これまでのモデルが電動バイク専用車両として開発されてきたのに対し、E-Vinoは見た目からもお判りの通り、20年近くの長きに渡って親しまれているレトロポップスクーター「Vino」がベースとなっているのが特徴。専用のスタイルもいいが、慣れ親しんだスタイルをもつことでより多くの人、中でも女性をターゲットに電動バイクに乗るキッカケになってもらう、 E-Vinoはそんな役割を担っている。
先代・ EC-03が100Vコンセントのプラグイン充電方式だったのに対し、E-Vinoはバッテリーを取り外し式とすることで、家庭内での充電を可能とした。広く普及している電動アシスト自転車と同様”身近な乗り物”というイメージづくりに貢献しているのではないだろうか? ちなみに残量ゼロからの充電時間は約3時間。 EC-03の半分に短縮された。
専用カラーが施されているものの、エキゾースト・マフラーが装着されていないことを除けば見た目はVinoそのもの。ホワイトにペイントされたホイールがとても軽快感を演出している。そしてスタンドの掛けおろしや取り回しなど、実際にとても軽い。E-Vinoのバッテリー装着時の車両重量はVinoより12kgも軽いのだ。これは女性ユーザーにとってとても重要なこと。ただ、専用のアルミフレームを採用していたEC-03(56kg)より重くなってしまうのは仕方のないところだろう。
ライダーの身長は173cm。(※写真上でクリックすると両足時の足着き性が見られます) |
走り出すと”日本のメーカーが作った電動バイク”と思わせる洗練されたフィーリング。ガソリンエンジンに対し、トルクが一気に立ち上がる電気の特性は扱いやすく制御され、発進からとてもスムーズ。電気モーター特有のノイズもかなり抑えられていると感じた。尚、エネルギー回生機能はないので、スロットルを戻すと抵抗なくスーッと空走する。女性の中には原付スクーター(ガソリン、2スト時代)の”加速”に怖い思いをして以来、運転するのがトラウマになっている人が多いと聞くが、そんな人にE-Vinoはとても安心な乗り物だと思う。
満充電時の走行距離はカタログデータで29km(体重55kgのライダーが気温25℃、無風の乾いた道を30km/h定地で走行。走行モード「標準」の場合)。ちなみに「標準」モードでは最高速も35km/hに抑えられ節電走りとなる。幹線道路などを走る場合は、原付一種の法定速度が30km/hとは言え、周りの交通との速度差を考慮し「パワー」モードに切り替えた方が良い、いや切り替えるべきだろう。当然「パワー」モードで走り続けると航続距離も短くなる。
例えば、住宅街を通って2~3km先の駅やショッピングへ、といった用途にE-Vinoは適している。ヤマハもそういった使い方に割り切った仕上がりとしているようだ。電動アシスト自転車よりもさらに楽チン、ガソリン・スクーターより僅かなコストアップで、静かでクリーン、かつ経済的だ。
技術的に大きな”目玉”はないが、低価格と親しみ易さ、扱い易さといった点で、今後の電動バイクの普及に対して E-Vinoは一石を投じたモデルと言っていいだろう。ちなみに今回の試乗を通じ、原付一種の電動バイクには例えば減税、そして極端なハナシ、交通社会での青少年育成を目的として14歳から乗車を可能とするなど、独自の優遇措置、レギュレーションがあってもいいのかな? なんて思った。
<試乗:高橋二朗>
50Vのリチウムイオンバッテリーはシート下に収まる。トランクスペースは約10L、7kgまで。オプション「バッテリーダンパー」を装着すれば、これまたオプションとなるが「予備バッテリー」を搭載でき、航続距離を伸ばすことができる。 |
| 『ヤマハの電動バイク、EC-03ってどうよ!?』のページへ |
| ヤマハのWEBサイトへ |