森屋:「僕はもしかしたら250というのはひとつのトップカテゴリーになるんじゃないかと考えてます。
自動車とあまり変わらない値段のオートバイをおいそれと買える人ばかりじゃないですからね。
かといって、コストを削って価格を押さえた質素なオートバイでいいのかというと、そうではないでしょ。
“趣味”としてオートバイに乗るのですからこだわりを持って乗れる物にしないとだめだと」
濱松:「こういう考え方もあるんじゃないでしょうか。
どの部分をみても『優等生』。今までの日本製オートバイはこれに近いものだと思います。
でも外国製オートバイには、ある部分は120点ですごくいいけど、30点のところもある。おしなべるとそっちの方が魅力的だったりもします。
今回はそういう割り切りをしたんです。
でも全ての機能を後回しにした訳でなく、女性ユーザーをターゲットにしたためにグリップを握りやすくするためにφ35mmから31mmとこれ以上は出来ないというところまで細くして、さらに親指と人差し指が当たる部分をテーパーかけてえぐっています」
森屋:「シートも小柄な人にも対応できるような形状にして、着座位置を前進させてステップまでの距離とハンドルバーまでの距離を小さくしました。
女性に跨ってもらうと『いいねこれ』という意見が多かったですよ。手足が突っ張らないから乗車姿勢もカッコイイ。日本の風景にあうスタイルと乗りやすさを追求しましたから」
スタイルを優先したからといって手を抜いてはいけないところはきっちりやっている。そこは純正パーツとして抜かりがない。
濱松:「アクセサリーを開発するには厳しいヤマハの社内基準をクリアしないといけません。耐久性に関しては車体より先にアクセサリーがダメになるということはまったくないですね。そういうところはちゃんとヤマハクォリティなんです」
新しい車両が発売されたことに対して、純正で取り付けられる用品を提案してきたY’Sギアとして、今回のように全ての部品をトータルで組み込んだコンプリートとも言える状態で販売するということはまったくの初めて。
ヤマハ製のオートバイに既に乗っている人を対象にした商品展開だけでなく、オートバイをこれから選ぶ人にアピールするもの。
必ずしも良いと言えない景気の中、初めてのことでプロジェクトとしてのリスクを懸念する声も出たはずだ。
それに対し濱松さんは
「まあいっちょやってみるか」という感じで販売部門からは予想以上の好反応でした。
失敗してもいいからやってみるかというのはヤマハ気質なんでしょうね」
と笑ってこたえた。
これまでの違う開発プロセス、機能とスタイルの割り切り、既存の概念とは違うものを作るという強い信念、バイクというよりファッションに近いアプローチ。DS250ジャパンクルージングを見た時に「新しい」と感じた理由はここにあった。
これからもヤマハ車の選択肢を厚くする魅力的なモデルとしてジャパンクルージングの展開に期待したい。