読者のみなさまお久しぶりでございます。2021年6月にスズキGSX-R125 ABSの試乗・解説をさせていただいたが、このコーナーは実に1年半ぶりとなる。コロナ禍以降、1回目の緊急事態宣言が解除された昨年6月に湯巡りツーリングに出かけたのだが、町外者や県外者の入浴を禁止した日帰り温泉が数軒あったため途中で切り上げて、それ以降は湯巡りツーリングを自粛することにした。8月に入ってから感染者数が増加傾向にあるものの、接種希望者へのワクチン接種が進み、感染者が減ることで一日でも早く自由にツーリングに出かけられることを願うばかりだ。
そんなコロナ禍の中でソロキャンプに注目が集まっているという。3密回避といった実利的な面もさることながら、大自然の中で寝泊まりしたり、ご飯を食べたり、焚火を見ながら夜を過ごすという非日常的な経験ができることも注目を集めている理由だろう。ソロキャンプ歴20年の私もそうした非日常的な経験をしたいがために装備を揃えてソロキャンプを楽しんでいる。コロナ禍以降、雑誌やテレビ、ネットでソロキャンプ特集が組まれており、以前よりも情報は多いものの、いざ装備を揃えようとしても何をどのように揃えていいのかわからない方もいらっしゃるのではないだろうか。そこで今回はソロキャンプ装備の選び方や特徴を、私のソロキャンプ装備をもとに紹介しよう。コロナ禍が落ち着いてソロキャンプに出かけてみたい方の参考になれば幸いだ。
★ポイントその1 バイクは収納スペースが限られている
このコーナーでソロキャンプ装備を紹介するのは初めてではない。第28湯で紹介しているのだが、その時からバイクを買い替えたことで、基本となる装備はそれほど大きく変化していないものの、装備の収納スペースが大幅に変わっている。実は、自分の所有しているバイクの収納スペースを把握することが装備を揃えるうえで重要なことなのだ。車と違ってバイクの場合、収納スペースに限りがある。あれもこれも揃えても、収納できなければ意味がない。装備にあわせて収納スペースを選ぶ方法もあるが、走行に支障をきたしてしまっては、キャンプを楽しめないどころか目的地まで辿り着けないかもしれない。バイクの場合は収納スペースにあわせた装備を選ばなくてはならない。
★ポイントその2 自分のバイクに適した積載方法(ケース、バッグ、バックパック)を把握しよう
ポイント1を踏まえて、次にやるべきことは収納するためのケースやバッグを選ぶことだ。私は現在乗っているホンダ400Xにはトップケースとパニアケースが装着できるように純正のステーを取り付けている。もともとソロキャンプ装備を載せるためにこのバイクを選んだわけだが、バイクによってはケースやバッグの積載が難しいものがある。載せらない場合はバックパックに収納して背負って走る方法もある。いずれにしても所有しているバイクに適した積載方法を把握しておくことが肝心だ。
★ポイントその3 ケースやバッグのサイズ感や重量を把握しよう
次に、自分のバイクに適した積載方法で、どれだけの装備が収納できるのかを確認し、装着した場合のサイズ感や、装備を収納した場合の重量を確かめよう。今回、私の積載例に加えて、知人が購入したデイトナ社の「ヘンリービギンズ バイク用キャンプシートバッグシステム(65L)」を例に挙げよう。このバッグは65リットルの大容量で、テントから寝袋までほぼすべての装備が収納できる。収納力は抜群だがサイズが大きいこと(高さ350㎜×幅550㎜×奥行350㎜)と 、すべての装備を収納するとかなり重くなってしまうのが難点。リアキャリアの大きいバイクならまだしも、リアキャリアの小さいバイクや、リアキャリアがないバイクの場合工夫しないと、例えばカーブを曲がった際にずれてしまったり、最悪の場合落下してしまう恐れがある。いっぱい収納できるからといって自分のバイクに適しているとは限らないことだ。例えばサイドバックを取り付けて重量を分散させるなどの工夫が必要になってくる。
★ポイントその4 装備は厳選し軽量・コンパクトを心掛けよう
キャンプというとあれもこれも持っていきたくなる。特にモノ好きな私はその傾向が強い。装備を試してみたいという欲求だけではなく、現場でどんなことが起きるかわからないという不安もあるからだ。しかし、先ほども述べたように収納スペースは限られている。重くなれば走行に支障をきたす可能性がある。持ち運びも大変だ。モノを取り出すということは片付けなくてはならず、モノが多ければ片付けるのもひと苦労だ。そんなことから装備はできるだけ厳選して、軽くしてコンパクトにまとめよう。モノによっては現地調達・現地地消ということも念頭に置かなくてはならない。また、寝間着や着替え、防寒着といった衣類は予備として持っておくと安心だ。ただ装備に関しては、個人の好みやこだわりもあるので、ケースやバッグの収納力と相談しながら決めるのがベストだろう。私の経験から最低限揃えておいたほうがいいものをリストアップしてみた。
■最低限揃えたほうがいい装備
・テント
・折り畳み椅子
・寝袋(春夏より秋冬向け)
・寝袋の下に敷くマット
・バーナー
・コッヘル/食器類(コップ、箸など)
・刃物類(ナイフ、マルチツール)
・ライト(ヘッドランプ推奨)
・タオル
・洗面用具
・着替え(予備のシャツやパンツ、靴下)
・ゴミ袋
・食料品(現地で調達できなかった場合を想定したもの)
■あったほうがいい装備
・折り畳みテーブル
・虫除け/蚊取り線香
・火が起こせるもの(マッチ、ライター)
・新聞紙/トイレットペーパー
・スニーカーなどの靴
★ポイントその5 あとは経験を重ねるべし!
これらの最低限必要な装備をもとに、あとは経験を重ねて自分にあった装備、スタイルを見つけていくのが無難だろう。経験を重ねことで必要なもの、不要なものが出てくるはずだ。私の場合、ズック靴がそれで、テントサイトに出入りする際に脱ぎ履きしやすく、地面が濡れていても足が濡れにくく、ヒルなどの虫から足を保護してくれる。サンダルだと濡れたりヒルに噛まれて痛い目に遭ってしまうからだ。食事に関しては、私はお湯で温めて食べられるものを少し多めに持っていくようにしている。キャンプ場によっては周囲に買い出しできるようなお店がなかったり、天候等によって買い出しに行けない場合がある。そんな時に備えて最低でも朝晩は過ごせるだけの食料は持っておきたい。
これは余談だが、キャンプ中に使い切ったり壊れたり、欲しいものが出た場合、帰ってからすぐに新しいものを用意しよう。次に出かける時に大抵忘れているからだ。それを防ぐ意味でも帰ったら片付けをする習慣を身に付けることをお薦めする。
揃える装備が多かったり、バイクの場合は収納スペースに限りがあるなど、ソロキャンプは最初のハードルが高い。しかし、装備はいったん揃えてしまえば頻繁に買い替える必要はなく(私も10年以上使っているものも多い)、経験を重ねるうちに自分のスタイルが確立してくる。グループキャンプであっても基本はソロキャンプの延長線上。まずは自分自身が楽しむことが大切だ。コロナ禍が終息したらぜひソロキャンプにチャレンジしてほしい。
月刊アームズマガジン』の編集ライター。バイクに乗り始めてから温泉が好きになり、現在までの温泉踏破数は816湯。湯巡りツーリングの相棒はホンダ・400X。ちなみにマイカーは三菱のアウトランダーPHEVだ。