「参加条件は30歳以上!それだけ!」 2015 第9回 ジャパン ヴェテラン モトクロス チャンピオンシップス

ヴェテランの略称VETで「ジャパンVET」と呼ばれるこのイベントは、30歳以上ならレース初心者から誰でもエントリーOKだ。こどもの日の開催も恒例となり、今年も北海道から九州から、30歳から82歳まで、ノービスもレジェンドも一堂に集まっての和やかな大人の、と言いつつも同年齢同レベルでのバトルはいつしか熱く燃え上がるのだった。

●文・写真――高橋絵里

■開催日:2015年5月5日 ■会場:埼玉県 ウェストポイント オフロードヴィレッジ

■主催:ウェストポイント  ■運営協力:ビッグクルー 
■協賛:アールケージャパン・アンリミットモトフィールド榛名・磯貝鮮魚店・井上ゴム工業ウェストウッド井原商会エーエヌディーウェアエヌ・イー・エムズ・久保 守・円陣家至高油類商ジャペックスSHOEIダートフリーク・大地・ホーリーエクイップ・ホンダシーエス・ラフアンドロードスポーツダートアクツユニオンテクニクスバイクショップハラグチブリッツシュネル・プロストック・松建・モトロマン・陽和組・よこづなレーシング (敬称略)

 30歳から10歳刻みの年齢別と、技量別でノービス・インターミディ・エキスパートといった細かいクラス分けが、ジャパンVETの最大の特徴であり魅力だ。もともとは、アメリカで人気のワールドVETを手本にした内容で、これにミニモトやヴィンテージなどの特設クラスが加わって日本版に構成されている。朝イチからレギュラーMC 中尾テッペー省吾氏の、VETライダー抱腹絶倒のツボをくすぐるアナウンスが冴えわたる。
 開会式ではますます渋みを増したレジェンドライダーが勢ぞろいしてくれた。往年の元セニアや元チャンピオンが、昔はプロでも今は趣味で走っているから今日のエントラントの皆さんと一緒ですよ、楽しみましょうねと笑う。そんな50〜70歳代のレジェンドに、モトクロス以外の休日の趣味は何ですか? と聞いたなら、「民謡を習う」「孫の子守り」「ひ孫と遊ぶ」「ジャズドラムを叩く」「ウクレレを弾く」「サーフィン」「シーカヤック」「お酒」「愛妻とAMA観戦旅行」など皆さんなかなか個性的にエンジョイしているようだ。


新津さん

赤松さん
新津栄一MCFAJ理事長、ゼッケン通りオントシ77歳。YZ250Fで今も毎月のMCFAJのレースと春のジャパンVET、年末のジャパンマスターズを走っている。 ‘60年代ブリヂストンファクトリーで活躍した赤松勝さん69歳。スタート前は真剣な表情に、VET60クラスとミニモトにダブルエントリーする体力には頭が下がります。

岡部さん

伊田さん
‘80年代に4回の全日本チャンピオンに輝いた岡部篤史さんが、モトクロス歴2年の娘さんとエントリー。かっこいいお父さんと美人のお嬢さん、さらにその彼氏もエントリーとは素敵です! 毎年アメリカのワールドVETに挑戦中の元全日本チャンピオン伊田井佐夫さん58歳、子供達の応援を受けてVET50クラス完全優勝、カミカゼホールショットも健在。

岡部さん

伊田さん
宇都宮ぎょうざレ-シングの斉藤修さん58歳は現役の国際B級ライダー。でもクラッシュキングがたまにきず。この日もぶっちぎりで勝ったと思ったら転倒撃沈したり。 「一生懸命仕事して一生懸命モトクロス!」サスチューン「マーサス」も好評なチャンドラー佐藤さんはカナダやアメリカのライダーにも人気の国際派ライダーだ。

 毎年ジャパンVETの昼休みにおこなわれるステージプログラムが、日本モトクロス史に貢献した人物について紹介する「レジェンドセレモニー」だ。今年の受賞はウィリー松浦さん。松浦さんといえば、1971年にホンダが初の2ストロークモトクロッサーRC335Aを全日本で実戦テストした際のライダーだ。その翌年の日本GPで初優勝したRC250Mモデルの開発黎明期を担った。
 その後の松浦さんは国際A級ライダーとしてではなくバイクスタントマンとして名を馳せ、やがてエンデューロやダートトラックでも活躍するのだが、当時の経緯や今だから公開できる話のあれこれについて、ステージ上で熱く語ってくれた。
 残念ながらこの日は体調が万全ではないためレース参戦はならなかったが、特設ピットではマシンや懐かしい写真を展示しながらファンとの交流をおこなった。現在は茨城県で谷田部エンジョイスポーツランド、福島県で白河エンジョイスポーツランドのコース管理を手がけながら、オフロードの普及に努めている。ビギナーにも楽しいコースだ。



松浦さん

松浦さん

松浦さん
レジェンドセレモニーで披露してくれたウィリー松浦さん。ジャパンVETのスーパーバイザーを務める伊田井佐夫さんから花束贈呈があり、特設ピットではスタントマン時代などの懐かしい写真が展示された。マッドマックス、蘇る金狼、トラック野郎シリーズなど映画のバイクスタントで活躍し、メル・ギブソンや故松田優作氏との親交もあったそうだ。

 レギュラークラスでは車種・排気量ともにマシンは何でもよく、実際にはやはり現行モデルで楽しむライダーが多い。
 でもせっかくのVETイベントでもあるし旧車も見たいよね、ということで特設されたヴィンテージクラスがなかなかの人気だ。1970年代当時から持っていたバイクをレストアして大切に走らせていたり、全身当時のウェアで決めまくったりしてこれが絵になる。と、ゼッケン21番の1980年型CR250、あれはどこからどう見てもA級初優勝の時の唐沢栄三郎選手では? と目を凝らしてみると、完全に唐沢選手になりきったホーリーさんこと堀口雅史さんで、しかもみごと優勝。さらにVET60クラスではホンモノの唐沢さんが優勝して、お2人ニコニコ記念ショットで健闘を讃えあった。
 快晴のこどもの日に全22クラスを消化した表彰式で、ノービス70+クラスのポディウムに70歳と82歳のライダーが上がった。モトクロスは何歳でもずっと楽しめるのだと、その存在感で教えてくれた。モトクロスで戯れる大人の祭典ジャパンVETは、来年10周年を迎える。


ヴィンテージクラス

ホーリーさん
ヴィンテージクラスやレボリューションクラスは観戦も楽しませてくれる。ウェアに凝るライダーも多く、コースサイドからは懐かしい~! かっこいい~! の声しきり。 ヴィンテージモトクロッサー製作からコスプレまでパーフェクトにこなし、クールにジャンプを飛ぶのは元国際B級ライダーで、現在ホーリーエクイップ代表の堀口選手。

ホーリーさん

北海道チーム
唐沢さんレプリカでヴィンテージクラス優勝の堀口さん(左)と、VET60クラス優勝で6月はBAJA500の+60クラスで再び優勝を狙うレジェンド唐沢栄三郎さんご本人(右)。 フェリーで遠征してきた北海道チームもインターミディ50、VET50などそれぞれのクラスで全開。船旅とレースに加えて埼玉での居酒屋宴会、ツインリンクもてぎ観光もした。

ノービス70+クラス表彰台のお2人

最上ハジメさん

最上ハジメさん
ノービス70+クラス表彰台のお2人(左上)。年齢と同じ#82をつける最上ハジメさん82歳(左下)。#222バイク雑誌業界のドン森岡さん70歳(右)。

集合写真
こどもの日にこどもに帰ったオジサマ達、エントリー計137台。来年の10周年も元気で走ろう!