V-RODの10周年記念モデルを除けば2012年モデル中唯一のニューモデルと言えるのがダイナ・ファミリーに加わった“コンバーチブル・モデル”FLD Switchbackだ。
ダイナのスポーツ性と積載性、ツーリング快適性を両立させるモデルで、サドルバッグとウインドシールドが簡単に取り外せるようになっている。
この他ダイナ・ファミリー共通の“熟成ポイント”は、まずは従来のソフテイル同様、BCM(Body Control Module)が採用されたこと。クルマでは積極的に進められている電装系のスリムアップに貢献するシステムで、多くのヒューズやリレー、ワイヤゲージ、ハーネスの量を削減可能となった。ライティング機能、セキュリティシステムをはじめ、転倒時の点火カット機能、クラッチ/ニュートラルインターロックなどもBCMに統合している。
ツーリング・ファミリーでは昨年実施したO2センサーの小型化およびヒーテッドO2センサーの採用をダイナ・ファミリーでも行うことで、エキゾースト系の見た目の違和感を少なくするとともに、O2センサーの初動時間の短縮と性能向上を図っている。
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■DYNA FLD 主要諸元■
全長2,360mm×全幅930mm×全高1,385mm、軸距1,595mm、最低地上高110mm、シート高663mm、車両重量330kg、乗車定員2人
エンジン型式・種類:GZ4・空冷4ストロークV型2気筒OHV、総排気量1,584cm3、内径95.3mm×行程111.1mm、圧縮比9.2、最高出力-kW/-rpm、最大トルク116N・m/3,500rpm、燃料供給装置形式:燃料噴射装置、始動方式:セルフ式、燃料タンク容量17.8L、変速機形式:常時噛合式6段リターン、タイヤサイズ:前130/70B18、後160/70B17、ブレーキ形式:前・油圧式シングルディスク、後・油圧式シングルディスク、懸架方式:前・テレスコピック式、後・スイングアーム式。
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サドルバッグにウインドシールド、足元はフットボード。ダイナをベースにツーリングファミリーの要素を加えている。「ツーリングが大好きだけど、ツーリングファミリーでは大きすぎるんだよな?」と思っている人にぴったりくる。ちょっとそこまでのお出かけにも気軽に使えて、本気の旅もこなせる便利な装備と快適な乗り心地。ダイナファミリーに新しく加わることになったFLDは、とても判りやすいコンセプトだ。
実際に乗ってみて、それを実感した。フロントは18インチ、リアには17インチを採用したホイールサイズで、小さく方向を変えるのが苦にならない機敏さを持っている。狭い場所でのUターンも気にならない。シートが低い(加重時663mm)から慣れない人でも心理的に助かるだろう。特にフロント18インチというのが効いていると思う。いろんなシチュエーションが存在する一般道での走破性を維持しながら、21インチや19インチより動きが軽く、小回りができるサイズ。
クロームのカバーが付いたリアショックと、フロントフォークの左側にカートリッジ式を採用した前後サスペンションは、ダイナ特有のちょっとスキップするような乗り味が良い意味で抑えられていて穏やか。装備などで他のダイナより重いのもポジティブに働いているのかもしれない。でも、だからといってソフテイルのように初期加重からしっとりしているのとは違う。あくまでも後ろ2本ショックのダイナらしさは残る。
狭い面積で足を支える通常のペグより広く、足の自由度があるフットボードは、乗車時間が長くなるほど楽になる。シフトレバーはトゥとヒールを使うシーソー式ではなく、一般的なバイクと同じつま先だけのシフト。けれどシフトレバーはびよ~んと足を伸ばさなくても届く位置なので気にならなかった。これに低いシートとステンレス製ミニエイプハンガーハンドルで構成されるポジションは、まったく無理のない自然な姿勢でいられる。
FLDのハイライトは、サドルバッグとウインドシールドが工具無しで簡単に外せることだ。だから街乗りや近場では外しておいて、いざ旅に行かんとする時に取り付ける、という使い方が出来る。なんと素晴らしいユーティリティープレイヤーっぷり。「ひと粒で二度おいしい」とはまさにこのこと。
背中を丸め構えて乗るようなワイルドな雰囲気は薄いけれど、走り、価格、快適性、利便性のバランスが良く、バイクとして日本の道にぴったりなモデルだと感じた。毎日乗りたい人にオススメ。'90年代にあったFXDSダイナコンバーチブルの現代版かな。
<試乗:濱矢文夫>
- Harley-Davidson2012年イヤーモデルのニューフェイス、DYNAシリーズに加わった“コンバーチブル”モデル。FLD Switchback。デタッチャブルサドルバッグとデタッチャブルウインドシールドを装備。簡単にスポーツモデルとツーリングを使い分けられるというもの。2,028,000円。
早いものでV-RODが衝撃的なデビューを飾って以来すでに10年が経ってしまった。
未だにハーレー・ファンには賛否の両極があるようだが、10年の節目を迎えたということは、肯定的な意見の方が遙かに多いということだろう。それはともかく、V-ROD 10th Anniversary Edition VRSCDX ANVモデルの登場だ。10周年を記念するアニバーサリーグラフィックの採用と右側エンジンカバー部にアニバーサリーエンブレムが装着された。
実は2012年モデルの最大のトピックはこのV-RODファミリーなのかもしれない。というのは、ファミリー名が従来のVRSCファミリーからV-RODファミリーに変更されているのだが、そればかりではなく、アニバーサリーモデルとともに、V-RODファミリーを構成するVRSCDX Night Rod Specialでは、ライディングポジションの大幅な見直しが行われ、日本人にも乗りやすいポジションに生まれ変わったのだ。
リデュースリーチハンドルバーにより従来より3インチ(約76mm)ハンドル位置が手前に、リデュースリーチフットコントロールにより1インチ(約25mm)フットコントロール位置が手前に近づけられたのだ。新デザインのシート採用もポジション改善に役立っている。
また、両モデルともフラッシュサーフェスの新型LEDテールライト、新デザインの軽量(約1,400gの軽量化を達成)アルミニウムキャストホイールが採用された。VRSCF V-ROD Muscleのみは従来通りのスタイルを継承して販売される。
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■V-ROD VRSCDX ANV 主要諸元■
全長2,440mm×全幅890mm×全高1,065mm、軸距1,705mm、最低地上高115mm、シート高650mm、車両重量307kg、乗車定員2人
エンジン型式・種類:HHH・水冷4ストロークV型2気筒DOHC、総排気量1,246cm3、内径105.0mm×行程72.0mm、圧縮比11.5、最高出力-kW/-rpm、最大トルク105N・m/7,000rpm、燃料供給装置形式:燃料噴射装置、始動方式:セルフ式、燃料タンク容量18.9L、変速機形式:常時噛合式5段リターン、タイヤサイズ:前120/70ZR19、後240/40R18、ブレーキ形式:前・油圧式ダブルディスク、後・油圧式シングルディスク、懸架方式:前・テレスコピック式、後・スイングアーム式。
- こちらの動画が見られない方はYOUTUBEのサイトhttp://youtu.be/JY6GV_3G0W0で直接ご覧ください。
V-ROD誕生10周年記念モデル、VRSCDX 10th Anniversary Editionには、個人的にはこれまでの価値観を変える大きな変更があった。見た目は、アニバーサリーのグラフィックと軽量なキャストホイール、LEDランプを内包したテール周りでスッキリとした新しいルックスになっている。だが核心はそこにはない。
なんと────ハンドルバーが3インチ(約76mm)、ステップの位置が1インチ(約25mm)手前になったのだ!!
身長170cmという、たいして大きくもない私だと、これまでV-RODでは腕と足が前方に伸びきっていた。身体を真横から見ると、モジモジくんに出てくるみたいに大きく「C」の字を描いてしまう。それでパワフルな水冷エンジンに活を入れて走ると、一般的なモデルとは違う乗り味のこのバイクに掴まっているのが精一杯で、バイクに乗せられているような感じだった。ポジションが厳しくて積極的なコントロールをするところまでいけなかった。
V-ROD 10th ANVはハンドルグリップへ普通に手が届いて、何より積極的にステップが踏める。ステップ加重による車体のコントロールが出来るようになったのである。背の大きい人には関係のない話になるけど……。
過去にはミッドコントロールのVRSCD Night Rodもあった。これはビキニカウル付でポジションを含めスポーツ色が強かった。今度は、足を前に出したゆったりポジションのスタイルを維持しながら操作がしやすくなったところに意義がある。
些細だがとても大きなこの変化のおかげで、今までとはまったく別のバイクのように感じた。走りを積極的に楽しめる。
エンジンはスムーズでフラットにトルクが出てスポーツモデルのよう。1速のまま、スロットルの操作だけで低回転、高回転と変化させ走っても、ギクシャクしたところがない。
リアタイヤの太さと形状により、車体の立ちが強いので、コーナー入り口では積極的にスロットルを閉じた方がバイクは寝て向きが変わりやすい。開けたらすぐに車体が起きあがるので、向きが完全に変わってからスロットルONがベター。そこからドーンと加速。ちょっとクセはあるけれど、慣れてくるとこの特性を利用して走るのがとても楽しい。
乗ってV-RODの個性と面白さがより判った。多くの人が味わえるようになったこの変更は断然正解だと思う。ちなみに2012年モデルではVRSCDX Night Rod Specialもこれと同じく操作系が近くなっている。
<試乗:濱矢文夫>
- V-ROD登場10周年を記念したアニバーサリーエディション。VRSCDX ANV。2,241,000円。ファミリー名も従来からのVRSCファミリーから分かりやすいV-RODファミリーに変更されている。2012年モデルのV-RODファミリーはこの10周年アニバーサリーモデルを含めて3モデル。
日本仕様は全て“TWIN CAM96B”エンジンが搭載されるSOFTAILファミリーではDYNAファミリーと共通のハンドコントロールスイッチの変更により、パッシングが簡単に操作できるようになった。
FLSTF Fat Boy、FLSTFB Fat Boy Loに共通の新デザインハンドルバー、シート、タンクストラップが採用された。ヒーテッドO2センサーの採用およびO2センサーの小型化もDYNAファミリーと同様だ。ビッグツインモデル共通の新設計コンペンセータースプロケットの採用も行われている。ちなみにFLSTSB、FXST、FXCWCは2011年モデルで終了となった。
2012年モデルで一番変更の少ないのはSPORTSTERファミリーだ。その数少ない変更点のひとつがサイドカバーとタンク/フェンダーの塗装仕上げとのカラーマッチングで、タンク/フェンダーがデニム塗装仕上げの場合はデニムブラック、クリア仕上げのものはグロスブラックになった。
二つめは全モデルにミシュランのスコーチャー“31”タイヤが採用されるようになった。そしてXL1200X Forty-Eightのタンクグラフィックが変更され、XL883Rのハンドル周りがXL883N/LやXL1200Nで採用されているワンピースハンドルバー、スピードメーターブラケットに変更された。
2012年モデルのTOURINGファミリーは全モデル“TWIN CAM103”1,689cm3エンジンが搭載される。また、ACR(Automatic Compression Release)が採用され、セルモーターやバッテリーに対する負担軽減が図られるようになった。要するにデンコンプ装置だ。ECMにより自動で開閉がコントロールされるのでライダーが気がつかないうちに作動する。
ビッグツインモデル共通の新設計コンペンセータースプロケットも採用されて発進時や始動時のパワートレーンノイズや振動が軽減されている。
この他のトピックとしてはFLTRU103 Road Glide Ultraではフロントフェアリングにウインドディフレクター機能が採用され、フェアリング下部からの巻き込み風を軽減している。
ファクトリー・カスタムのCVO(Custom Vehicle Operation)は4モデル。
FLHTCUSE7 CVO Ultra Classic Electra Glide、FLHXSE3 CVO Street Glide、FLTRXSE CVO Road Glide Custom、FLSTSE3 CVO Softail Convertibleの全モデルにスクリーミングイーグルTWIN CAM110(B)1,801cm3エンジンを搭載。Road Tech zumo660や8GB iPOD nano付属モデルが設定されるのも2012年モデルの特徴だ。
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CVO Familyは全4モデル。
FLHTCUSE7 CVO Ultra Classic Electra Glide。4,280,000円。オリジナルカスタムペイント、デュアルコントロールヒーテッドシート、チゼルクロームローター、8GB iPOD nano&インターフェイス、接続ドック、ホルダー等を装備。(※写真の上でクリックすると大きな画像が見られます)
- FLHXSE3 CVO Street Glide。3,800,000円。2ピースロープロファイルカスタムシート、コンソールインサートブラックリッドCVOエンブレム、ロワードハンドアジャスタブル油圧リアサスペンション、19インチクロームフロントホイールなどを装備。