
(2010.11.10更新)
(前回からの続き)というわけで最終戦のバレンシアGPにもつれ込んだ125ccクラスのチャンピオン争いは、N・テロールが3位フィニッシュ。
獲得ポイントに余裕のあったM・マルケスは4位でチェッカーを受け、無事にチャンピオンを獲得した。
これで、2010年シーズンのMotoGPは、125ccクラス(M・マルケス/スペイン)、Moto2クラス(T・エリアス/スペイン)、MotoGPクラス(J・ロレンソ/スペイン)、と全クラスをスペイン人選手が制覇した。もちろん史上初の快挙である。
余談になるが、今年はサッカーワールドカップでスペインが優勝、ツール・ド・フランスはA・コンタドールが2年連続優勝、テニス界ではR・ナダルが全仏オープン、ウィンブルドン、全米オープンを制してキャリア・グランドスラムを達成。
そしてロードレースが3クラス制覇と、スポーツ界はことごとく赤と黄色のスペインカラー一色に染まった一年だった。
それにしても毎度のことながら感心するのは、この国のメディアのロードレースに対する関心の高さだ。
決勝日の朝に発行された新聞なんて、スポーツ欄は各紙ともマルケスマルケスマルケステロールテロールマルケステロールマルケスマルケス、ってな状態である。
自国選手がチャンピオンを獲得したって鼻にもひっかけない、どこかの国の少年探偵団みたいなメディア状況とは大違いである。
さて、その最終戦が明けた翌日から、選手たちは2011年に向けた新たな体制で早速テストを行う。
今年は特に、バレンティーノ・ロッシの移籍という大きな話題もあって、シーズン中から彼の一挙手一投足はいつも以上に注目を集めた。
思い返せば、2003年にホンダからヤマハへの移籍を発表したのも、ここバレンシアサーキットだった。
あれから7年。今季限りでヤマハを去るロッシは、
「7年前とは少し違う。ホンダからヤマハに移籍したときはもっと秘密だったけど、今回はもう皆知っている。あのときのほうが良かったよ(笑)」
と軽くジョークで和ませたうえで、ヤマハ在籍期間の7年を振り返った。
「ヤマハと過ごした7年間で、後悔するようなことはなにもなかったし、いやな思いをしたことは一度もない。人生でもそうだけど、結果が非常に重要なスポーツの世界で、ヤマハに在籍した期間は楽しみながら結果を残してゆくことができた。日本人や英国人や多くの国籍の人と一緒に仕事をしていくことも、とても楽しかった。唯一悔やまれるのは2006年の最終戦、ここバレンシアでチャンピオンを逃したこと。ともあれ、ヤマハで46勝して4度もチャンピオンシップを獲得できたことを、なにより古沢(政生)さんに感謝している。大変なときもあったけど、常にバイクを改善して楽しみながら戦いつづけることが出来た。また、リン(・ジャービス)以下全関係者の、この7年間の献身に本当に感謝している。
46勝にはそれぞれの思い出があって、どれがベストかを挙げるのは難しいけれども、(ヤマハ最初のレースで勝利した)ウェルコムは今でも最高のレースだと思う。2番目は(C・ストーナーとの激戦を制した)2008年のラグナセカ。3番目は最終ラップの最終コーナーで(チームメイトのJ・ロレンソを)オーバーテイクして勝利したバルセロナだね」
最終戦翌々日の9日と10日には、ドゥカティのマシンで早速テストを実施。
メディアに対するコメントは禁止されているため彼の言葉を引き出すことはできなかったが、来シーズンのロッシがはたしてどこまでのパフォーマンスを披露するのか。2011年シーズン最大の注目であることはまちがいない。
ところで、このロッシのヤマハでの7年間にわたる活動や古沢政生氏との絆、そして移籍先のドゥカティで彼を待ち受けるフィリポ・プレツィオージとの交流を描いた書籍が、来年にイタリアで出版される見通しだ。各国語版も適宜準備が進められている。この件の詳細は、時期が来れば追ってお伝えできると思う。気になるヒトは、当欄もしくはtwitter(@akyranishimura)のつぶやきに注目しておいてくださいな
では最後に、日本人選手たちの来季に向けた動向をおさらいして今回の締めくくりとしよう。
MotoGP2年目を迎える青山博一は、インターヴェッテンホンダからサンカルロ・ホンダ・グレシーニへ移籍する。11月9・10日のテストを終えると久しぶりに日本へ帰国。
来年2月1日から3日のマレーシア・セパンテストまで国内でトレーニングの日々を過ごす。
チャンピオンチーム・グレシーニレーシングMoto2へ移籍する高橋裕紀は、最終戦翌日の11月8日に早速新しいチームでテストを実施。走行後には
「Moto2は競争が激しいクラスだけど、チャンピオンマシンとチャンピオンチームなので条件は揃っています。攻めがいがあるし、なにより乗ってて楽しい。来年は行きたいし、行けると思います」
と力強く意気込みを語った。
小山知良は、現チームのレーシングチームジャーマニーに残留する見通しだ。
現段階ではワークスマシンRSAの最終開発モデルを獲得できるかどうかは50/50ということだが、ワークスマシンを手にすれば、小山の能力ならチャンピオン争いを繰り広げることはまず間違いない。
来年は、毎戦日本人選手の表彰台争いを報告できますように。と祈願しつつ、今季のレポートはひとまずこれまで。
2011年シーズン開幕までごきげんよう。
Hasta la vista a todos.
■第18戦バレンシアGP
- 11月7日決勝 バレンシアサーキット 晴
MotoGP(完走のみ) - ●優勝 ホルヘ・ロレンソ YAMAHA
- ●2位 ケーシー・ストーナー DUCATI
- ●3位 バレンティーノ・ロッシ YAMAHA
- ●4位 ベン・スピーズ YAMAHA
- ●5位 アンドレア・ドヴィツィオーゾ HONDA
- ●6位 マルコ・シモンチェリ HONDA
- ●7位 ダニ・ペドロサ HONDA
- ●8位 ヘクト・バルベラ DUCATI
- ●9位 アルバロ・バウティスタ SUZUKI
- ●10位 ランディ・デ・ビュニエ HONDA
- ●11位 アレックス・エスパルガロ DUCATI
- ●12位 コーリン・エドワーズ YAMAHA
- ●13位 マルコ・メランドリ HONDA
- ●14位 青山博一 HONDA
- ●15位 カルロス・チェカ DUCATI
■2010MotoGPライダーズランキング
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- ●優勝 ホルヘ・ロレンソ YAMAHA 383p
- ●2位 ダニ・ペドロサ HONDA 245p
- ●3位 バレンティーノ・ロッシ YAMAHA 233p
- ●4位 ケーシー・ストーナー DUCATI 225p
- ●5位 A・ドヴィツィオーゾ HONDA 206p
- ●6位 ベン・スピーズ YAMAHA 176p
- ●7位 ニッキー・ヘイデン DUCATI 163p
- ●8位 マルコ・シモンチェリ HONDA 125p
- ●9位 ランディ・デ・ビュニエ HONDA 116p
- ●10位 マルコ・メランドリ HONDA 103p
- ●11位 コーリン・エドワーズ YAMAHA 103p
- ●12位 ヘクト・バルベラ DUCATI 90p
- ●13位 アルバロ・バウティスタ SUZUKI 85p
- ●14位 アレックス・エスパルガロ DUCATI 65p
- ●15位 青山博一 HONDA 53p
- ●16位 ロリス・カピロッシ SUZUKI 44p
- ●16位 ミカ・カリオ DUCATI 43p
- ●18位 A・デ・アンジェリス MOTOBI 11p
- ●19位 ロジャー・リー・ヘイデン HONDA 5p
- ●20位 秋吉耕佑 HONDA 4p
- ●21位 カルロス・チェカ DUCATI 1p
- ●22位 吉川・和多留 YAMAHA 1p
- [13・第17戦 ポルトガルGP]
- [14・第18戦 バレンシアGP]
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- 西村 章
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- スポーツ誌や一般誌、二輪誌はもちろん、マンガ誌や通信社等にも幅広くMotoGPを関連記事を寄稿しているフリーライター。 訳書に『バレンティーノ・ロッシ自叙伝』『MotoGPパフォーマンスライディングテクニック』等。第17回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞した『最後の王者』の加筆の作業はすでに終了。年内刊行は間に合うか!? 乞うご期待。twitterアカウントは@akyranishimura。














