(ミスター・バイク 2010.5月号掲載)

まんが

それでは今月の事故を紹介しましょう。

桜が咲き誇って春爛漫。年度も改まり、街には新しい息吹が感じられる、すがすがしいある平日の朝。PS250に乗った若者が、住宅街を抜ける、片側一車線の道路を走っていました。

日本料理の料理人を目指し、高校卒業と同時に都会に出て修行の道に入って数年。皿洗いと単純な仕込み作業から始まった修行も、包丁を使ったものに変わり、この春からは賄いを作るローテーションにも入りました。

雲の上の存在である板長も含め、味にうるさい人たちの賄い料理を作るのですから、プレッシャーがかかる仕事です。

しかし、自分の料理を食べて評価してもらう絶好のチャンスでもあり、自分がステップアップしている証拠でもあるので、これまでより更にやる気も上昇。これまでより一層仕事に身が入るようになりました。

彼が働く店では、賄い担当は店からお金を渡され、その予算の範囲内で仕入れも自分ですることになっています。

通常のお客用の料理の仕入れには、勉強を兼ねた使い走りとしてしか行けませんから、料理内容と材料選び、値段の交渉まで任されることはいい経験になるのです。

この日は初めての当番日とあって、前日から大張り切り。先輩とも相談して、納得のいく献立も出来あがりましたし、市場でも予想以上にいい仕入れができました。

16歳で免許を取ってすぐに購入した、愛車のPS250に食材を詰め込んだ箱を括りつけ、ニコニコしながら店へと向かっています。

「やっぱりコイツは便利だよなー。荷物満載でツーリングに行けるし、バーベキュー道具だって載るし、今日みたいな仕入れにもバッチリだし、男の道具って感じがいいよな、うん。何で生産終了しちゃったんだろ?」

などと取り留めもないことを考えつつ、車道の左側をのんびりゆっくりとバイクを走らせていました。