空冷4気筒+PGM-FIのエンジン。前後18インチホイール。クラシカルと言えるスタイルなど、いろいろ見所はあるけれど、個人的に気になっていたことが2点あった。
「ネイキッドのCB1300SFがあって、それに近い排気量に、水冷と空冷の違いはあれど、同じく4気筒エンジンを積んだネイキッドモデルが出てきてどうやって棲み分けるんだろう」ということと、「絶版車の仲間入りしたCB750と同じようなものが欲しい人は必然的に成り立ちが似ているこのモデルになるのだけれど、少し大きくなってしまったことで、CB750のような気軽さが無くなってしまったんじゃないか」ということ。
開発コンセプトは『大人の所有感を満たすエモーショナルな空冷直4ネイキッド』で、所有する喜びがあるルックス、味わいのあるエンジン、構えないで乗れる走って楽しいシャーシという3つの狙いを入れ込んだ古いニオイのする新しいバイク。だからCB1300があるからどうだ、とか、CB750の受け皿とか、どうだっていいのかもしれないが、気になったものはしょーがない。
跨ると、燃料タンクの両端から、美しく見せるために2㎜という薄さに仕上げた冷却フィンが見える。ちょっと昔の空冷直4を知っている世代としては懐かしい。知らない世代は新鮮に感じるだろう。シリンダーとシリンダーヘッドを止める袋ナットが外側に露出した4気筒モデルは過去のホンダ車にはなかったんじゃないかな。フィンは薄いだけじゃなく深いのも印象的。バルブの挟み角を広げてまでDOHCらしいルックスにこだわったそうだ。
足つきはよくて、CB1300SFと比べるとずいぶんコンパクトだ。乗り出して、すぐに狭い路地でUターンを2回してみた。普通に、くるり、くるりっと出来た。試乗したのは千葉県だったから、くるり、くるり、久留里! ─────というオヤジギャグは今思いついた。当然、初めて乗ったんだけど、いつも乗っているように思わせるとっつきやすさ。
走りはじめてすぐに気になっていた2点が杞憂だってことがすぐに判った。CB1300SFとはまったく性格が違う。CB1300SFのエンジン腰下を流用した排気量の近い直4エンジンネイキッドだけどまったく別のバイクに仕上がっている。
18インチの、前110、後140という細いタイヤを採用したことで、左右の倒し込みがひらりひらりと軽い。万能バイク型決戦兵器とも言える、生真面目で全科目で高得点を取る、CB1300SFより、ずいぶん気軽で気楽。そしてCB750から乗り換えても大丈夫。走っていると排気量が大きいことがまったく気にならなかった。扱いやすさはバツグンだ。少しだけ窮屈だったCB750よりポジションが自然な分、こっちの方が楽だとさえ思った。愚かなボクは取り越し苦労をしていたというワケだ。
コーナーでは'70年代、'80年代的な腰で曲げる感じがありながらも、サスペンション、ブレーキ、タイヤ、開発した人は現代のものだから、古き時代より安定感はバツグンにいい。連続するタイトターンでも楽しく走れた。
エンジンはトップ5速でもバイクが動いてさえいれば、人間が走るような速度に落ちてもエンストしないで、スロットルを開けるだけでスピードをのせていけるほど下の粘りがあった。さらに開けていくと、このエンジンは意外と迫力がある。「速い」というのではなく、音と振動、回り方が「頑張って回っているぜ、べらんべえ」といったもの。