まず、車両重量が軽いこと。日本で発売されるR3にはABS設定モデルしかなく、同じR25のABSモデルと較べ、重量は1kg増えただけの169kg。R25とほぼ同じで、CBRとNinjaより軽い。跨ってハンドルを掴んだ感じもR25との差がまったく判らない。細かく見れば、タコメーターのレッドゾーンが12,500回転からと、R25の14,000回転からに較べ低いからR3だと認識出来る。見た目から前傾姿勢がきつそうだけど、それほどでもないのはR25と一緒だ。身長170cmでセパレートハンドルのバーの高さはおへそくらい、ハンドルグリップは近めにあり、ネイキッドモデル並みのゆとりがある。足つきも両の足裏がベッタリとまではいかないけれど、もう少しでカカトまで届く良好さ。
やはり気になるのはR25との違いだろう。これは当然ながらエンジン。R25の場合は6~7,000回転の中速域から力が出てきて、高回転で気持よく伸びる特性。このR3は、もっと下、3~4,000回転付近から力があって、峠道を登る時も、ギアチェンジしなくてもスルスルっと登ってしまった。中高回転域に入れるとさらに速いけれど、R25よりトルクが全域でフラットに近い。このおかげで、回転数を上げずにクルマの後ろについてゆっくり流して走る時も楽だ。連続するコーナーで、高回転域に入れることを常に意識せず流して走る。足りないもどかしさは小さく、走りに余裕がある。トルクフルとまでは表現出来ないが、R25と比べると確実な違いである。
YAMAHA YZF-R3。ライダーの身長は170cm。(※写真上でクリックすると両足時の足着き性が見られます) |
前後のサスペンションは動きの初期から柔らかく、ダンピングも程よく効いていて、路面のデコボコをいなすようなロードホールディング性と乗り心地の良さ。走るペースを上げてもなかなかの性能。大きく上り下りしながら回りこむタイトコーナーでも、前後サスペンションは音を上げず、タイヤを的確に接地させてくれた。シャープとまではいかないけれど、安心してコーナーリング出来る軽快さと、コントロールの自由さが持ち味。ライダーの技量を問わずに楽しめるだろう。もっとスロットルを開けて行くと、なかなか速いダッシュ。ヤマハも声を大きくして説明している、車両重量が軽いことでライバルより良好なパワーウェイトレシオを実感。この軽さはブレーキングやコーナーリングの時も効いてくる。エンジンは高回転までスムーズで、気になる振動も体に伝わってこない。
400で区切っている国は日本以外そうそうなく、専用に作りこむコストの問題なども含め、新しくエンジンを作るより、ワールドワイドに売れるものを作り持ってきたという理由だけでなく、「これで充分ライバルと戦える」という判断があったからこそ。納得の走り。
そして最後にもうひとつのメリット。R25と共通する部品だらけで比較的リーズナブルな価格設定になっていることだ。
強いて言えば、この価格のままR25とは違うんだよ、とひと目で分かるアピール部分がもうちょっとあっても良かったかも。R3であることを主張したい。R25の高回転に入れてシャカリキに走る感じも楽しい。しかし1台で、街乗りから、ワインディング、長距離ツーリングとこなしたいなら、こちらがオススメ。
(試乗:濱矢文夫)
2眼逆スラントヘッドライトを採用したフロント回り。 | マルチファンクションメーター。スポーティなセパレートハンドルの切れ角は34度。 | スポーツ心を呼び起こす、ライディングポジション。それでいてスーパースポーツのような厳しさはない。 |
テールライトはLED。左右非対称ロングリアアームにモノクロスサスペンションの組み合わせ。 |
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