図った。
 カウルサイドのフラッシャーも新たなフロント造形に合わせ、左右のレンズがフロントタイヤを掴む鷹の爪をイメージした新デザインである。
 カウルの内側には奥行き感と立体感溢れる左右対称の多角形メーターパネルが配される。左右にスピードメーターとレブカウンター、中央にはオドメーター、フューエルゲージ、水温計、燃費計などを表示する液晶のマルチファンクションメーターがレイアウトされたコクピットは、高い視認性と操作性を生み出している。
 またバックミラーは、ミラー面/裏面形状、ステー形状などトータルに開発、乱気流の影響を低減し共鳴も最小限に抑えつつ、視認性、質感、スポーティ感を調和させた新形状としている。
 このほかLEDのテールライト、アルミ鍛造のサイドスタンド、新デザインの5本スポークホイールなど、TMAXのアイデンティティを継承しながら全てに於いて一段高みに昇るデザインとして昇華させている。

<※以上プレストコーポレーションWEBサイトより>

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