明けましておめでとうございます。皆さんいいお正月を過ごせましたでしょうか?
バイクに乗って初詣でに行った、なんていう人もきっと多いことでしょう。
WEB上に誌面を移してから、不定期での掲載となっていましたこのコーナーですが、
今年からはしっかりと定期的に連載できるように頑張りますので、
ご愛顧のほど、よろしくお願いします。(2011.1.7更新)
それでは今年最初の、バイクの事故を紹介しましょう。
正月休みも終わり、街に日常が戻ってきた、ある平日の昼下がり。フュージョンに乗った大学生が、アルバイト先のファミレスへと向かっています。
バイクには16歳で免許を取ってすぐに乗り出したので、運転自体は慣れたもの。ただ、この日は、かつてないほど慌てていました。
実はこの日、新人に仕事を教えるため、いつもより1時間早くバイトに行かなくてはならなかったのです。
午後一番の授業を終えて、すぐに向かえば余裕を持って到着したはずなのですが、すっかり忘れて、年末年始の積もる話で友人と盛り上がってしまいました。
話の途中にふと思い出したから良かったものの、大学を出たのはギリギリ。
「やっべー! すっかり忘れてた! 急がなきゃ!」
通い慣れたいつもの道を、いつもよりアクセルを多めに開けて、先を急いでいたのです。
片側一車線のその道は、対向車線は渋滞しているものの、運良く彼の行く方向は空いていて、無理をすれば何とか間に合いそうでした。
「よっしゃ行ける!」と気合いを入れ直し、アクセルを握る右手に力が入り直した矢先、前を走るミニバンに追いついてしまったのです。
「おっそい! ジャマくせえ! こっちは急いでんだよ! 空いてんだからもっと速く走ってくれよ! じゃなきゃ譲ってくれ!」
急ぐバイクが追いついてきたことを未だ知らないミニバン。
乗っているのは内装工事の会社に勤めるインテリアデザイナーさん。この日は2月に新装オープンする洋服屋さんに店舗の寸法を測りに行くところです。
オーナーさんも交えての採寸作業なので、もちろん時間に遅れる訳にはいきません。
採寸と同時にイメージの最終確認もするため、壁紙や什器などのカタログ、色見本など、荷物もたくさん持ってきました。
最寄りの駐車場からの移動も大変ですから、それも見越して、こちらは充分余裕を持って出発してきています。
「来月オープンだから、デザインと設計を早めに仕上げないと工事が遅れるなー。凝った作りにしたいって言ってたけど、大丈夫かな?」
仕事のことを考えつつ、空いた道を急ぐでもなく、法定速度で走っていたのです。
目的地である洋服屋さんまであと5分というところで、後ろでボルボルボルと排気音がすることに気付きました。
ルームミラーを見ると、バイクが車線を右から左へウロチョロして、明らかに煽ってきています。
「こっちを抜きたいのは分るけど、対向車線は渋滞してるし、この道幅じゃ抜くのは無理だろ。もうすぐ曲がるから、大人しく後ろにいてくれよ――。おっとアソコを左折だ」
煽ってくるバイクをうっとうしく感じながら、左にウインカーを出し減速しました。
ただ、左折した先の道は狭いため、車線の中央や左側からは曲がりきれません。内輪差を考えて若干右側にクルマを振りながら、左折しようとしたのです。
一方のバイク側。
車線の右から左からチャンスを窺ったものの、追い越すことは出来なさそう。
追いついてから1分も経っていないのに、イライラは最高潮。頭に血が上って周りの状況など見えなくなっていました。
イライラが爆発しそうになったその時、ミニバンが速度をゆるめながら車線の右側に寄って、左側が空いたのです。
「ようやく譲る気になったか!」。毒づきながらバイクを左に振り、アクセルを一捻りしたその瞬間! 譲ってくれたと思ったクルマに進路をふさがれたのです! もちろんブレーキがかけられるはずもありません。
「ゲッッ左折!?」と思った瞬間には心臓が口から飛び出しながらクルマの左側に追突、転倒してしまったのです。
お互い速度が出ていなかったとはいえ、走行していたバイクの速度がいきなりゼロになり、クルマにぶつかってしまったのですから、その衝撃は強烈です。
大学生は全身打撲に加えてムチウチ、右腕と右鎖骨、左足首が折れるという、全治3ヶ月の重傷を負ってしまいました。
もちろん、車両側もタダでは済みません。
クルマは左側がフェンダーからドアにかけてべっこりと凹み、バイクの方はカウルがグシャグシャ、フロントフォークもグニャリと曲がって全損状態です。