2010年の10月から10台の試作車によるテスト運行を開始していたホンダの電動バイク『EV-neo』が、いよいよリース販売が決定された。
まずはこの12月から2011年3月にかけて、複数の協力企業に走行データ収集などのモニタリングを行うため約100台を納車。その後、2011年4月から、いよいよ一般企業や個人事業主に対するリース販売を開始するという。
その発表に合わせてリースされる車両の試乗会が開催されたのでご報告しよう。2010年の春にも一度試乗会が開催されたが、その時からも更に進化しているという。
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すでに10月から10台の試作車が協力企業の元でテストされていた。こちらのピザ屋さんもその1台。店長さんがテストを担当しているそうだ。試乗会に実際にピザを配達してくれた(食べそびれましたが…)。
EV-neoの概要をおさらいしておくと、インサイトの技術などを応用して開発された自社製ブラシレスモーター(モンパルの工場で作られているという)と、東芝から納入されるリチウムイオン電池(SCiB)パック3個をホンダでスタックし搭載するというもの。電圧は72Vだ。
また、EV-neo独自の特徴として、なんと30分でフル充電(気温25度C環境下)が可能な新開発の専用急速充電器(200V電源使用)が別売で用意されたということ。業務用とはいえ、充電のために時間を取られてしまうのがこれまでの電動バイクや自動車で大きなマイナスポイントとなっていたのだから注目だろう。
わずか30分なら近所のガソリンスタンド行って“油売ってくる!?”程度の時間ですむ。複数台の電動バイクを導入する企業にとっては充電器をそれなりの数を揃えずとも済むことになる。従来の3時間とか4時間という充電時間だと多くて3台くらいまでしか使い回せないばかりか、それを管理するスタッフがいなければならなくなってしまう。充電時間の短縮は電動バイク、自動車の普及のハードルを一つクリアするだろう。ただ、この専用急速充電器は119,700円とちょっと高いのが玉に瑕か。
多数の台数を導入する企業でなければ39,900円の普通充電器(家庭用100V)で充分だ。こちらはシート下に搭載が可能で、ゼロからフル充電は約3.5時間となっている。「寝る前に充電」の電動アシスト自転車生活に慣れた方も多いだろう。
一充電あたりの走行距離は34km(30km/h定地走行テスト値)。バッテリーに繰り返しの充放電や急速充電に強く、極低温時にも安定した特性を持つリチウムイオンバッテリーが選定されているというが、更に専用の冷却ファンを備えた冷却システムを装備して信頼性を高めている。
以上が概要だが、外観等は一昨年の東京モーターショーに展示されたものとほとんど同じで、リース販売発表直前まで開発が続けられていたのは主に制御系のようだ。
「4月の時点ではまだ“電動バイクらしさ”が残っていて、多くの方がそれを口にされていました。私たちはそれは相当に厳しいご意見だと思いました。業務用のモデルを開発しているのですから、誰でもが乗れる、誰でも安心して使える、でなければならないと考えてたからです」(動力系の開発担当者さん)。
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自社生産を行っているブラシレスモーター。まだ手作りと言えそうな作業なのだとか。
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電動バイクはモーターとバッテリー、そして制御装置が性能を決める。東芝製の新型リチウムイオンバッテリー、SCiBを3個搭載。
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サイドパネルを開けると充電器からのケーブルのカプラーが。充電中はパネルを閉じてロックも可能。イタズラ防止機能だ。
それが実際に試乗して感銘を受けた「フツーに走れるフツーのバイク」のインプレッションに繋がる。
「普通のバイクだよ!」これほど手抜きのインプレッションはないだろうが、こと電動バイクということを考えれば、これはひとつのゴールなんじゃないだろうか。
これまで何台かの電動バイクに乗る機会があったが、要約すると(1)電気モーターらしく立ち上がりは鋭い!(電気モーターの特性として回転し始めるときが一番トルクが出る)、それをあえて売りにしていたメーカーもある。(2)走行可能距離と走りの楽しさはトレードオフ。そしてほとんどのモデルが(3)バイクのアクセルではなくゲームのコントローラーを扱っている感覚、だった。
これらはみな動力系の制御の問題と言える。EV-neoを走らせて感心するのはアクセルの回し始めに対する車体の挙動が、言葉は悪いかもしれないが、クリティカルではないのだ。電気のオンオフスイッチじゃなく、スライダックス(ははは、古いですね)でもなく、まさにケーブル式のアクセルそのもの。
一昔前、ハイパワー2ストロークスクーター全盛の頃、いきなりウイリーしてしまって以来、バイクに乗れなくなった、などという女性が多くおりましたが、あれよりも更に唐突なアクセリング、というのがこれまでのほとんどの電動バイクでした。走り出してしまえば、結構なペースで走れるのはいずれも同じ。ネックは走り始めだったんですね。
ホンダの開発者さん達は、本来“ライド・バイ・ワイヤ”ですむところを、わざわざケーブル式のアクセルの感覚を取り入れるため、アクセルグリップからセンサーユニットまでをケーブルでつないでいるのだとか。
ケーブルのわずかな伸びや些細な抵抗を人間は知らずうちに感じ取っていたんですね。レース用マシンならともかく、街中のストップアンドゴーの使用がほとんどの業務用では発進、停止が命でしょう。
まあ、電動バイクとしての名誉として付け加えておけば、出足はフレンドリーでも加速は並の原付スクーターより速い気がしました。音がしない分(オプションで“接近通報装置”という小さな走行音らしき音を発する装置が取り付けられる)、するするするっと加速してしまう感覚が速さを感じるのでしょうか。50km/hまではあっという間です。また、試乗では7度程度の坂までしか試せませんでしたが、性能的にはなんと12度の坂でも30kgの荷物をフルに積んでスタートが可能だそうです。これはガソリン車では全く太刀打ちできない数値です。
というわけで、“フツーでした”としか言えない面白くも何ともないインプレッションですが、電動バイクに関しては最大級のホメ言葉なのだととらえてください。
これから免許取ってバイクに乗り始める人にとっては、ガソリンとエンジンの組み合わせだろうと、バッテリーとモーターだろうと、あまり関係は無いのではないでしょうか。二輪で走るという楽しさに関しては全く一緒、と考えられる時代がいよいよやってきたな、という感を強くした試乗でした。
(小宮山幸雄)
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何とゼロからフル充電まで30分で完了させてしまうという急速充電器(119,700円)。電気バイク、自動車のハードルをひとつ超えられたか。
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普通充電器はこの様にシート下に搭載することが出来て安心。こちらは39,900円でゼロからフル充電は約3.5時間かかるが。
●HONDA EV-neo 主要諸元 |
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ホンダ・ZAD-AF71 |
全長 |
1,830〈1,875〉mm |
全幅 |
695mm |
全高 |
1,065mm |
軸距 |
1,250mm |
シート高 |
756mm |
車両重量 |
106〈110〉kg |
最小回転半径 |
1.7m |
原動機形式 |
AF71M・交流同期電動機 |
定格出力 |
0.58kW |
最高出力 |
2.8kW[3.8PS]/5,000rpm |
最大トルク |
11N・m[1.1kg-f・m]/2,000rpm |
一充電走行距離 |
34km(30km/h定地走行テスト値) |
メインバッテリー種類 |
リチウムイオン電池 |
メインバッテリー電圧/容量 |
72V/12.6Ah(1HR) |
バッテリー充電電源(普通充電器) |
AC100V(単相) |
バッテリー充電電源(急速充電器) |
AC1200V(単相) |
クラッチ形式 |
乾式多版シュー式 |
キャスター角/トレール量 |
26°30′/74mm |
タイヤ前 |
90/90-12 44J |
タイヤ後 |
100/80-12 56J |
ブレーキ前 |
機械式リーディングトレーリング |
ブレーキ後 |
機械式リーディングトレーリング |
懸架方式前 |
テレスコピック式 |
懸架方式後 |
ユニットスイング式 |
フレーム形式 |
アンダーボーン |
※〈 〉内は、PROタイプ
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