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マレーシア・セパンサーキットで行われた2015年のプレシーズンテスト第1回目は、2013年と2014年を制した21歳のチャンピオン、マルク・マルケス(レプソル・ホンダ・チーム)が期待に違わぬハイパフォーマンスの走りを披露した。テスト三日日の午前に行ったタイムアタックでは、前人未踏の1分58秒867に到達。シーズンオフなので非公式記録ではあるものの、セパンサーキットの二輪最速タイムを更新した。
マルケスは、昨年のプレシーズンテストでも1分59秒533を記録して、それまでの非公式最速記録(1分59秒607:C・ストーナー:2012)を塗り替えている。今年は、昨年に自身が記録したタイムをさらに0.666秒も短縮するというスーパータイムだ。ちなみに、今回のセパンテストでは、ダニ・ペドロサ(レプソル・ホンダ・チーム)が1分59秒006、アンドレア・イアンノーネ(ドゥカティ・チーム)が1分59秒388、バレンティーノ・ロッシ(モビスター・ヤマハ MotoGP)が1分59秒401、と上位4名が昨年のマルケスのタイムを上回っている。なかでも特筆すべきはペドロサで、彼の計測タイムは「アタック中にミスをした」(本人談)ときのものなのだから、これでそのミスがなかったのならば、マルケスのタイムをほぼ間違いなく上回っていたことだろう。
ペドロサは、レースを想定した20周のロングランでも非常に高い水準の走りを見せている。2周目から11周目まで10周にわたって2分00秒台を維持、その後も01秒1から01秒2というペースで最後まで走りきっている。一方、マルケスの場合は00秒台が5周回で、その後のタイムは01秒2から01秒5の近辺に落ちている。
ロッシは、このレースシミュレーションではかなりのタイムのばらつきが見られたが、その理由は、走行後に本人が語ったところによると「マッピングの変更などを走りながらいろいろと試していた」からなのだという。
一方、ホルヘ・ロレンソ(モビスター・ヤマハ MotoGP)は、午前のタイムアタックで自己ベストが1分59秒624、とライバルのホンダ勢やチームメイトのロッシよりもやや劣るものの、レース想定のロングランはまずまずの内容だった、と振り返っている。
「今回のテストはブレーキングの改善が課題で、だいぶ良くなったとはいえまだ完璧ではない状態なので、新品タイヤを入れたアタックではいいタイムを記録できなかった。でも、レース本番では58秒や59秒で走るのは不可能で、おそらく2分00秒台の争いになるだろう。そう考えると、自分のレースシミュレーションは最初の5周で00秒台に入れ、残りの14周は01秒台2〜3の前半を維持できているので、優勝を争える内容だったと思うよ。ヤマハ向きではないこのコースで、ダニと似たようなペースで走ることができたのだから、上々の出来だった」
今シーズンも、マルケス、ペドロサ、ロッシ、ロレンソの四選手を中心にシーズンが動いていく。それは、今回の三日間のテスト内容からも明らかだろう。
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超人的な常軌を逸した走りに、さらに磨きがかかっている模様。
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不得意コースでどれだけ高いアベレージで走れるか、が今年の課題?
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ところで、今年のプレシーズンテストで注目されている項目のひとつに、ヤマハがいつ、ダウン側のシームレスシフトを導入するのか、ということがある。年頭にYZR-M1プロジェクトリーダー津谷晃司氏へインタビューを行った際、氏は「開幕までに間に合わせる」という主旨の発言をしていたのだが、今回のテストではまだ投入には至らなかったようだ。
テスト初日に、ロッシ、ロレンソ選手にこの件について直接確認を取ってみたところ、両選手とも「まだダウン側はシームレスが入っていない」と明言した。なかでもロッシは
「できるだけ早く持ってきてほしいのが本音なんだけど、やるべきことは他にもたくさんあるからねえ……」と述べていたので、投入がいつ頃になりそうかヤマハの技術陣から何か聞いていないのか、とさらに訊ねてみた。すると、
「そりゃあ早く試せるにこしたことはないけど、本当に聞かされてないんだよ。彼らもきっと黙々と努力をしてくれているはずで、そもそもギアボックスは悪いとシャレにならないから、100パーセント確かな状態で試したいんだよ」
とのことであった。
つまり、ヤマハのダウンシフトがいつシームレス化するかということについてはこちらが勝手に推測をするしかないわけだが、素人考えの邪推を承知で言えば、おそらく早ければ次回のセパンテストで入るのではないだろうか。開幕までのプレシーズンテストは、次回のセパン2回目と3月中旬のカタールテストが予定されている。「開幕までに間に合わせる」という津谷氏の言葉が事実なら、おそらくぶっつけ本番の実戦投入ということはありえないだろうから、事前に試すことはまず間違いない。カタールテストで入れるとすれば、もしここで何らかの不具合が判明した場合、開幕までにその補修に充当できる時間は10日程度しかなく、補修した部品の最終確認が開幕戦、ということになる。これでは、ぶっつけ本番とさほど変わらない。
そのように考えると、可能な限りのフェイルセーフを想定しておくのならば、次回のセパンテストでシェイクダウンしておけば、問題がない場合にはカタールテストで安定運用をできるし、何らかの不具合や問題が発生した場合でも、カタールテストで再度、補修済みのものを試すという時間の余裕を作ることができる。とまあ、そういうふうに帰納的に考えた結果、おそらく次のセパンテストでヤマハはダウン側をシームレス化するのではないのかなあ……、と推測をしておきます。はずれていたらごめんなさい。
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この年齢でもこれだけ速く走れるのは、かなりすごいことですよ。
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今季はベストのフィジカルコンディションでテスト入り。
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今シーズンからは、アプリリアとスズキのファクトリーチームが復帰を果たす。今回のテストでは、彼らがどれくらいのパフォーマンスを発揮するかということにも注目が集まっていたが、スズキのアレイシ・エスパルガロとマーヴェリック・ヴィニャーレスはともに、上々のテスト内容になったようだ。エスパルガロのベストタイムは2分00秒486で総合10番手、MotoGPルーキーのヴィニャーレスもそこから僅差の2分00秒964で総合12番手と、ともに00秒台に入れている。
三日間のテストを終えたエスパルガロに、現状の課題を訊ねてみたところ、「(エンジン)パワーだ」と即答が返ってきた。
「とくにこのサーキットはパワーが必要なコースなので、その部分が良くなれば、もっとタイムは詰まるだろうね。今回のテストで電子制御はかなりいい方向に進んだし、車体のセットアップも進んだ。ブレーキングでアグレッシブに突っ込めるのは、僕のスタイルとも合っているので、とてもいいと思うんだ」
一方のヴィニャーレスは、テストで最終日に00秒台に入れることができたのは、自分でも想像以上だったようで、そのうれしい驚きはタイムについて訊ねたときの本人の表情にもはっきりとあらわれていた。
「とても満足しているよ。だって、初日は2分03秒台だったのに、最後は00秒で締めくくれたんだからね」
そう笑顔で話すヴィニャーレスは、今はタイヤやブレーキングの限界を探っている最中なのだ、とも述べた。
「まだバイクを存分に使い切ることはできていないけれども、車体がいいマシンなので、だいぶ自分の走りたいラインを走れるようになってきた。Moto2ではアグレッシブに攻めればタイムが勝手についてくるけど、MotoGPではアグレッシブだとかえって遅くなってしまう。このバイクでは、ブレーキや加速は丁寧で正確じゃないといけないんだね」
さすがトントン拍子でMoto3からMoto2、MotoGPへと順調にステップアップしてきた新星だけあって、期待に違わぬ順応性だ。コメント内容も、その端々にクレバーさが感じ取れる。この新人は、ちょっと注目に値するぞ。
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今季は名実ともにスズキのエース、である。
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かなりの逸材である片鱗をすでにのぞかせております。
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三日間のベストタイムは2分01秒924。現在はいろいろ模索中。
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三日間のベストタイムは2分03秒641。ものすごくいろいろ迷走中。
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